- 光半導体関連
光トランシーバーの基礎知識と最新動向
高速光通信を支えるデバイス、光トランシーバー
光トランシーバーは、電気信号と光信号を相互に変換するデバイスのことで、現代の高速通信ネットワークを支える重要な役割を果たしています。光トランシーバーは、データセンターや通信システムにおいて広く使用されており、大容量のデータを高速かつ効率的に伝送することを可能にしています。本記事では、光データセンターを支える光トランシーバーの基礎知識と最新動向を解説します。
データセンターの中心的な構成要素であるサーバーラック内のサーバーには、光ネットワークインターフェースカード(NIC)が搭載されています。これらのNICには光トランシーバーが装着されており、サーバー同士や他のネットワーク機器との高速通信を可能にしています。データセンター内のトラフィックを制御し、異なるサーバーやネットワークセグメント間でデータ転送を行うネットワークスイッチには、多数の光トランシーバーが搭載されています。これらのスイッチは通常、ラックの上部や専用のネットワークラックに設置されています。
光トランシーバーの動作原理は比較的シンプルです。送信側では、電気信号を光信号に変換するために半導体レーザーダイオードが使用されます。このレーザーダイオードは、入力される電気信号に応じて光の強度を変調し、光ファイバーに信号を送信します。一方、受信側では、フォトダイオードが光ファイバーを通して送られてきた光信号を電気信号に変換します。フォトダイオードは入射した光を電流に変換し、その電流が増幅され、さらにデジタル信号処理によって元の電気信号が復元されます。
光トランシーバーは、主にデータセンター、通信事業者のネットワーク、企業の大規模ネットワークなどで広く使用されています。これらの環境では、大量のデータを長距離にわたって高速に伝送するために光通信が必要不可欠です。具体的な用途としては、インターネットサービスプロバイダー、クラウドコンピューティング、5Gモバイルネットワーク、ビッグデータ分析、ストリーミングサービスなどがあります。これらのサービスでは、高速で信頼性の高いデータ伝送が要求されるため、光トランシーバーの性能がサービスの品質に直結します。
光トランシーバーの心臓、フォトダイオード
光トランシーバーの心臓部とも言えるフォトダイオードは、その構造と材料選択によって性能が大きく左右されます。一般的に使用されるフォトダイオードは、PIN(Positive-Intrinsic-Negative)構造、またはアバランシェフォトダイオード(APD)構造があります。
PIN構造は、高速応答性と低ノイズ特性を兼ね備えており、多くの光トランシーバーで広く採用されています。一方、APD構造は内部で光電流を増幅する機能があり、より高感度な検出が可能ですが、動作電圧が高くノイズも大きくなる傾向があります。使用される材料には、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、インジウムガリウムヒ素(InGaAs)などがあり、それぞれ異なる波長帯域で最適な性能を発揮します。
光トランシーバーの規格の歴史
光トランシーバーの規格は、通信技術の進歩と需要の変化に応じて進化してきました。初期の光トランシーバーは、低速で大型の筐体を持っていましたが、近年では小型化、高速化、低消費電力化が進んでいます。代表的な規格には、SFP(Small Form-factor Pluggable)、SFP+、QSFP(Quad Small Form-factor Pluggable)、QSFP28、CFP(C Form-factor Pluggable)などがあります。これらは、データレート、サイズ、消費電力、伝送距離といった仕様を定義し、異なるベンダー間での互換性を確保しています。
SFP | QSFP | OSFP | CFP | |
---|---|---|---|---|
1G | SFP | – | – | – |
10G | SFP+ | – | – | – |
25G | SFP28 | – | – | – |
40G | QSFP+ | – | CFP | |
50G | SFP56 | – | – | – |
100G | SFP-DD | QSFP28 | – | CFP,CFP2,CFP4 |
200G | – | QSFP56 | – | – |
400G | – | QSFP-DD | OSFP | CFP8 |
最新の光トランシーバー技術は、さらなる高速化と高密度化を目指しています。例えば、400Gbpsや800Gbpsの伝送速度を実現する光トランシーバーが開発され、実用化が進んでいます。これらの高速トランシーバーでは、シリコンフォトニクス技術を活用した集積化も進展しており、従来の光デバイスを大幅に小型化し、電子回路との統合を可能にしています。(参考:チップ間通信も光へ、Siフォトニクス市場は28年6億米ドル超)
また、エネルギー効率の向上も重要な技術トレンドの一つです。データセンターの電力消費量が増大する中、光トランシーバーの消費電力削減は重要な課題となっています。これに対し、効率的な光源や受光素子の開発、低消費電力の電子回路設計、熱設計の最適化が進められています。
光トランシーバーの市場については、今後の展望は非常に明るいとされています。世界の光トランシーバー市場規模は、2024年に136億米ドル、2029年までに250億米ドルに達すると予想され、2024年から2029年で年間平均して13.0%の成長が見込まれています。(参考:光トランシーバーの世界市場:フォームファクター別、データレート別、波長別、ファイバータイプ別、コネクタ別、プロトコル別、用途別、地域別 – 予測(~2029年))
そして将来の6G通信、IoT(Internet of Things)デバイスの爆発的増加、AI・機械学習の普及によるデータトラフィックの増大などにより、高速大容量通信への需要は今後さらに加速度的に増加すると予想されています。これに対応するため、光トランシーバー技術はさらなる進化を遂げると考えられます。
光トランシーバー技術は、私たちの情報社会を支える重要な基盤技術の一つです。その進化は、私たちの生活や仕事のあり方を大きく変える可能性を秘めています。デクセリアルズでは、光トランシーバーの心臓部品であるフォトダイオードの技術革新を通じて、通信のより豊かな未来を切り開くことを目指していきます。
関連記事
- SHARE
当社の製品や製造技術に関する資料をご用意しています。
無料でお気軽にダウンロードいただけます。
お役立ち資料のダウンロードはこちら当社の製品や製造技術に関する資料をご用意しています。
無料でお気軽にダウンロードいただけます。
お役立ち資料のダウンロードはこちら