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粒子整列型異方性導電膜「ArrayFIX」――整列に隠された秘密

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ArrayFIXロゴの15°の角度の秘密

デクセリアルズが2016年に上市した粒子整列型異方性導電膜「ArrayFIX」は、熱硬化性樹脂の中に分散する導電粒子が一定の距離と配列で整然と並んでいることが特長で、安定的な端子の接続を実現するとともに、端子間のショートリスクを低減します。

こちらはArrayFIXのロゴですが、縦のラインが右側に少し傾いているのがおわかりいただけると思います。傾きの角度は15°となっていますが、実はその角度に、ArrayFIXの大きな特長が隠されています。本記事ではその秘密と、さらに進化した最新型のArrayFIXについて解説します。

まず、ArrayFIXによる端子接続の安定性について、データをもとに解説します。こちらのグラフは、青がArrayFIX、グレーが従来型の異方性導電膜(ACF)でCOG(Chip on Glass)実装したときの、ひとつの端子に捕捉された粒子の数の分布を示しています。従来型のACFで接続した場合、捕捉される粒子の数は図のような正規分布のような形となり、下は4個から上は18個までばらつきが出ています。それに比べてArrayFIXの粒子の捕捉数は9個から12個と極めて安定していることがわかります。

15°の角度が実現する安定接続

ArrayFIXは、なぜこれほどまでに安定した接続を実現できるのでしょうか。そのArrayFIXの安定性の大きな理由は、粒子整列の「角度」にあります。導電粒子を整列させる際に、最も効率よく端子に捕捉される配列は下図で示す「六方充填」の形です。

ArrayFIXは開発段階から、この六方充填の形に粒子が並んでいました。しかしあるとき、大きな問題に気づきます。下記の左の図は、端子の長辺方向に対して平行(角度0°)に粒子が並んでいる様子を表していますが、端子に対して粒子が平行に並ぶことで、粒子捕捉がゼロの端子が出現する可能性が出てきてしまったのです。

この問題を解決するために生み出されたアイディアが、下記の右図のように「粒子の並びをあえて傾けること」でした。端子に対して15°の角度がつくことにより、どの端子とも必ず粒子が並んだ線が交わるようになり、確実な粒子捕捉が実現できるようになります。ArrayFIXは、2016年の発売時からこの15°の角度で設計されています。

最新型「カスケードデザイン」ArrayFIX

しかし最近になって、ArrayFIXにも新たなブレイクスルーが求められるようになりました。主にディスプレイのFOG(Film on Glass)接続では、ファインピッチ化が進むとフィルム(フレキシブル)基板側、ガラス基板側ともに端子幅が細くなっていきます。最近では端子幅が10ミクロンを切る端子も登場しており、互いの基板の端子位置を合わせることが難しくなってきています。

実際のACF実装では、実装機に搭載されたカメラを使って基板のアライメント(位置合わせ)を行うのですが、端子幅が非常に小さいことからズレを最小にするための位置調整に時間がかかったり、最悪の場合、調整しきれずにタイムアウト(機械が一時停止)したりすることがあります。それを回避するために、下記のように「扇形」に端子をデザインした基板が登場したのです。その結果、当社もその基板に対応できるACFを提供することが求められるようになりました。

こちらの図をご覧いただくとわかるとおり、端子を扇状に配置すると、基板の中央から左右にかけて接続端子にそれぞれ異なる角度がつくことになります。また、ArrayFIXによる粒子捕捉の状態(見た目)が、中央を基軸として左側と右側で異なっています。導電粒子の捕捉数においては、左右でそれほどの違いはないのですが、お客さまから「捕捉の状態(見た目)を全体的に同じにしてほしい」というご要望が寄せられたことから、私たちが開発したのが「カスケード」と呼ばれるデザインでした。

「カスケード」とは英語で「何段も連なった滝」を意味し、それが転じて「同じ構造が数珠つなぎで繰り返し現れる構造」のことを指します。以下は私たちが新たに開発した「カスケードデザイン」の最新型ArrayFIXの粒子レイアウトを示しています。粒子の並びが右に傾斜している領域Aと、左に傾斜している領域Bを、互い違いにABABAB……と並べることで、接続する端子の角度が変化しても安定した接続ができるようになりました。

こちらはカスケードデザインのArrayFIXを使って端子を接続したときの模式図になります。斜めに傾けた左右の端子と中央の端子のいずれもが、大きな偏りなく粒子を捕捉しています。

以下の写真とグラフは、タイプA(傾き 0°)、タイプB(傾き 15°)、タイプC(カスケードデザイン)の3種類のArrayFIXで端子の配置角度を変化させた際の粒子の最小捕捉数のシミュレーション結果と、実際に捕捉された粒子の様子を示した写真です。シミュレーション上、タイプA(傾き0°)の接続では端子の傾きが0°(粒子配列と端子が平行)の際に粒子捕捉ゼロが出現します。これに対しタイプB(傾き15°)、タイプC(カスケードデザイン)の接続では端子に角度がついても粒子の捕捉数は安定しています。

では外観はどうでしょうか。タイプBでは左側と右側で粒子の捕捉(見た目)の様子が大きく違っているのに対し、タイプC(カスケードデザイン)では左側・中央・右側のどの端子も同じように粒子を捕捉している様子が見てとれます。カスケードデザインによって粒子捕捉の安定と同時に外観の改善もできることが実証され、先述のお客さまのご要望に応えられる製品を開発することができたのです。

粒子を意図して配置することで新しいアイディアの実現をサポート

以上、デクセリアルズが開発した最新の「カスケードデザイン」ArrayFIXについて解説しました。熱硬化樹脂の中で目に見えないほど小さな粒子を整然と整列させるだけでなく、意図する位置に整列させる。それを実現するには高度な設計技術、加工技術が必要で、現時点では世界でデクセリアルズのみが生産することが可能な製品です。

私たちは現在も、ArrayFIXのさらなる改良を進めており、新しい技術への応用の検討を続けています。その中には将来有望なディスプレイ技術の一つであるマイクロLEDディスプレイへの応用や、AR/VRグラスへの活用、また高性能化がとどまることを知らないスマートフォンのカメラモジュールに特化した特殊形状のArrayFIX、さらには電子部品の実装時に、はんだの代わりに使用できる金属粒子を用いた新しいArrayFIXの開発なども視野に入れています。ますます広がり続けるArrayFIXの可能性に、ご期待ください。

”ArrayFIX”及びそのロゴは、デクセリアルズ株式会社の日本およびその他の国における商標または登録商標です。