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放熱の3形態と「熱伝導」の基礎知識
熱伝導、対流熱伝達、熱輻射
寒い冬に布団の中に湯たんぽを入れておくと、その熱でぽかぽかと布団が温まり、快適に寝ることができます。その湯たんぽを例に、本記事では熱の伝わり方を解説します。
金属製の湯たんぽの中に水を入れて、ガスコンロの火で直接温めると、湯たんぽの金属は下から熱せられて、全体的に温度が高くなっていきます。このとき、湯たんぽの金属に起こっているのが「熱伝導」です。熱伝導は外部からのエネルギーにより分子や原子などの粒子の振動が大きくなり、その振動が隣の粒子に伝わることで起こる熱の伝わり方です。
2つ目の熱の伝わり方が「対流熱伝達」です。湯たんぽの中に入れられた冷たい水は、火にかけられているうちに水全体の温度が100℃に向かって上昇していきます。このときに水に起きているのが、対流熱伝達と呼ばれる現象です。対流熱伝達では、まず固体(湯たんぽの金属)と流体(水のような液体や気体)との間で、熱のやり取りが行われます。湯たんぽの中の水原子は、底面の火から熱伝導によって熱エネルギーを受け取ると、対流しながら周囲の水原子にも熱を伝えていき、100℃に達すると水蒸気となって、今度は気体として周囲の空気に熱を伝えます。
3つ目の熱の伝わり方が、「熱輻射」です。沸騰したお湯が入っている湯たんぽに手を近づけると、触れていないのにじんわりと暖かみを感じます。このとき、湯たんぽの表面からは電磁波の赤外線が放射されており、それが手に当たることで熱エネルギーを伝えています。私たちが日中に目にする太陽も、約1億5,000万kmの距離を超えて、熱輻射によって地球上のすべての生物の生存に直結するエネルギーを届けてくれているのです。
熱伝導による熱の伝わり方
ここからは、1つ目の熱伝導についてさらに詳しい解説をしていきます。固体における熱伝導の「熱の伝わりやすさ」を決定するのは、熱伝導率(W/m・K:ワット毎メートル毎ケルビン)です。フライパンを火にかけ続けると、やがて持ち手の部分も持てないぐらい熱くなりますが、同じ火のエネルギーでもフライパンの材質(鉄、ステンレス、アルミなど)によって熱の伝わり方は違います。そのときの熱の流れる速さを示す指標が、熱伝導率になります。
熱伝導率の値は、材料によって異なります。それに加えて実際の放熱システムの熱設計では、熱を受ける材料の長さ、断面積によって熱の伝わり方が大きく変わるため、使用する条件で計算する必要があります。
さまざまな材料の熱伝導率
一般に金属は、高い熱伝導率を持ちます。それに対して陶磁器やガラスに代表される各種セラミックスは、物質によって大きく熱伝導率が異なります。主に産業分野で利用されている材料を例に取り上げると、ダイヤモンドや窒化アルミニウムのように非常に熱を伝えやすい物質もありますが、石英ガラスの熱伝導率はダイヤに比べて1000分の1以下しかありません。水や空気なども、熱伝導率が低い材料となります。
金属類の熱伝導率を横軸に、電気伝導度を縦軸にとったグラフを見ると、電気の流れやすさにほぼ比例して、きれいに一直線に各種金属が並ぶことがわかります。これは金属の熱伝導の場合、格子の振動によるエネルギーの伝達よりも、自由電子の動きによって熱エネルギーが伝達される割合が多いからと考えられています。そのため、自由電子が動きやすい金属すなわち電気伝導度の高い金属は、熱伝導率が高くなる傾向を持つのです。
5G時代を見据えた高性能熱伝導シート
デクセリアルズでは、上記のような物性による熱伝導率の違いを活かし、さまざまなタイプの熱伝導シートを開発しています。なかでも炭素繊維タイプの熱伝導シートは、垂直方向に極めて高い熱伝導性を持つことから、回路基板等の熱源とヒートシンクなどの放熱器の間に挟むことで、効率的な放熱を実現します。日本でも普及の始まっている5G通信によって、モバイル、無線基地局、サーバー、車載アプリケーションなどを開発するお客さまの間では、5G通信対応への加速度的なバージョンアップが進んでいます。それらのデバイスに使用する、熱量の多いLSI等の放熱対策にお困りでしたら、ぜひこの炭素繊維タイプの熱伝導シートをご検討ください。
<参照資料>
- 産総研:分散型熱物性データベース
- Journal of Physical and Chemical Reference Data
- International Journal of Thermophysics
- Diamond and Related Materials
- Journal of Nuclear Materials
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