- 電子部品関連
放熱対策部材、TIM(Thermal Interface Material)の種類
目次
放熱対策に使えるTIMには多くの種類がある
基板に実装されたIC(集積回路)などの熱源からの熱の伝播を助けるTIM(Thermal Interface Material)には、さまざまな種類があります。デクセリアルズが開発・製造・発売する「熱伝導シート」はその代表的な部材ですが、その他にも、グリース、熱伝導性接着剤、パテ、PCM、はんだなどがTIMとして用いられ、それぞれにメリット・デメリットがあります。以下は、その特徴の一覧です。
・熱伝導グリース
熱伝導グリースは、シリコーンなどの樹脂に金属粉等の熱伝導性を持つ粒子を添加した、粘性のある液状材料で、液状TIMとも呼ばれます。熱伝導率によって価格が安いものから高いものまで幅広いラインナップがあり、使用に際してキュア(加熱処理)が必要ないことからCPU(中央処理装置)などのICの放熱によく使われ、自作パソコンを組み立てた経験のある方の中には実際に使用された方もいるかと思います。ただし長期間使用する上では、信頼性にいくつかの課題がある材料とも言われています。その問題のひとつが「ポンプアウト」と呼ばれる現象です。電子機器内でグリースは熱源のICと放熱器(ヒートスプレッダーやヒートシンクなど)の間を埋めるように存在しますが、両者の熱膨張特性の違いにより、部品間にあった液状のグリースが機器の稼働・停止を繰り返すうちに徐々に外に押し出されて少なくなっていく現象を指しています。また長期の使用にともなって、樹脂の揮発成分が抜けてしまい、固まって粉状に劣化してしまうこともよくあります。いずれの場合も長期の使用で部品間をすきまなく埋めることができなくなるため、伝熱性能が維持できなくなります。
・熱伝導接着剤
熱伝導特性の高い接着剤を、TIMとして使用するケースもあります。部品の接着(組み立て)と同時に放熱性能を高めるという、一石二鳥の手法です。ただし接着するという特性上、あとでICや放熱器などの部品を取り替えたいと思ってもほとんどの場合できない(リワーク不可)というデメリットがあります。また、接着のためにオーブンで硬化させるキュア工程が必要なため、設備と作業コストが必要となります。
・熱伝導性パテ
グリースと似た材料に熱伝導性パテがあります。熱伝導性パテはグリースよりも粘度があり、盛り上げた形で塗布できるため作業がしやすく、さまざまな場所に塗布できるという特徴があります。またキュア工程で硬化させるもの・させないものの両方が実用化されています。課題としては他のTIMに比べ熱伝導率が低い製品が多いことから、作業性(塗布可能性)・高信頼性(垂れ落ちないこと)などの条件と熱伝導性を同時に満たすのが難しいことが挙げられます。
・相変化材料 PCM(Phase Change Material)
温度によって、機器内部で固体になったり、液体に変化するのがPCM(相変化材料)です。PCMは熱可塑性樹脂を主成分としており、IC動作時の60℃〜80℃になると軟化し、常温状態では固化するように設計されています。ICの動作時に軟化して放熱器との密着が良好になるため、熱伝播の効率を上げることができます。ただしその特性上、「固化⇔液化」を繰り返すため、固化時にボイド(空隙)が発生し、ICと放熱器の密着面積が小さくなる懸念があります。また、常温時は固化してIC等に接着されてしまうため、部品のリワークも難しくなるというデメリットもあります。
・はんだ
比較的低温で溶融する金属はんだをTIMとして使用することもできます。熱源であるICと放熱器の間にはんだを入れ込むと、金属の熱伝導率は非常に高いため、熱の輸送能力を大きく上げることが可能となります。この目的で使われる金属には、Au-Sn(金錫)やIn(インジウム)がありますが、どちらも高価で、またリフロー実装工程が加わるため部品組立のプロセスコストが上昇します。はんだ付けにより、リワークできなくなることも欠点です。
・熱伝導シート
熱伝導性をもつフィラーが充填されたシート状の樹脂材料で、ICと放熱器の間に挿入する形で使用されます。使用形状に合わせた加工が可能で、TIMとして重要な厚みのコントロールがしやすく、形状の制御に優れ性能が安定しています。また、液状材料では難しい比較的大きな凹凸を埋められることも他のTIMにないメリットとなります。他にもリワーク(取り替え)が容易など数多くのメリットがあり、熱対策部材として身近で扱いやすい材料として広く認知、そして使用されています。反面、金属より熱伝導率が低い、液状材料ほどの柔軟性はなく、その場で厚みを変えたり出来ないなど、基本性能やフレキシビリティの点で見劣りする部分も存在しています。
デクセリアルズでは、先に紹介した「熱伝導シート」の分野に注力し、これらの製品を通じてお客様における放熱課題の解決のお手伝いをさせていただいています。電子機器の放熱設計を検討される際は、ぜひ当社までお気軽にお問い合わせください。
関連記事
- SHARE
当社の製品や製造技術に関する資料をご用意しています。
無料でお気軽にダウンロードいただけます。
お役立ち資料のダウンロードはこちら当社の製品や製造技術に関する資料をご用意しています。
無料でお気軽にダウンロードいただけます。
お役立ち資料のダウンロードはこちら