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蛍光体の発光 そのメカニズムと求められる特性

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蛍光体の発光原理「フォトルミネセンス」

蛍光体は外部からの紫外線や可視光などの光エネルギーを吸収した後に、別の波長の光に変えて放出する物質です。液晶ディスプレイをはじめとした、さまざまなエレクトロニクスデバイスに活用されています。

その発光の原理は、ルミネセンスと呼ばれる現象です。ルミネセンスとは「原子、分子、イオンまたは電子が外部からのエネルギーを吸収して励起した後に、基底状態に戻ろうとしてそのエネルギーを電磁放射として放出する現象」のことを指します。

ルミネセンスには吸収されるエネルギーの種類によって、フォトルミネセンス、放電発光、カソードルミネセンス、エレクトロルミネセンス、化学ルミネセンスがあります。それぞれの特徴と応用した製品は次に記載の通りです。液晶ディスプレイに使われる白色LEDや、当社の蛍光体シートに使用される蛍光体が光る原理は、「1.フォトルミネセンス」に該当します。

  1. フォトルミネセンス
    ある種類の物質に光を照射した際に、照射光とは別の光を放出する現象。照射光によって物質中の電子が励起され、そのエネルギーを放出する際に光を放出する。
    応用:蛍光ランプや白色LEDなどの蛍光体
  2. 放電発光
    放電中で励起原子や分子が作られ、その遷移にともなって発光する現象
    応用:蛍光ランプ、ナトリウムランプ、水銀ランプなどの各種放電ランプ
  3. カソードルミネセンス
    励起に電子線を用いた場合の発光現象
    応用:ブラウン管テレビに使われる蛍光体
  4. エレクトロルミネセンス
    物質に直接電圧を加えることで発光させる現象
    応用:有機ELや発光ダイオード(LED)など
  5. 化学ルミネセンス
    物質中の化学反応により励起状態となり発光する現象
    応用:ホタルの光やケミカルライトなど

蛍光体に使われる材料に求められる特性

フォトルミネセンス現象によって光る蛍光体の原料は、ユーロピウムやセリウム、イットリウムなどを含んだ希土類(レアアース)です。ディスプレイなどのデバイスに使用される蛍光体には、「光を効率よく吸収して高輝度で光ること」「温度が上昇しても劣化せず発光効率が低下しないこと」「吸着水分によって劣化しない化学的安定性」などの特性が求められます。

また、ディスプレイに使われる蛍光体では、赤、緑、青の各波長域をグラフにしたときに「できるだけシャープな角度の山」を描く発光特性を持つ物質が、高い色再現性を実現します。これらの条件を満たすために、蛍光体では最適な材料の組み合わせと濃度、結晶構造を設計することが必要となります。

青色LEDから白色光を得るしくみ

液晶ディスプレイの光源に使われる白色LEDおよび当社の蛍光体フィルムは、青色LEDから放出される青い光の一部を緑と赤の蛍光体によって色を変えます。その光が変換されなかった青い光と混ざり合うことで、白い発光を得ることができます。

一般的な白色LEDでは青色LEDチップと「黄色の蛍光体」を使って白色光を得ますが、当社の蛍光体フィルムは、発光効率と色域のバランスの観点からG(緑)とR(赤)の蛍光体を配合しています。

デクセリアルズが独自開発した「硫化物 緑蛍光体」の特徴

当社の緑蛍光体の大きな特徴が、その「素材」です。
エレクトロニクスデバイスに使われる蛍光体の多くはこれまで「窒化物」で作られてきましたが、私たちデクセリアルズは「硫化物」で蛍光体を作ることに成功しました。下記のグラフは当社の硫化物緑蛍光体と一般的な窒化物緑蛍光体(β-sialon、ベータサイアロン)の発光スペクトルを表していますが、当社の硫化物緑蛍光体のほうがシャープな山を描いています。それにより、はっきりとした緑の発光を得ることができ、色の再現性の向上に寄与します。

また以下は、当社の硫化物蛍光体と、一般的な窒化物蛍光体(β-sialon)の特性を示した表です。表内に記載のFWHMは「半値幅」といって、波長方向のグラフの幅(拡がり)を示しており、小さいほうがシャープな山を描き色純度が高いことを意味します。IQEは「内部量子効率」として内部に取り込んだエネルギーの変換効率を示し、ABSは「吸収率」として光エネルギーを取り込む割合を示しています。硫化物蛍光体はIQE、ABSともに窒化物蛍光体より高く、エネルギー変換時のロスを小さく、変換に必要な蛍光体量を少なくできることを意味します。

また硫化物蛍光体の大きな特性として、粒子径が5μmと、20μm程の窒化物蛍光体に比べて非常に小さいことが挙げられます。蛍光体は材料に含まれる粒子がそれぞれ単体で発光します。それゆえ粒子が小さければ小さいほど、高解像度で光らせることが可能になります。窒化物蛍光体は原理的に粒子径を小さくすることが難しく、得られる画像の解像度に限界があります。

硫化物蛍光体のデメリットとして、窒化物蛍光体に比べて「水による化学変化を起こしやすい」という特長があります。しかし我々は、硫化物蛍光体に独自の技術で水に対する耐性を付与することに成功しました。それにより特殊な耐水バリアを設ける必要なく、蛍光体フィルムを作成することが可能となっています。当社では硫化物蛍光体の優れた物性を活かした、さらなる優れた製品を生み出すことを目指し、研究を進めていきます。

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