• 電子部品関連

放熱に使われる主な熱拡散材料の特徴

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

拡散熱抵抗とは

電子デバイスに使われるICやLSIなどのチップは、使用にともなって電気エネルギーが熱に変わります。電子機器にとって熱は故障や誤動作の原因となるだけでなく、スマートフォンやタブレットなど手で持つデバイスの場合、低温やけどの原因となる危険性もあります。そのため、電子デバイスの設計では放熱対策が欠かせません。

電子機器の放熱対策にはさまざまな方法がありますが、なかでも広範に採用されているのが熱伝導性に優れる材料を使って熱を分散させて、最終的に空気中に拡散させる手法です。熱源に「熱拡散材料」と呼ばれる素材を密着させることでこれを実現します。

上記は、熱拡散材料を模したプレートに熱源を設置したモデル図になります。真ん中の赤い部分は90℃以上の高温となっており、周辺に行くほど温度が低くなっています。熱拡散材料として使われる素材は「熱の伝わりにくさ」を表す拡散熱抵抗の数値が低く、この図における真ん中の赤い部分の熱を速やかに周辺部へと伝熱して、面全体で熱を放散します。

逆に拡散熱抵抗が高い物質は、中心部の熱が周囲に伝わりにくく、狭い面積にとどまってしまうため、遠端部での放熱が効率的に行われません。そのため熱拡散材料には、できるだけ「拡散熱抵抗」が低い物性の素材を使用し、広い面積で放熱を促すことが大切になります。

主な熱拡散材料について

熱拡散材料として使われる素材やデバイスにはいくつかの種類があります。なかでも代表的なものが、次の5つです。

  • 金属プレート
  • セラミックプレート
  • グラファイトシート
  • ヒートパイプ
  • ベーパーチャンバー

上の3つは平面のプレート・シート状の「素材」で、下の2つ(ヒートパイプ、ベーパーチャンバー)は銅などの金属で微細構造を作り、内部に液体を入れた「デバイス」になります。この記事では、「素材」である上の3つについてさらに詳しく解説していきます。

金属プレートの特徴

熱拡散材料としての金属プレートは、機器の筐体そのものに用いて熱拡散材料とヒートシンクを兼ねる構造にしたり、またヒートシンクの裏面やプリント基板にプレートを埋め込むなど、さまざまな使われ方があります。

素材としては、熱伝導率が約400W/m・Kと高い銅、また銅に比べて熱伝導率は落ちるものの、約170W/m・K程度ある軽いアルミがよく利用されています。銅もアルミもコストが安く、加工しやすいのが大きな利点です。ただし、金属ゆえに導電性があり、電子機器の内部でショート等のリスクがある場所には使いにくいのがデメリットです。一方、その導電性を逆手にとって、電力の制御を行うパワー系のICでは、放熱と接地(グランド接続)の両方を兼ねる部品として利用されることもあります。

銅やアルミなどの金属素材を熱拡散材料として使う際には、熱による線膨張係数が大きいため「ひずみ」が発生しやすいのも注意すべきポイントです。一般的に金属はプリント基板やICチップに使われるシリコン(Si)に比べて熱による膨張の度合いが大きいため、接続されたICチップがひずみで割れてしまうといった事態が起こる可能性があります。最近はそうしたトラブルを防ぐため、線膨張係数をシリコン等に近づけた金属プレートも発売されています。

セラミックスプレートの特徴

導電性が問題となる場所の熱拡散材料としてよく使われるのが、電気を通さないセラミックスでできたプレートです。素材としては、熱伝導率の高い窒化アルミニウム(AlN)、アルミナ(Al203)、窒化ケイ素(Si3N4)などのファインセラミックスが用いられます。

ただし金属に比べてセラミックは一般的にコストが高く、また衝撃などの力が加わると割れやすい(脆い)、というデメリットがあります。そのため使用する目的によって、高熱伝導だが割れやすい窒化アルミニウム、熱伝導率は中くらいだが比較的安価で割れにくい窒化ケイ素など、特徴ごとに使い分けられています。

グラファイトシートの特徴

金属以上の熱拡散性能を持つのが、炭素でできたグラファイトシートです。グラファイトシートには天然の黒鉛を原料とするものと、人工的に炭を焼くように炭素を焼成して結晶構造を作る人工のものがあります。

炭素の結晶は熱伝導率が非常に高く、天然グラファイトシートでは200〜400W/m・K、人工グラファイトシートの中には1200W/m・Kを超える性能を誇るものもあります。また炭素でできているため、金属に比べて軽く、0.01mmほどの薄さに加工できるのも利点です。

デメリットとしては、黒鉛でできているため導電性があることが挙げられます。黒鉛の粉が落ちやすく、ショートが懸念される箇所ではグラファイトシートの周囲を樹脂等でコーティングして絶縁する必要があります。

また人工グラファイトは炭素材料を3000℃程の高温で焼成して生産されるため、コストはどうしても高くなります。

以上、熱拡散材料として使われる主な3つの素材について解説しました。電子デバイスの放熱対策は、これらの金属やセラミックスのプレート、グラファイトシートを利用する他にも、ヒートパイプ、ベーパーチャンバー、ヒートシンク、水冷(液冷)、空冷ファンなどのさまざまな方法があり、それらを目的に応じて適切に組み合わせることが重要です。電子機器の放熱に関しての疑問やご要望があれば、豊富なノウハウを持つデクセリアルズまでぜひお問い合わせください。

お役立ち資料のダウンロードはこちら