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医療機器用リチウムイオンバッテリーにおける二次保護ヒューズの重要性

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医療機器におけるリチウムイオン電池の普及拡大

医療機器向け電源には、機器を長期間・安定して動作させるために高い信頼性が求められ、繰り返し充放電が可能な二次電池の技術が注目されています。これは医療の高度化・進化にともない、多くの医療機器が電気を動力としているためです。

医療機器向けリチウムイオン電池の保護システム

医療機器向けバッテリーシステムには、言うまでもなく高い信頼性と安全性が求められます。特に人工呼吸器など生命維持に関わる医療機器では、安全かつ安定した電力供給が欠かせません。また、診断機器、携帯用医療機器など、リチウムイオン電池を搭載する機器には確実性が求められます。

デクセリアルズのリチウムイオン電池の二次保護ヒューズ製品である表面実装型ヒューズ セルフコントロールプロテクター(以下、SCP)は、こうした医療機器のバッテリーシステムを設計する技術者にとって、重要なソリューションになるものと考えられます。

SCPによる保護の仕組み

SCPは過電流と過充電の両方から保護する二種の安全機構を備えています。その保護機構は以下のような仕組みで動作します。

過電流保護
機器の故障により充放電回路に過大な電流が流れた際、ヒューズエレメントが直接溶断することで回路を遮断します。この物理的な遮断により、過電流状態の継続による電池の損傷を防ぎます。

表面実装型ヒューズ(SCP)の過電流保護の仕組み

過充電保護
充電状態において電池に異常が確認された場合、制御ICからの信号でSCP内のヒーターが発熱し、ヒューズエレメントを溶断させることで回路を遮断します。この物理的な遮断により、不安定な状態のバッテリーが動作し続けることを防止します。

表面実装型ヒューズ(SCP)の過充電保護の仕組み

SCPによる保護の仕組みについての詳細はこちらの記事をご参照ください。

医療機器での採用実績

医療機器用電源の保護機構の構成部品として、当社のSCPは実績を重ねてきました。コロナ禍において、人工呼吸器の需要が世界的に急増した際、SCPは人工呼吸器用バッテリーシステムの保護素子として採用されました。人工呼吸器のバッテリーシステムにおける保護機構として、SCPの安全性と信頼性が評価された事例です。このような医療機器での採用実績は、SCPの保護性能と信頼性を裏付ける重要な実績として位置づけています。医療現場でのSCPの採用実績を参考に、人工呼吸器の種類とリチウムイオン電池の活用について詳しく説明します。

人工呼吸器でリチウムイオン電池が使われる代表的な事例

人工呼吸器には手動式、機械式、ECMOなどの体外循環式といった種類があります。 以下の表は、主な人工呼吸器の分類と特徴を示しています。

分類種類特徴使用環境備考
手動式人工呼吸器バッグバルブマスク(BVM)自己膨張式、ガス源不要病院内外、災害時最も汎用性が高い
ジャクソンリース回路ガス駆動式、酸素ガス必要手術室、集中治療室専門的な医療環境で使用
機械式人工呼吸器侵襲的人工呼吸器(IPPV)気管チューブ・気管切開チューブ使用主に病院重症患者向け
非侵襲的人工呼吸器(NPPV)マスクを介してガス送気医療施設~在宅患者の負担が少ない
体外循環式人工呼吸器ECMO(膜型人工肺)体外循環、高流量ポンプ使用高度

このうち、機械式人工呼吸器において、特に在宅式の人工呼吸器や非侵襲的マスク式人工呼吸器(NPPV)では、リチウムイオン電池の採用が進んでいます。その主な理由として、以下の特長が挙げられます。

ポータビリティ
リチウムイオン電池は軽量で持ち運びが容易です。これにより、患者が自宅や外出先でも人工呼吸器を使用できるようになります。

・停電時のバックアップ
AC電源が利用できない場合や停電時でも、リチウムイオン電池があれば人工呼吸器を継続して使用できます。これは患者の生命維持に関わる重要なポイントです。

・柔軟性
リチウムイオン電池はAC電源が利用できる場所であればどこでも充電可能です。これにより、使用場所の制約が削減されます。

・信頼性
リチウムイオン電池は安定した電力供給を提供し、人工呼吸器の信頼性を高めます。医療機器において安定した電力供給は不可欠な要素です。

・長時間使用
リチウムイオン電池は高エネルギー密度を持つため、長時間の使用が可能です。これにより、頻繁な充電が不要となり、患者の負担を軽減することができます。

バッテリーシステムの信頼性を支える保護機構

当社のリチウムイオン電池用二次保護ヒューズ、SCPは、約30年にわたってリチウムイオン電池の二次保護素子として実績を積み重ね、お客さまからその性能・品質に信頼を寄せていただいています。
SCPは、リチウムイオンバッテリーの二次保護回路において、物理的な遮断を行います。充放電の制御が不安定で危険な状態に陥りそうなリチウムイオンバッテリーが動作し続けることがないよう、あえて回路を遮断し、安全に使えなくすることが「SCP」の役割です。

1994年の発売依頼、リチウムイオンバッテリーの二次保護用ヒューズの標準的な部品として認知され、28.4億個以上(2024年3月末現在)を出荷しています。(詳細は、「二次保護素子の基礎知識 リチウムイオン電池を発火から守るSCP」とは の記事をご覧ください。)

医療機器設計における安全性の確保

医療機器の設計・開発に携わるバッテリーエンジニアにとって、医療機器の複雑性が増し、利用者が増加するにつれて、バッテリーの保護機能の重要性は一層高まっています。二次保護ヒューズはその中でも重要な要件となりつつあります。

【医療機器設計者の方へ】
医療機器でSCPの採用をご検討される場合には、仕様や各種規格要求への適合性について、事前にデクセリアルズまでお問い合わせください。
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