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蛍光体フィルムの原理と製造プロセスから応用まで

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蛍光体フィルムとは

デクセリアルズが開発した蛍光体フィルム「PSシリーズ」は、液晶ディスプレイの高画質化に貢献する素材で、青色LEDを直下型バックライトとして採用するディスプレイに使われています。従来の白色LEDではなく青色LEDと組み合わせることで、ディスプレイの輝度・コントラスト・色域の向上を図るとともに、ディスプレイの薄型化も可能にします。

蛍光体フィルムがターゲットとするアプリケーション例

蛍光体フィルムの構造と特長

蛍光体フィルムは、緑色と赤色の蛍光体を樹脂に混ぜ、フィルム状にした素材です。直下型LEDディスプレイ内部のバックライトユニット部に組み込むことで、白色LEDに代わって青色LEDを光源に使用することができます。

液晶ディスプレイ用バックライトユニットのカットモデル

蛍光体フィルムを直下型LEDバックライト部に採用することにより、液晶ディスプレイの色域(表現できる色の範囲)が大きくなり、より繊細な色表現が可能になります。その結果、色彩はもとより陰影の表現が深まり、画に立体感・臨場感が生まれます。また、白色LED使用時には避けられない光源の個体差の問題から解放され、発光の均一性が高まって、液晶ディスプレイの画質向上が実現できます。

C.I.E 1931色度図

また、以下のイラストのように、白色LEDを利用する場合、発光ムラを小さくするため拡散板との間にある程度の距離を保つ必要がありますが、青色LEDであれば配光制御が容易になるため、白色LEDよりも光源と拡散板の距離を近づけることができます。これが、蛍光体フィルムの採用によって液晶ディスプレイの薄型化が可能になる理由です。

LCDモジュールを断面方向から見たイメージ図

蛍光体フィルムの製造プロセス

蛍光体フィルム(PSシリーズ)の製造プロセスについて簡単に解説します。以下は、一連のプロセスを描いた図になります。

  1. 樹脂混合 蛍光体を入れるペースト状の樹脂を作ります。
  2. 蛍光体混合 ペースト状の樹脂に緑色と赤色の蛍光体を混ぜて、均一になるように攪拌します
  3. 蛍光体入りのペーストを基材となるPETフィルムに塗布・乾燥させ、その上から、蛍光体入り樹脂をサンドイッチする形でフィルムをラミネートします。
  4. 自動外観検査装置(AOI)での外観検査を経て、保護フィルムを貼り合わせます。
  5. 使いやすい幅に裁断します。
  6. お客さまの製品に合わせた形に打ち抜き、完成です。
蛍光体フィルム(PSシリーズ)の製造プロセス

蛍光体フィルムのさまざまな応用例

青色LEDから白色の光を取り出す蛍光体フィルムは、ディスプレイを中心にさまざまなデバイス・機器に採用されてきました。これまでに曲面タイプの大型TVや、4K・8KのハイエンドTV、街なかのサイネージ、また特殊な形状のLED照明などに活用された実績があります。またディスプレイに採用することで解像度と色の再現性を向上できることから、手術用の医療モニターにも搭載されました。

現在、蛍光体フィルム「PSシリーズ」は、高画質化・薄型化が進むタブレット端末・ノートPC、そのほかにも液晶方式のディスプレイを使用するさまざまなデバイスへの応用が考えられます。これからも当社では、お客さまの期待に応えるべく、さらなる製品の改良を進めていきます。

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