• 光半導体関連
NEW

【OFC 2025出展レポート】1.6T時代に挑む、デクセリアルズの新型光デバイスとは

光通信業界最大の展示会「OFC 2025」出展レポート

2025年3月30日から4月3日まで、アメリカ・サンフランシスコのモスコーニセンターにて、「OFC 2025」が開催されました。 OFCは世界最大規模の光通信技術の展示会として、世界中の業界関係者から注目を集める一大イベントです。

今年もデクセリアルズはこの国際的な舞台に出展し、「Empower Photonics」をテーマに、光半導体や光学デバイスなど、フォトニクス分野における最新技術を披露しました。本記事では、OFC 2025の注目点やトレンドとともに、当社の展示内容についてレポートします。

OFCのロゴと会場の写真

OFCとは?

OFC(Optical Fiber Communication Conference and Exhibition)は、光通信・ネットワーク技術分野における世界最大級の国際展示会・会議です。光トランシーバーやデータセンター向けモジュール、光ファイバー通信など、通信インフラの進化を支える幅広い技術が一堂に会する、業界にとって最重要イベントの一つとして知られています。

2025年は、83カ国以上から16,700人を超える来場者が集まり、685社もの企業が最先端の製品・技術を出展しました。1

  1. https://www.ofcconference.org/en-us/home/news-and-press/press-releases/2025/ofc-2025-concludes-in-san-francisco/ ↩︎

OFC 2025の注目点

50周年の節目を迎えたOFC 2025では、「Celebrating 50 Years of Optical Networking and Communications(OFCの50周年を祝う)」をテーマに、これまでの技術の歩みと今後の進展を見据えた内容が組まれていたのが印象的でした。

今回特に注目されたのは、通信の大容量化を背景とした次世代通信技術の動向です。1.6テラビット伝送、コヒーレント通信、リニアプラガブルオプティクス(LPO)、AIによるネットワーク最適化、マルチコアファイバー、量子ネットワーキングなど、さまざまなキーワードが会場のあちこちで取り上げられていました。また、シリコンフォトニクスの進化や6G通信の研究開発が進んでおり、光通信インフラへの期待と需要の高まりを随所で感じる内容となっていました。

これらの技術トピックは特別セッションのテーマにも反映されており、「AI時代のネットワーク設計(Frontiers of Optical Network Architecture in the AI Era)」「量子通信の応用と実装(The Year of Quantum)」「電気ケーブルから光への移行(The End of Copper)」といったテーマで、今まさに業界が大きな転換点にあることが示されていました。

加えて、実運用を想定したライブネットワーク環境「OFCnet」も今年はさらに強化されており、会場内外をつなぐ400G/800Gの高速ネットワーク上で、量子通信のリアルタイムデモやAIによるデータストリームの伝送検証などが行われました。こうした実証を通じて、理論から実用へと近づく最先端技術の進展が実感できる展示内容となっていました。

OFCでデクセリアルズの光通信ソリューションを発信

デクセリアルズがOFCに出展した背景には、当社の重点事業の一つである「フォトニクス」分野の存在があります。これまでディスプレイや電子機器分野で培ってきた光学技術を通信分野に応用し、光半導体や光学デバイスのソリューション開発を本格的に展開しています。こうした取り組みを、光通信業界における世界有数の技術展示会であるOFCで発信することは、技術力を対外的に示すとともに、事業展開の節目となる重要な機会と位置づけています。

2025年のOFCでは「Empower Photonics」を展示テーマに掲げ、次世代ネットワークを支える先進技術を複数提案しました。なかでも注目を集めたのが、新たな開発品として、OFCで初公開した「導波路型高速Photo Detector」です。あわせて、既存の光半導体や光学デバイスを活用したソリューションも紹介し、当社の技術力と今後の展開に向けた可能性の両面を伝える展示としました。

初公開の「導波路型高速Photo Detector」とは

OFC 2025において、デクセリアルズとして初公開したもののひとつが開発品として展示した「1.3μm帯 / 1.5μm帯 導波路型高速Photo Detector」です。これまでの開発成果を集約した本製品は、次世代の光通信に求められる「高速性」「高感度」「小型化」を兼ね備えたキーデバイスとして来場者から大きな注目を集めました。

本製品は、導波路構造を採用することで400Gbpsを超える高速受光性能を実現しています。さらに低容量・低暗電流により、ビット誤り率(BER)の抑制にも寄与し、安定した信号受信が可能です。対応波長は1.3μm帯および1.5μm帯で、データセンター内の短距離高速通信及びテレコム向け長距離高速通信用光トランシーバーに幅広く活用できます。想定される用途としては、800G/1.6T/3.2TbE(PAM4)や1.6Tbpsクラスのデジタルコヒーレント通信システム、さらにCPO(Co-Packaged Optics)などが上げられ、次世代光通信の中核を担うデバイスとしての展開が期待されています。

この導波路型PDについては会場内の当社ブースでショートプレゼンテーションも開催し、機能や設計思想に関する詳細な技術解説を行いました。また、200Gbaud(C-band)に対応した試作品は2025年4月以降に提供を開始予定であることもあわせて発表。実用化に向けたロードマップとあわせて、導波路型PDの持つ可能性を広く共有する機会となりました。

導波路型高速Photo Drtectorのショートプレゼンの様子

このほかの主な出展技術についても、簡単にご紹介します。

表面入射型フォトダイオード(KPDEH16Cシリーズ)

400Gbaudコヒーレント光通信システムへの対応を視野に入れた高リニアリティ・低容量の受光素子で、800G/1.6Tクラスのデータ伝送に向けた既存製品の置き換えにも適応可能です。詳細はこちら

光導波路型フォトダイオード(100Gbaud / 200Gbaud)の開発

100Gbaudおよび200Gbaudの高速動作に対応した光導波路型フォトダイオードで、高リニアリティと低容量を両立した受光素子です。800G/1.6T/3.2Tクラスの次世代高速データ伝送システムにおける既存受光素子の置き換えに適しており、将来的な200Gbaudコヒーレント光通信システムへの展開も視野に入れた開発が進められています。

シリコンフォトニクス対応PIC(Photonic Integrated Circuit)(開発品)

偏波多重、変復調、受光など複数の光学機能を一体化した小型・高密度実装対応の光集積回路(PIC)。800Gbps~1.6Tbps級のシステムへの応用が期待されています。

WSS向けWaveplate(開発品)

1550nm帯対応の新規の無機波長板で、波長選択スイッチ(WSS)の高性能小型化を目的に開発中の光学部材です。

光通信モジュール向け材料ソリューション(開発品)

高透過・低反射の光学フィルム、UV硬化型や熱硬化型の接着剤など、モジュールの信頼性・小型化・製造効率を支える材料群も紹介しました。

デクセリアルズの展示スペースの様子

OFC 2025を通じて見えた未来

今回のOFC 2025は、フォトニクス事業を戦略領域と位置づける当社にとって、これまでの技術開発の成果をグローバルに発信する貴重な機会となりました。展示テーマ「Empower Photonics」が示すとおり、単なる製品展示にとどまらず、未来のネットワークを支える技術基盤のあり方について、多くの来場者と意見を交わすことができました。

なかでも、今回初公開となった「導波路型高速Photo Detector」には、業界関係者から大きな関心が寄せられ、性能や用途に関する具体的な質問のほか、将来的な導入や協業の可能性についての声も多く寄せられました。さらに、既存の光半導体製品や材料技術も、多くの出展企業やユーザーとの対話を通じて、市場ニーズとの親和性や改良のヒントを得ることができました。特に、次世代の通信環境を支えるシリコンフォトニクスやCPO、1.6T対応技術に対して、当社のソリューションの展開可能性を具体的に検討できたことは大きな成果です。

OFCは今後の技術・市場の方向性を見極める場として、極めて価値の高い展示会です。今回の出展で得られた反響を今後の製品開発・事業提案にしっかりと活かし、次のステップへとつなげてまいります。

※本記事に掲載された写真は、OFC 2025会場にて撮影されたものであり、写り込んだ人物が特定されないよう適切な配慮を行っています。

この製品のお問い合わせはこちら