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掃除機の進化と未来の安全: 表面実装型ヒューズによるリチウムイオンバッテリー保護

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本記事では、掃除機の発展史、特に、リチウムイオン電池の登場がいかにして掃除機の発展に貢献してきたかに焦点を当てるとともにリチウムイオン電池の安全を守る当社の表面実装型ヒューズの役割について解説します。

掃除機のメカニズムと性能

掃除機の基本原理は、送風機が作り出す負圧を用いて床の埃やゴミを吸引し、エアフィルターでこれらを空気から分離、容器内に回収することです。このシンプルで効率的なメカニズムは、家庭用から業務用、産業用まで幅広く利用されています。

掃除機の最も重要な性能は「吸引力」です。この性能を評価する上で重要視されるのが「吸込仕事率」になります。この数値は掃除機の吸引力を表し、自動車の馬力(最高出力)に相当します。ただし、吸込仕事率の高さだけが掃除機の清掃能力につながるわけではありません。実際の清掃能力は、ノズルの設計にも大きく依存します。そのため、メーカーは吸込仕事率の向上だけでなく、効率的な床用ノズルの開発にも注力しています。

一般に、吸込仕事率が高い掃除機ほど、さまざまな大きさのゴミや多様な床材に対応しやすくなります。吸込仕事率は、掃除機の本体に接続された測定装置で風量と真空度を変えながら測定し、最大値を求めることで算出されます。値は、 「0.01666 × 風量 (m³/min) × 真空度 (Pa)」の式で計算され、ワット(W)単位で表示されます。日本では、JIS C 9108に基づき、吸込仕事率の性能表示が義務付けられており、消費者はこの指標を参考に掃除機を選ぶことができます。

掃除機には家庭用、業務用、産業用があり、それぞれ以下のような特徴があります。

家庭用掃除機 一般の家庭や小規模な商店などで使用される掃除機で、多くは本体が軽いプラスチックでできているため、取り回しが容易。
業務用掃除機 清掃事業者が使用する掃除機で、業者登録に必要なもの。本体は金属製のものが多く、モーターは寿命が長いなど、耐久性を重視した設計。長時間の連続使用で多量のゴミを吸い取るため、本体の大半がゴミ容器になっている。
産業用掃除機 クリーンルーム用、防爆用、防塵用、トナー用など特殊用途の掃除機。

また、動力源についても多様化が進んでいます。それぞれのメリットやデメリットは以下となります。

電源 強い吸引力を長時間持続して掃除することができる。屋外排気型を除けば、電源コードの扱いがやや面倒。
充電式 電池を充電して使うため、電源コードの引き出しや収納の手間がなく、掃除をすぐに始めたり、電源がない場所の掃除をしたりすることが可能。充電式は片手で持ち運びできるタイプに多いが、縦型や床移動型の製品もある。
しかし、電池の容量の関係から、一般に吸込仕事率が弱く、連続使用時間も短いものが多い。また、くり返し使用して電池が劣化した場合は、電池を新しい物に交換する必要がある。
エンジン 自走式の業務用掃除機の一部に使われている。

掃除機の進化と歴史(始まりから2000年代まで)

掃除機の歴史は、1868年、アイヴス・マガフィーによる手動式真空掃除機の発明に始まります。この初期モデルは負圧を利用してゴミを吸引する仕組みでしたが、手動での操作が煩雑であったため、広く普及するには至りませんでした。その後、1901年にヒューバート・セシル・ブースが電気を使用する真空掃除機を発明。これに布フィルターを採用し、効率的なゴミの吸引が可能となりました。1905年にはアメリカのチャップマン・アンド・スキナー社から、重量約40キロの家庭用電気掃除機が登場します。

さらに、1907年にジェームズ・マーレー・スパングラーによるアップライト型(縦型)掃除機の発明によって、掃除機の発展がさらに加速します。1931年には、このアップライト型が日本でも発売されましたが、当時の日本の家庭環境では普及が遅れました。しかし、第二次世界大戦後、欧米でじゅうたんが普及し、掃除機の需要が高まります。日本でも1960年代に団地の普及とともに掃除機の使用が増え、じゅうたんの人気に伴い需要が高まりました。

1980年代初頭には、紙パック式真空掃除機が登場し、掃除機の使い勝手が大きく向上しました。1990年から2000年代にかけては、キャニスター型からスティック型/コードレス型・サイクロン式へと主流が移行。2000年代以降は、ロボット掃除機やミクロンレベルの塵埃を除去可能なモデルが登場し、掃除機の技術は絶えず進化し続けています。これらの進化は、家庭用掃除機の普及とともに、掃除機が単なる清掃道具を超えた家電製品へと変貌を遂げたことを示しています。

床移動型 (キャニスター型) 本体が横に長い掃除機を、ホースを引っ張って移動させる形式で、丈の低い家具が多い和室の掃除に適している。背が低いため、押入などへの収納が便利であるなど、日本の家庭用として人気があった。
円筒床移動型(キャニスター型) 縦の円筒形をした本体を、ホースを引っ張って移動させる形式で、日本の業務用に多く見られる。
縦型(アップライト型) 縦に長い本体の底面に床用吸込口があり、本体の上部に付いたハンドルで操作する一体形で、立てたまま収納する。
ほうき型(スティック型) 縦型の軽量なものを指す。
片手持ち運び型(ハンディー型) 片手での持ち運びや使用が可能な小型の形式。充電式(コードレス)のものが多く見られる。
肩掛け型(ショルダー型) 肩掛けで使用できる。建物内・高所の使用に適する。
背負い型(リュックサック型・ヒップバック型) 航空機、鉄道車両(旅客車)、バスなどの乗り物で用いられる。
屋外排気型(セントラルクリーナー型) 屋外に集塵装置を設置し、そこから各部屋に配管工事した穴にホースを差し込んで吸引する方式。排気によって部屋が汚れないメリットがあるが、装置と工事費が割高な点、長いホースを持ち運ばなければならない点がデメリット。
箱型自走式 スイーパーとも呼ばれ、人間が押して歩くものと、乗って操縦する自走式のものとがある。自走式は電動機や内燃機関を原動機とし、集塵・清掃と走行をその動力で行う。乾式のほか、洗剤や水を用いる湿式があり、大規模建築物や屋外などで使用される。
ロボット型 自走式をロボット化したもので、自立的に掃除を行う。多くは業務用であったが、2000年代に入り家庭用のものが市販されるようになった。
現在、一般に普及している掃除機タイプの一覧
様々な掃除機の種類を表した画像です
掃除機のイメージ図

ロボット掃除機の進化(2000年代以降)

2000年代以降に普及した家庭用ロボット掃除機は、さまざまな最新技術を搭載しています。これらは床を自動で移動し、ゴミや埃を吸引する能力を持ちます。完璧な掃除を実現するわけではありませんが、大半のハウスダストを除去し、清掃の手間を軽減します。距離センサーやAIを用いた学習機能、スマートフォン連携などの進歩した技術も採用されています。

掃除機のさらなる進化とリチウムイオン電池の重要性

コードレスタイプやロボット掃除機の実用化が進んだのは、電池技術とりわけ充電可能な二次電池技術の進化にほかなりません。中でも軽量で高出力を特徴とするリチウムイオン電池の発明と普及は実用化を大きく後押ししました。それ以前の電池に比べ電気容量が増加したことで、連続運転時間が延び、活躍の場を広げています。

デクセリアルズの表面実装型ヒューズが果たす役割

ロボット掃除機やスティック型掃除機などの機器で使用されるリチウムイオンバッテリーには、電池の安全を確保するために保護システム(BMS:Battery Management System)が組み込まれており、デクセリアルズの表面実装型ヒューズ「セルフコントロールプロテクター(SCP)」はこのBMSに組み込まれる保護素子です。このヒューズは、過充電や過電流が発生した際に確実に充放電回路を遮断、バッテリーを電気的な危険から隔離して安全を確保します。

ロボット掃除機に搭載されたリチウムイオン電池のBMS基板上のSCP
ロボット掃除機に搭載されたリチウムイオン電池のBMS基板上のSCP

ロボット掃除機の場合、掃除機内部にリチウムイオン電池パックを搭載しており、充電は充電ドックで行われます。そして多くの場合、充電も放電(掃除)も人の監視のないところで行われるため過充電・過電流も必然的に人の監視の及ばない時間・場所で発生することになります。搭載されているリチウムイオン電池のエネルギーの大きさを考えると、電池には十分過ぎるほどの安全確保が求められ、その役割を果たす部品の一つにSCPが挙げられます。

充電中のロボット掃除機(イメージ図)
充電中のロボット掃除機(イメージ図)

当社のSCPは、約30年にわたってリチウムイオン電池の二次保護素子として実績を積み重ね、お客さまからその性能・品質に信頼を寄せていただいています。

SCPは、リチウムイオンバッテリーの二次保護回路において、物理的に充放電回路の不可逆的な遮断を行います。充放電の制御が不安定なリチウムイオンバッテリーが動作し続けることがないよう、あえて回路を遮断し、安全に使えなくすることが「SCP」の役割です。
1994年の発売依頼、リチウムイオンバッテリーの二次保護用ヒューズの標準的な部品として認知され、20億個以上(2020年4月現在)を出荷しています。(詳細は、二次保護素子の基礎知識 リチウムイオン電池を発火から守るSCPとはの記事をご覧ください。)

今後も進化を続ける掃除機にSCPが貢献するのはもちろんのこと、部品の小型・軽量化によってバッテリー駆動の新たなデバイスが生まれた際には、当社のSCPの活躍の幅も広がると考えています。お客さまの将来製品の安心・安全に貢献できるよう、今後も開発を続けてまいります。

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