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反射防止フィルム モスアイタイプを活用した医療用シールド材の特長

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「目が疲れる」、従来の医療用シールドの課題

新型コロナウィルス感染症の感染拡大により、2020年に入ってから医療現場を中心に需要が増しているのが「医療用シールド」と呼ばれる保護具です。フェイスシールドはPETなどの透明な樹脂でできており、顔を覆うことでウィルスを含んだ飛沫が目や呼吸器に入って感染することを防ぎます。また、ウィルスがついた手で顔の目、鼻、口を触ってしまうリスクも低減します。

通常の医療用シールドに使用されるフィルムはPETなどの透明フィルムです。飛沫からの保護という点では問題はありませんが、医療現場、特に手術室の中での利用を考えるといくつかの課題が存在します。一般にPETフィルムは透明度が90%程度で光の反射率も8%ほどあります。短時間ではそれほど気にはならないかもしれませんが、長時間フェイスシールドの使用を続けていると、ギラツキ(フィルムでの光の反射)で目に疲労がたまります。また呼気で曇ってしまうなど、正確な作業が求められる医療現場では問題になる場合があります。

デクセリアルズでは、数年前にある病院の医師から「いまの保護具(アイシールドやフェイスシールドは光が反射して使いにくい。デクセリアルズの反射防止フィルムを応用してもっと使いやすいシールドが作れないか」という話を聞いたことから、医療用シールドに使える反射防止・透明度の高いフィルムの開発に着手しました。

研究開発の結果、2014年に上市に成功し、以来販売を続けるのが反射防止フィルム モスアイタイプを応用した医療用シールド材です。当時は、今の状況と異なり、長時間の装着でも正確な作業を邪魔しない、目の疲労感を軽減することを目的としていましたが、新型コロナウィルス感染症の感染拡大にともない、現在その需要は大幅に増えています。以下では、反射防止フィルム モスアイタイプを応用した医療用シールド材の特長について解説します。

モスアイ構造が可能にする優れた光学特性

「モスアイタイプ」とは「蛾の眼」の構造を模していることを表したものです。夜行性の蛾の眼の表面には、ナノレベルの微細な突起が並んでおり、それによって月のわずかな光もほとんど反射せず夜間に活動することができます。デクセリアルズでは独自技術により、そのモスアイ構造を人工的に樹脂上に形成することに成功し、ディスプレイなどに貼る反射防止フィルムに応用してきました。

当社が提供する医療用シールド材にも応用しているこのフィルムは、ディスプレイ向けとは異なり何かに貼り付ける必要がないため粘着層を持っていません。代わりに反射防止・高透過を追求するためにモスアイ構造が基材フィルムの両面に形成されています。下の図は、従来の医療用フィルム製品と光学特性を比較したものになります。

従来のシールド用フィルム(PET基材)が反射率8.4%なのに対し、モスアイ構造を持った当社フィルムは、PC(ポリカーボネート)基材で0.4%、透明度は90.6%に対し99.3%、光の散乱量(曇価)も1.3%に対して0.2%と全項目で大幅に向上していることがわかります。PET基材を使用した場合でも従来品に比べて優れた性能を示しています。

モスアイ構造付きフィルムを使ったフェイスシールドのメリット

下記は、両面にモスアイ構造フィルムを貼ったフェイスシールドの利点になります。従来のPET製シールドより圧倒的に高い98〜99%の光透過率を実現できることから、使用にともなう視覚の疲労を大幅に抑えることが可能です。実際に当社モスアイフィルムを貼った医療用シールドをつけて診療にあたる医療従事者のアンケートには「着けていることを忘れる」という声が複数寄せられました。

また、デクセリアルズの反射防止フィルム モスアイタイプの大きな特長の一つが「曇りにくい」ことです。フェイスシールドが曇る現象は、呼気中の水蒸気がフィルムについて結露することが原因です。モスアイ構造付きフィルムは非常に親水性が高く、水蒸気がついてもと一瞬で広がり、水滴の形をとることがありません。そのため息を吹きかけてもほとんど曇らないのです。繊細な指先の作業が求められる医療の現場では、視認性が低下を気にして保護具の装着をためらう方もいらっしゃると聞きます。デクセリアルズの反射防止フィルム モスアイタイプを応用した医療用シールドは、医療現場においても高い評価を得ています。

医療現場以外のフィールドにも提供を開始

現在、新型コロナウィルス感染症対策として、医療機関では医療用シールドの必要性が高まっています。そこでデクセリアルズでは、反射防止フィルム モスアイタイプを応用した医療用シールド材の増産体制を構築しています。デクセリアルズのフィルムは国内外の医療用シールドを生産する大手医療メーカーに供給されていますが、需要の拡大にともない、医療以外の業種、一般向けへも供給を開始しました。保護シールドの使用は医療だけではなく、人と人が接する販売や窓口業務、食品工場の生産工程スタッフ、人が多く集まる学校やテレビの収録現場など、さまざまな場で拡大しています。デクセリアルズでは今後も、その技術力で社会貢献できるよう努力を続けてまいります。

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