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スマートフォンに「熱拡散」が必要な理由とその仕組み

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スマートフォンの進化とともに増大する発熱量

いまや私たちの生活に欠かすことができない道具のスマートフォン。通話やSNSでのコミュニケーションはもちろん、インターネットでの調べ物や、動画でエンターテイメントを楽しむなど、さまざまな使われ方をしています。

スマートフォンの性能は日進月歩で向上を続けており、2019〜2020年にかけて世界各国/地域で5Gによる高速通信もスタートしました。こうしたスマートフォンの高機能化にともなって、重要性を増しているのがスマートフォンの筐体の放熱対策です。

スマートフォンは基本的に手で持って使用することから、高温になったスマートフォンを長時間触っていると、皮膚に低温やけどを起こす危険性があります。低温やけどは45℃〜50℃ほどの、ほんのり温かい程度の温度であっても起こり、熱源が長時間にわたって人体に接することで、皮膚の深層が深刻なダメージを受けます。そのため、多くのスマートフォンメーカーでは、筐体の表面温度に基準を設けて全体設計をしています。

一方で、4K画質の動画などにも対応するようになったスマートフォンのCPUは、高性能化と同時に電力消費量、発熱量がともに増大し、狭い筐体のなかでいかに効率よく放熱をおこなうかが重要な課題となっています。そうした背景から、近年、ハイエンドスマートフォンで採用が始まっているのが、従来よりも圧倒的に高い放熱効率を可能にする「ヒートパイプ」と「ベーパーチャンバー」という熱拡散を担うデバイスです。

上記の図は、上が何の熱対策も行っていないスマートフォンの表面の熱分布で、真ん中がヒートパイプ、下がベーパーチャンバーを使用した際の模式図になります。上部の赤い箇所には発熱するチップがあり、何の熱対策も行っていないスマートフォンでは熱がその周辺にとどまっていますが、ヒートパイプ、ベーパーチャンバーによって熱を筐体に見立てたアルミ板全面に拡散することで温度を下げ、効率よく放熱をおこなうことが可能になることがわかります。

ヒートパイプの特徴

ヒートパイプは、銅を主成分とする金属のパイプの内部に微細な構造を形成し、その中に冷媒(水など)を通す仕組みのデバイスです。パイプの中身は減圧され、真空状態になっています。気圧が低い高い山の上では気圧に応じて100℃以下の温度で水が沸騰するのと同様に、真空状態のパイプ内部の冷媒はわずかな温度上昇で気化します。

上記の図(構造イメージ図)は、ヒートパイプの内部構造です。左側の赤い熱源に接した受熱部で気化した作動液は熱源の熱を気化熱で奪うとともに、相対的に気圧が低くなった青い右側部分に移動し、放熱部で蒸気から液体へと凝集して熱を外部に発散します。液体となった作動液は、細いパイプ内部のウィック(毛細管構造)を通って受熱部に移動し、再び熱せられて気化します。

この現象が繰り返されることにより、ヒートパイプは受熱部から放熱部へ高効率で熱を輸送することが可能です。金属製やセラミックス製、グラファイト製の熱拡散プレートやシートが80〜1200W/m・Kほどの熱伝導率であるのに対し、ヒートパイプは見かけ上の熱伝導率が20,000W/m・Kを越える、高い性能を実現することができます。

ただし、ヒートパイプにも「熱輸送限界」という、それ以上の熱を輸送できなくなる値があるので注意が必要です。限界値以上の熱の負荷がヒートパイプにかかると、冷媒が液体に凝集することなく気化した状態のままになり(「ドライアウト」と呼ばれる現象)、熱源の温度は冷やされることなく急激に上昇することになります。

さらなる高熱伝導を実現するベーパーチャンバー

ベーパーチャンバーはヒートパイプと同一の構造を「箱型の形状」にしたものです。細いパイプ状のヒートパイプに対し、面状に大きな面積のデバイスを作成することができるべーパチャンバーは、さらに高効率の熱拡散を実現することができます。形状も薄くでき、スマートフォンの筐体の内部構造に合わせて多様ななデザインが可能なことも特徴です。

ただし、完全な真空の状態をキープする薄い箱形の金属デバイスを作製するためには、かなり高度な技術が必要となり、コストがかさんでしまうのがデメリットです。

ヒートパイプとベーパーチャンバーは、近年、各メーカーが販売するハイエンドスマートフォンの最新モデルの放熱部材として採用されるケースが増えています。

ヒートパイプやベーパーチャンバーを活用する場合、その能力を最大限発揮させるためには、これらのデバイスと接続する前後の部品・部材とのインターフェース部をどのように処置するかが重要になってきます。今後ますます重要性が高まるスマートフォンの放熱。電子デバイスの熱対策に豊富な知見を持つデクセリアルズは、最先端の放熱技術への対応をおこいながら、さらなる進化を目指しています。

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