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塗面を自在にデザインできる新しい光学弾性樹脂「Jettable SVR」

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進化を続けるディスプレイの形状

スマートフォンやタブレットPC、自動車のナビゲーションシステムをはじめ、私たちの生活を取り巻くデジタル機器に高性能のディスプレイが搭載されることは珍しくなくなりました。デクセリアルズが開発する光学弾性樹脂(SVR)は、そのディスプレイのカバーと液晶ディスプレイ(LCD)や有機ELディスプレイ(OLED)の間に充填し、接着することで視認性と耐衝撃性を高める材料であることから、その採用が増えています。

また、下記の写真にあるように、近年のディスプレイは従来の四角い形にとどまらない進化を見せています。車載用のディスプレイはデザイン性を高めるために複雑な形状をとるようになり、2.5Dや3Dと呼ばれる立体的なディスプレイも市場に登場しはじめました。

このほか、スマートフォンでは液晶画面の大型化にともなって、周囲の「ベゼル」と呼ばれる枠が年々狭くなる傾向にあり、より精度の高いSVRの塗布が求められるようにもなっています。

このように、今後も曲面ディスプレイや異形ディスプレイの搭載が増える傾向は続くと予想されることから、デクセリアルズではSVRのさらなる塗布形状の自由度向上を目指して、新しい技術開発の取り組みを続けてきました。

Jettable SVRの登場

その開発努力の末に生み出されたのが、2020年9月に開発発表したJettable SVR(ジェッタブル エスブイアール 以下、jSVR)です。jSVRは、インクジェット工法によってカバープレートに塗布することができるSVRです。年賀状に写真をプリントできる家庭用のインクジェットプリンタと同様に、あらかじめコンピュータ上で塗布したい形状のデザインデータを作成。そのとおりの形状に精度高く塗布できるのがjSVRの最大のメリットです。

上記はSVR、ハイブリッドSVR(HSVR)、jSVRの塗布方法をイラストにした図表です。

左側のSVRの塗布方法から見ていきましょう。まずはディスペンス塗布によってカバープレートに塗布します。その後、トッププレートを反転させ、LCDに貼り合わせることで液状のSVRを一面にぬれ広げてから紫外線(UV)によって硬化させます。しかしその工法の原理から、ディスプレイからSVRの液材がはみ出ないように塗布パターンを工夫したり、周囲にダム状の「堤防」となる樹脂を塗布しておくなどの制御が必要でした。

次に、真ん中にあるHSVRに用いられるスリット塗布です。これは、樹脂を一面に均一に塗布し、2段階のUV硬化を行うことで樹脂形状を保持することができる工法です。この方法ではSVRのデメリットであるSVRの「はみだし」を防ぐことができますが、スリットで塗布するために形状が四角形に限定されるというデザイン上の制約がありました。

それに対して右側のjSVRは、インクジェット機を用いて液状接着剤の樹脂を印刷のように必要な場所に必要量だけ塗布します。そこから、UVで仮硬化させ、部品を貼り合わせた後にUV本硬化をおこないます。この方法によって四角形だけでなく、さまざまな形状に塗布ができるようになり、はみだし等の処理も必要がなくなりました。

jSVRがもたらす数々のメリット

上記の写真はjSVRを用いた塗布の一例です。一番上の黄色い枠で囲ったノッチ形状のような凹んだ形はもちろん、中央部のように円形に抜いた形や、一番下の「Dexerials」という文字のような細かく複雑な形状も塗布することができます。

また、塗布するSVRの厚みも貼り合わせる素材の形状に合わせて部分的に変更できることから、凹凸がある材料にも対応が可能です。ソフトウェア上で塗布の形状やその厚みを自由に変更できるため、生産モデルの切り替えも迅速におこなえます。さらなるメリットとして、インクジェット塗布のスピードは従来用いられてきたディスペンス塗布やスリット塗布よりも速いことから、生産性の向上にもつながります。

jSVRの開発秘話

jSVRを開発するにあたって、最も苦労したのはそれに用いる液状接着剤の「粘度」の調整でした。インクジェット方式で接着剤を塗布するためには、数十mPa・sの粘度にする必要があったのです。

SVRやHSVRは塗布した際に流れ落ちず、「ダム」の役割を果たす堤防を作れるだけの粘度が必要なため、粘度を表す指数は約5300mPa・sで設計されています。この数字はおおよそ「いちごジャム」と同じぐらいの粘度になります。それに対してjSVRの粘度は20〜30mPa・sしかありません。同じく食品の粘度に例えれば「飲むヨーグルト」ぐらいのさらさらした液体になります。

このようにまったく違う物性でありながら、硬化したときには従来のSVR、HSVRと比べても遜色のない強度、弾性、光学特性を持たせるためにはさまざまな化学的組成の工夫が必要でした。世界中のディスプレイ開発者たちがしのぎを削って魅力的なディスプレイを開発する中で、ぜひこのジjSVRを活用して新たなデザインのトレンドを生み出してほしいと願っています。

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