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電子機器における放熱設計の基礎知識

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電子機器の放熱の流れ方

使用にともない高温になる電子機器の回路は、100℃を超えて120℃ぐらいまで温度が上昇すると動作が不安定になります。そのため機器の設計段階から適切な放熱対策をとることが重要です。では、電子機器の放熱設計のゴールは、どのような指針に基づいて設定すればいいでしょうか。本記事で解説していきます。

下記の図は、IC(集積回路)が実装されたプリント基板(PCB)を例に放熱対策の構成を示した模式図です。ICから上方に向かって、サーマル・インターフェース・マテリアル(TIM)と呼ばれる樹脂材料、ヒートスプレッダーと言われる銅板、再びTIM、さらにその上にヒートシンクと言われる放熱器の順で積み上げられています。また、ICから下方にはプリント基板が存在しています。ICで発生した熱は、一部はヒートシンク側に、一部は装着されたプリント基板側に分かれて流れることになります。このほかにも熱が伝わるルートが存在はしますが、無視できるほど小さいため前出の2ルートのみで説明をしていきます。

ヒートシンク側に流れる熱の量を求める

ヒートシンク側と基板側に分かれる熱の量は、電流の総和を求めるのに使われるキルヒホッフの法則を応用することで、推定することが可能です。それぞれに流れる熱量は、熱抵抗の数値の逆数に比例し、以下の式で表現できます。この式から、より熱抵抗の小さい方に多くの熱が流れることがわかります。つまり基板側よりヒートシンク側の熱抵抗をできるかぎり小さくすることで、より多くの熱がヒートシンクに流れるのです。

放熱設計の目標値を定める

それでは、放熱設計の目標とする値を実現するために、どのようにヒートシンク側を設計すればいいでしょうか。ICの発熱が70Wだったとき、そのうちの80%がヒートシンク側に行くとすると、70×0.8で56Wの熱がヒートシンクを流れることになります。ICの許容温度が100℃として、放熱後の環境の最高温度を45℃とした場合、ヒートシンク側の目標の熱抵抗は0.98[K/W]となります。

この熱抵抗は、ヒートシンク側の放熱の構成要素である、TIM1、ヒートスプレッダー、TIM2、ヒートシンクの熱抵抗の「総和」となります。つまり、目標とするトータルの熱抵抗を実現するためには、それぞれの要素に熱抵抗をどれぐらい割り振るか考えればよいのです。この考え方は予算の割り振りに似ているので、これを放熱対策の設計部署ではよく「熱抵抗バジェット」と呼びます。

下記のグラフは0.98K/Wの熱抵抗を、4つの熱対策の要素で割り振った結果を表したものです。それぞれの部材によって、放熱効率、また費用も変わってきますので、最適なコスト設計を検討することが大切です。

要素ごとに放熱目標を設計する

放熱に使われる各種の要素については、それぞれで検討が必要です。例えばヒートシンクの熱抵抗は、次の3つの検討を経た上で最終的な値が計算されます。

  • どのようなヒートシンクを使うか
  • どのようなファンを使うか
  • ファンとヒートシンクの間で、どのような流量で空気を流すか

また、銅板であるヒートスプレッダーには「温度分布」が存在し、場所ごとに違う熱抵抗の値を示すため、前もって計算しておく必要があります。

私たちデクセリアルズは、サーマル・インターフェース・マテリアル(TIM)に使われる各種の熱伝導シートをご用意しています。優れた熱伝導率と柔軟性を兼ね備えたシートをアクリル系・シリコーン系(炭素繊維タイプを含む)で揃えるほかに、新たに1枚のシートでノイズ対策と熱対策の両方を可能とする「ノイズ抑制熱伝導シート 炭素繊維タイプ」も開発しています。コストに配慮しつつ電子機器の放熱対策を行う上では、TIMの選定が重要となります。放熱にお悩みの際には、ぜひ私どもにご相談ください。

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