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【Battery Show Europe 出展レポート】新型SCPで示す、デクセリアルズのバッテリー保護戦略
目次
欧州最大のバッテリー技術展示会「The Battery Show Europe」出展レポート
ヨーロッパ最大のバッテリー技術展示会「The Battery Show Europe」が、2025年6月3日から5日まで、ドイツ・シュトゥットガルトのメッセ・シュトゥットガルトにて開催されました。この展示会は、バッテリー分野の主要企業が集う、業界屈指の規模と注目度を誇るイベントです。
デクセリアルズは、今回3度目となる出展を行い、リチウムイオン電池の二次保護回路に使用される「表面実装型ヒューズ(保護素子)」を中心に展示を行いました。なかでも注目を集めたのは、SCPシリーズの新製品として初披露された「SFK 75Aシリーズ」です。
本記事では、「The Battery Show Europe 2025」の注目トピックと当社の展示内容をレポートします。
The Battery Show Europeとは?
「The Battery Show Europe」は、バッテリーおよびハイブリッド電気自動車技術分野におけるヨーロッパ最大級の国際展示会・カンファレンスです。リチウムイオン電池やエネルギー貯蔵システム(ESS)をはじめとするバッテリー関連技術が一堂に会し、材料・設計・製造・周辺部品など、サプライチェーン全体を網羅する展示が行われます。欧州の自動車OEMやティア1部品メーカー、材料メーカー、研究機関などが多数来場しており、技術・調達・研究開発部門を中心とした専門性の高い交流の場となっています。出展内容は、セル製造装置、電極材料、電解液・セパレーター、新規バインダーなど多岐にわたり、次世代バッテリーの製造プロセス全体が網羅されていました。
会期中は、バッテリー業界の第一線で活躍する専門家による講演やパネルディスカッションも多数開催され、製品や技術の情報収集にとどまらず、業界全体の動向を俯瞰できる場として機能しています。また、今年は、同会場にて「Energy Storage Summit Germany」も同時開催され、再生可能エネルギーの普及に向けた蓄電システムや電力インフラへの応用といったトピックにも大きな関心が寄せられました。
The Battery Show Europeの注目トピック
今年の本展示会では、次世代バッテリー技術の進化とそれが産業構造にもたらす影響が大きな注目を集めました。リチウムイオン電池の高性能化に加え、新素材の導入や開発が進んでおり、最新の研究成果や商業化に向けた具体的なアプローチが、展示ブースやセッションを通じて多角的に紹介されていました。これらは、電気自動車(EV)や再生可能エネルギーの普及に欠かせない基盤技術として、期待が高まっています。
なかでも会期中に注目を集めたテーマの一部を、以下でご紹介します。
バッテリー技術の革新と進化
キーノートセッションでは、バッテリー産業の今後に関する幅広い視点からの議論が行われました。たとえば、欧州におけるバッテリー製造の課題やAIを活用した材料開発などをテーマとしたセッションがあり、参加者の関心を集めていました。また、セル構造の多様化や製造プロセスの自動化に関する取り組みも紹介されており、欧州域内でのバッテリー供給体制の自立化に向けた課題と対応方針についても議論されていました。
サステナビリティと循環型経済
展示会全体を通じて、「サステナビリティ」や「レジリエンス(強靭性)」は大きなテーマの一つとして位置づけられており、カンファレンスでは環境負荷の低減やリサイクル対応、持続可能な素材選定などが議論されました。また、バッテリーの設計段階から環境影響を意識する動きや、サプライチェーンの地域分散化に関する課題も取り上げられ、循環型経済を支える産業としての責任があらためて強調されていました。特に、EUの新たなバッテリーパスポート制度やトレーサビリティ要件といった環境規制が、企業の取り組みに及ぼす影響にも注目が集まっており、制度対応と技術実装の両立が求められていました。
バッテリーパスポート制度に関する詳細はこちら(https://techtimes.dexerials.jp/electronics/reuse-and-recycling/)の記事をご覧ください。
規制・標準化・安全性への対応
急成長を続けるバッテリー産業を支えるうえで、規制や安全基準の整備も重要です。会では、最新の国際規制や標準化の動向、安全性評価手法に関するセッションも実施され、法制度と技術の両立に向けた取り組みが紹介されました。また、バッテリーマネジメントシステム(BMS)や熱暴走リスクへの対策といった技術的な観点も取り上げられ、安全性を確保しながら設計の自由度やコスト効率を両立するための方向性がうかがえる内容となっていました。
エネルギー貯蔵との連携が示す未来像
再生可能エネルギーと連携したエネルギー貯蔵の統合にも高い関心が寄せられました。グリッドストレージの最適化や分散型電力網との融合など、バッテリーが社会インフラの中核となる未来像に向けたセッションが行われ、理論から実用へと近づくエネルギー革新の最前線を体感できる内容となっていました。

デクセリアルズが提案したバッテリー保護ソリューション
リチウムイオン電池の大容量化と持続可能性の両立が求められるなか、デクセリアルズは過熱によって回路を物理的に遮断し、リチウムイオン電池の発火に至るリスクを抑える「表面実装型ヒューズ」を中心に出展しました。リチウムイオン電池の二次保護回路に用いられるこの部品は、スマートフォンやPC、電動工具、電動バイクなど、幅広い機器に搭載されています。
今回紹介したのは、セルフコントロールプロテクター(SCP)シリーズです。SCPは定格電流5A〜150Aまでの幅広いモデルを揃え、小型モバイル機器から高電流を必要とする大型機器まで幅広く対応しています。
初披露の「SFK 75Aシリーズ」とは
なかでも注目を集めたのが、今回世界で初めて展示された「75A対応のSFKシリーズ」です。横幅9.5mm × 縦幅5.0mm × 厚み2.0mmというコンパクトサイズながら、75Aの大電流に対応できる構造を備えており、パワーツールやガーデンツール、蓄電池などの高負荷用途に最適なモデルです。

ブースでは、実機展示とあわせて製品構造を視覚的に解説するパネルも用意し、従来品との違いや実装性についても具体的な説明を行いました。
鉛フリー&低抵抗で、環境規制にも対応
当社は、鉛を使用しない銀めっき錫合金をエレメントに採用した製品の開発を進めています。これにより、欧州をはじめとした各国の環境規制に適合しながら、通電時の発熱抑制も実現。従来の鉛入りはんだ合金に比べて電気抵抗が低く、安全性と環境適合性の両立を可能にしています。
展示パネルでは、当社技術の優位性を示す図解のほか、融点や抵抗値の比較、適正な溶融温度領域に関する技術情報も提供し、機能性と環境性能の両面から製品の魅力を伝えました。

安全なバッテリーが切り開く、クリーンな未来に向けて
「The Battery Show Europe 2025」は、環境に配慮した高性能製品を製造してきた当社にとって、これまで開発してきた技術を世界に向けて発信する絶好の機会となりました。さらに、業界関係者との交流や、出展企業の展示、専門家による講演を通じ、バッテリー業界の現状と今後の展望について、多くの学びを得ることができました。
今年の展示会は、Energy Storage Summit Germanyと同時開催かつ、環境意識の高い欧州ということもあり、再生可能エネルギーやエネルギー貯蔵分野に関連する来場者の姿も多く見られました。当社は、パワーツールやガーデンツール、クリーナー、エネルギー貯蔵システム(ESS)といった高出力・高負荷アプリケーションに適した製品の紹介を目的のひとつとして出展し、具体的な質問や問い合わせを数多くいただくことができました。市場との接点を持ち、ニーズを的確に把握できる場として、改めてこうした展示会に出展することの意義の大きさを感じました。
今回で3回目の出展となりましたが、ヨーロッパ最大の「The Battery Show Europe」は、バッテリー関連企業との幅広いつながりを築き、業界動向を把握し、製品提案の方向性を検討する上でも重要な機会となりました。今後も製品の発信にとどまらず、展示会場で見聞きした情報や、ブース来場者様からいただいた声を製品開発に活かし、より高品質で信頼性の高いソリューションを提供してまいります。
会場にお越しいただいた方はもちろん、当日ご来場いただけなかった方も、展示内容にご興味がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
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