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【自動運転の未来】車載用センシング・カメラの高精度を実現する接着技術とは

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6年で倍増する車載用センシング・カメラ市場

最新の自動車には、周囲の状況を確認し、安全な走行を実現するためのセンシング・カメラが複数搭載されている。これらのセンサー内の部品を高精度固定するのに使用されるのが、デクセリアルズの精密接合用樹脂(Smart precision Adhesive, SA)。その技術とは‐‐

「近年、車載用センシング・カメラ市場は世界的にも急激に伸びており、当社にとっても重要なターゲットとなっています」。デクセリアルズのグローバルセールス&マーケティング本部 オートモーティブソリューション営業部統括部長の中根基之がご説明します。

――車載用センシング・カメラのマーケットが急激に拡大している背景について教えて下さい。

近年発売された自動車には、危険を感知した際に自動ブレーキがかかったり、自動で車線を維持しながら前の車に追従して走る機能など、レベル1、レベル2の先進運転支援システム(Advanced Driver-Assistance Systems, ADAS)が搭載される車種が増えています。こうしたADASや、今後普及が見込まれるさらに高度なレベル3以上の自動運転の機能を実現するのに欠かせないのが、「車載用センシング・カメラ」です。

最近の車は室内のフロントガラスの前にあるルームミラーにカメラがついていることが多いですが、これに加えてボディの前後左右にカメラを搭載する車種も増えてきました。ADASや自動運転といった技術の普及とともに車載用センシング・カメラの需要は増え続けており、2020年から26年までの6年間で、2倍以上に伸びると予想されています。

スマートフォンのカメラ部品の高精度固定技術を車載用センシング・カメラに応用

自動運転のセンシング技術に活用される車載用カメラには、高い精度が求められる。その精度を実現する接着のノウハウの大本は、デクセリアルズがスマートフォン市場で磨き上げた技術にあった。

――車載用のセンシング・カメラのどこにデクセリアルズの精密接合用樹脂(SA)が使用されているのでしょうか。

下記のイラストで説明すると、◎印で示した部分などになります。CMOSイメージ・センサーが搭載される基板と、レンズがはめこまれる「ハウジング」と呼ばれる筐体部分を接着して固定し、カメラモジュールとして仕上げるのに私たちの精密接合用樹脂(SA)が使用されています。

イメージセンサー周辺に使われる接着剤(一例)

カメラを構成する光学部品の接着は、少しでも位置や角度がずれるとぼけや画質の低下に直結するため、接着時の硬化収縮も厳密に考慮した上で、μm(1000分の1ミリ)オーダーの固定精度が求められます。同時にお客さまの生産効率を上げるために、接着剤が短時間・低温で固まり、取り扱いが容易であることも大切です。

デクセリアルズはもともと、2004年頃から従来の携帯電話(フィーチャーフォン、いわゆる”ガラケー”)のカメラを構成する部品の固定に接着剤を用いる技術を磨いてきました。従来の携帯電話に搭載されていたカメラは「ネジ」で止められていたのですが、携帯電話の薄型化・小型化が進んだこと、またスマートフォン登場以来、カメラの小型化・高機能化が進み、部品の小型化にともなってネジ固定そのものが難しくなり、接着による固定が一般化していきました。2015年頃から、車載用カメラが安全走行のためのセンサーとして使用されるケースが増え、センシングの精度を維持するためにも高い固定精度が必要になったことから、デクセリアルズの接着技術が求められる機会が増加していきました。

さまざまな被着体に合わせて最適なソリューションを提案

車載用センシング・カメラは安全運転を支援する製品だけに、ハイレベルな要件が求められる。また被着体も金属やプラスティックなど多様だ。デクセリアルズでは案件ごとに異なるお客さまのニーズに対し、ベストなソリューションを提供する努力を続ける。

――車載用センシング・カメラとスマートフォン用カメラの接着固定には、どのような違いがあるでしょうか?

最も大きな違いは車のほうがスマートフォンより耐用年数が圧倒的に長いため、接着したあとの耐久性など高いレベルの信頼性を長期に渡って要求されることです。走行時の衝撃や振動によって剥がれないのはもちろん、真夏の車内に代表される高温下で劣化しない耐熱性や、長期使用に伴う樹脂の劣化などの悪影響がないことも求められます。接着はただガッチリと固まって固定すれば良い、というものではありません。接着した被着体同士の伸び縮みに合わせて、硬化した樹脂自体も追従しなければ、剥がれてしまいます。

車載用センシング・カメラのモジュール組立において高精度に接着する際に用いられているのが「アクティブ・アライメント工法」と呼ばれる技術です。アクティブ・アライメント工法では精度を高めるために、CMOSイメージセンサーでテストパターンを撮像しながら、光軸を合わせて映像すべての領域にボケがないことを確認し、最終的に接着をおこないます。

アクティブ・アライメント工法で接着される、車載用センシング・カメラのモジュールの材質は、何種類もあります。金属ではアルミニウム、SUS、真鍮など。プラスティックはFR4、ポリアミド、PPS、PBTなどが代表的です。こうしたさまざまな素材同士を接着剤でくっつけるわけですが、アルミと一言でいっても表面処理をしているかどうかで接着のしやすさが変わってきたり、一筋縄ではいきません。お客さまごとに接着する素材、ニーズは大きく異なり、一つの案件ごとにヒアリングを重ねながらベストなソリューションを開発・提案しています。

――ますます伸びていく車載用センシング・カメラの市場において、デクセリアルズの接着剤が提供できる最大の「強み」は何でしょうか。

何と言っても、これまでに培ってきた接着に関する豊富なノウハウと技術、製品群です。接着強度が強く、熱と紫外線(UV)の両方で固まる接着剤もあれば、硬化後の吸湿度が低かったり、硬化後の収縮が小さいことに特化した接着剤などもあります。お客さまのあらゆるニーズに応じた接着のノウハウを、単に材料を提供するのではなく使い方を含めてトータルで「ソリューション」として提案できるのがデクセリアルズの強みです。これからも車載用センシング・カメラがどんな進化を遂げていくか、トレンドの変化を見ながら、さらにお客さまに価値をもたらせる製品を提供していきます。

車載カメラ向け接着剤(一例)
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