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電子機器の放熱設計で解決すべき3つの課題

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電子機器の放熱設計で工夫をするべき3つのポイント

スマートフォンやノートPC、タブレットPCなどの電子機器の設計において、放熱対策は重要な課題となっています。しかも近年の電子機器の性能向上にともない、その放熱設計の難易度も年々上がっています。なぜ電子機器の放熱設計が難しいのか。その主な理由には、次の3つが挙げられます。

1.冷却のターゲット温度がとても低い

内部でガソリンが燃焼する自動車のエンジンは、パーツによっては数百度の温度になりますが、高温になることによって故障したり動かなくなることはありません。しかし電子機器のCPU(中央処理装置)などに用いられるシリコン系の半導体は熱に弱く、120℃程度の温度に達すると電子回路としての動作が不安定になります。そのため動作温度の上限を100℃程度として安定動作可能な状態に保つ必要があり、そのことが放熱設計を難しくしています。このことは、後段で白熱電球とLED電球の違いを例に詳しく解説します。

2.消費電力の増大にともない発熱量も多大に

電子機器に搭載されるCPUやIC(集積回路)は、モーターなどに動作の「指令」を出していますが、モーターが回転して物を動かすような「仕事」をしません。それゆえ投入されたエネルギーは、そのほぼすべてが熱という形に変わることになります。電子機器の消費電力は歴史的に見れば上がる一方で今後も増加すると言われています。これは私たちが日常的に利用する情報が爆発的に増え、利用のたびに電子機器に膨大な量の「指令」を出しているからに他なりません。以前は、「通信基地局などに設置されるラックマウント型コンピューターのマザーボードは1枚でホットプレート並(1500W以上)の電力を使用する」と言われていましたが、情報通信の最前線では6500Wといったとてつもない電力を消費するデバイスまで出現しています。放っておくと肉や野菜が焼けるほどの温度(250℃以上)に上昇してしまうのに、それを100℃以下という低温に抑える必要があります。

3.発熱密度が非常に高い

冬のやさしい日の光も、虫眼鏡で一点に集めれば紙に火がつくぐらい高温になるように、同じ量のエネルギーでも狭い範囲に集まれば集まるほど高温になります。電子機器の放熱設計も、半導体の集積度が上がるにともなって発熱密度が高くなっており、対策が難しくなっています。

以下は同じ発熱量であっても、発熱密度によって大幅に熱源の温度が変化することを示した表とグラフになります。5Wのエネルギーを投入したとき、熱源のサイズが小さくなるほど高温になることがわかります。

LED電球と白熱電球の違い

電子機器の放熱設計の必要性を知っていただくために、LED電球と白熱電球の違いを例に取り上げます。下記の表を見てもわかるとおり、両者の間では、消費電力に数倍の差があります。白熱電球の57Wに対して、LED電球は7.2Wしか電気を使わないのに、明るさはLED電球のほうが明るいのです。つまりエネルギーを光に変換する効率が、圧倒的にLEDのほうがいいということです。

ところが写真を見てもわかるように、LED電球には放熱用のフィン(ヒートシンク)が電球部分の下についていますが、白熱電球にはありません。これはどうしてでしょうか?

白熱電球が光る仕組み

これにはそれぞれの電球が光る仕組みが関係しています。白熱電球とLED電球の仕組みについて簡単に解説しておきましょう。白熱電球とは、電気工学的に見れば、「電気抵抗」です。電球の内部(以下写真参照)にあるタングステンという金属でできたフィラメントに電気が通ると、エネルギーの大部分は熱に変換されます。その温度は2500℃程度と非常に高温であるため、熱輻射が発生し、放出される電磁波の一部が人に見える可視光になって外に出てきます。それが白熱電球の光です。

白熱電球の中は、フィラメントが燃え(急激な酸化が起き)ないように、不活性ガス(窒素とアルゴンの混合物)が封入されています。2500℃にもなるフィラメントの熱が、電球のバルブ表面(最大径部)に伝わったときには100℃以下にまで下がっているのは、不活性ガスによって熱の移動が抑えられているためです。また熱源のフィラメント自体がとても小さいため、いくら高温になっても周囲の空気の温度を上げることには限界があり、日常的な使用においてヒートシンクの搭載といった積極的な放熱対策は行われません。

LED電球の発光原理と放熱の仕組み

電気抵抗を利用して発光している白熱電球に対して、LED電球は電気のエネルギーを光へと直接変換する「発光ダイオード」の発光原理を用いています。電荷を運ぶキャリアとして正孔を利用するP型半導体と自由電子をキャリアとするN型半導体を接合し、そこに電流を流すと半導体中を電子とホールが移動し接合面で結合、その際にエネルギーの一部が光になる原理を利用しています。この仕組みは発光効率がよく、投入したエネルギーのうち35%が光となり(白熱電球は9%ほど)、残りの65%が素子から熱となって出ていきます。

LED電球は白熱電球と異なり、半導体デバイスです。そのため高温になると性能が下がり、高温が続くと製品寿命も短くなります。逆に言えばデバイスの温度を低く保てれば高性能で寿命の長い電球となります。それゆえ、ヒートシンクなどの放熱装置を取り付けてデバイスの温度を低くする必要があるのです。

LEDの放熱対策としては、「筐体部の表面形状をギザギザにしたり、グローブ(電球の光る)部を小さくして放熱する表面積を増やす」「筐体の素材に高輻射材料を使用することで放熱効率を上げる」などの方法がとられます。

放熱対策はスパコンやデータセンターのコスト削減に直結

2020年6月、理化学研究所のスーパーコンピュータ「富岳」が計算能力を測る4部門で世界ランキング1位を獲得したことが話題になりました。スーパーコンピュータは膨大な計算を超高速で処理、即座に指示を出す「究極の司令塔」です。そのために膨大な電力を消費し、同時にその電力のほとんどを熱に変えていることになります。当然、冷却にもそれ相応の電力が必要となり、システム全体の電力消費はまさに膨大と言えます。こういった技術の発展にともなう課題の解決には、半導体技術だけでなく、その冷却技術・放熱対策の進歩も欠かせません。ここではスーパーコンピュータを例に解説してきましたが、データセンターや通信基地局のハードウェアについてもスケールが違うだけで同様の課題を抱えています。

無線通信の世界では高速・大容量の通信技術である「5G」が始まっており、こういった技術を身近ものにするためにもシステムコストの削減が急がれています。システムの冷却や放熱に必要な電力が小さくすることはコスト削減の有効な手段と考えられています。私たちデクセリアルズは、各種の放熱対策を可能とする部材およびノウハウを取り揃えています。電子機器、設備の放熱にお困りの際はお気軽にご相談ください。

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