• 接合関連

高速伝送用フレキシブル基板(FPC)が求められる理由——スマートフォンの高速・大容量通信化とともに

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

遠隔医療から自動運転まで、高速無線通信の幅広い利用価値

高速通信ネットワークがますます広がる昨今、多種多様なコンテンツ(テキスト、画像、音楽、動画など)を、スマートフォンやタブレットPC、ノートパソコンなどの身近なIT機器でやり取りする機会が増えています。3Gから4G、さらに5Gといった無線通信網の進化や光ファイバー回線網の整備が進むことで、新たな端末・機器が登場すると同時に、これらを使った新たなサービスが生まれるなど、ネットワークを流れるデータは指数関数的に増大しています。

遠隔医療から自動運転まで、高速無線通信の幅広い利用価値

近い将来の実現が期待される遠隔医療では、手術中の患部の映像を離れた場所の医師が確認しながら、専用の手術ロボットを操作することが想定されます。一方、自動車の自動運転においても、最終的には走行中の映像や車載センサーで取得したデータを管理センターへ送り、コンピュータの遠隔制御によって自動車を運転操作することが想定されています。

遠隔医療と自動運転のイメージ

いずれの場合も、情報収集や行動する場と情報処理や指示を行う場が離れていることから、双方向の通信であり、膨大なデータのリアルタイム処理を必要としています。ともに物理的な距離がある以上、少なからずラグが生じることはやむを得ないのですが、それを最小限にとどめないと、重大な事態を引き起こすおそれがあります。

上記に限らず、今日考えられているさまざまなサービスや技術が、通信技術とりわけ無線通信技術の進歩を前提に考えられています。

無線通信の高速化、多接続化、低遅延化

世界中で高まる高速・大容量通信への期待に応えていく上で、重要なファクターとなるのが、通信そのものの高速化、多接続化、低遅延化です。

以下は現在の高速無線通信のスタンダードである5Gの特徴を前世代の4G LTEとの比較とともに示したものになります。

無線通信の高速化、多接続化、低遅延化

このように5Gは4G LTEに比べて圧倒的に多くのデータ通信を支えることができる技術ですが、あらゆる製品がインターネットに接続されるいわゆるIoTの進展によって、将来的には5Gでも処理しきれなくなる可能性が指摘されています。2023年4月27日に開催された「第6回 デジタルインフラ(DC等)整備に関する有識者会合」(経済産業省・総務省)でも、60〜100km/hの高速走行を行う車両の自動運転では1日1台あたりのデータ通信量が767TBとの推測が示されています。

スムーズな自動運転の実現には現在のスマートフォン対比で実に250万倍もの通信容量が必要
(出典:経済産業省・総務省 第6回 デジタルインフラ(DC等)整備に関する有識者会合/IPA説明資料(独))

上記資料の中でスマートフォンのデータ通信量は平均1日 0.3GBとされていますが、スムーズな自動運転の実現には現在のスマートフォン対比で実に250万倍もの通信容量が必要との驚愕の数字が示されました。現在、さらに高速な6Gの実現に向けた技術開発が活発化しつつあり、2030年の6Gネットワーク実現に向け、技術研究グループの構築が始まっています。

スマートフォン端末に求められる対策

昨今のスマートフォンは非常に多機能で高性能なデジタル端末であり、一台で数多くの機能・サービスに対応しています。とりわけ対応する無線通信規格の多さ(4G LTE/5G、GPS、Bluetooth、Wi-Fi、キャッシュレス決済(NFC)、非接触充電など)から、日常生活を送る上で欠かせない存在になっています。そのため筐体内に各規格に対応するアンテナや部品が搭載されています。ポイントは、薄く小さな筐体にそうした機能を支える電子部品がぎっしりと詰め込まれ、規格の異なる電波を処理していることです。自宅などでスマートフォンを使っているときに電子レンジを使用すると、WiFi通信が途切れてしまうことがありますが、これは電子レンジで使用しているマイクロ波とWiFi(IEEE 802.11b/11gなど)の電波が同じ2.4GHz帯の電波を使用しているためで、WiFi側の電波が出力の大きい電子レンジからの電波の干渉を受けているためです。

スマートフォン端末に求められる対策

4G通信端末においても電波干渉は課題でしたが、より繊細な高周波帯域の電波を用いる5G通信向け端末では、さらに電波干渉の解消が強く求められるようになります。
5Gの電波はそれ自体減衰しやすく、筐体内の部品レイアウトの最適化によって電波干渉を減らしていく工夫も必要となります。また、一つひとつの部品について、ノイズ対策を含めさまざまな干渉対策を積み重ね、トータルで性能を高めていかねばなりません。

デクセリアルズの低誘電ボンディングシートによる課題解決

スマートフォンでは電波として送られてきたデータを内蔵アンテナで受信、これを電気信号へと変換し、以後の取り扱いはパソコンなどと同様に電気信号として処理がなされます。次から次に情報は送られてくることから、電気信号の処理も同様のスピードが求められ、必然的に各部品への信号伝達も高速であることが求められます。受信だけでなく、送信を含め双方向でこれを実現する必要があることから、スマートフォン内部にはその機能を支える電子部品がぎっしりと詰め込まれています。加えて、機能の都合から部品位置が制限されるものも多く、電気信号の伝送仕様基準で部品の配置を決定できないのです。具体的には、ディスプレイモジュール、カメラモジュール、スピーカー、マイク、物理ボタンなどはおおよその配置が決まっており、これらを電気的に結ぶ配線側で伝送仕様を満足させる必要があります。その意味で狭い筐体内の部品相互をつなぐフレキシブル配線板(FPC)は、高速伝送を実現する要の部品と言えます。

一般的に、電気信号が回路を伝搬する際に生じる伝送損失は、周波数が高くなるほど増大します。高速・大容量通信に対応するスマートフォンも「信号の減衰」=「伝送損失」のリスクが大きくなるため、部品全体にこの伝送損失を小さくする特性が求められます。そのため、通信端末や基地局に使われるFPCなどの回路基板の絶縁材に求められるのが「低誘電率・低誘電正接」と呼ばれる電気的特性です。低誘電率・低誘電正接についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

デクセリアルズの低誘電ボンディングシートは、FPCなどの回路基板に組み込まれることで、従来の一般的なボンディングシートと比較して高周波信号の伝送損失を低減します。また、このボンディングシートは被着体として一般的なポリイミドだけでなく、低誘電ポリイミド(変性PI)も想定しており、従来と同じFPC製造工程で高速伝送用FPCが製造できるのが大きなメリットです。製品に関する詳細は以下の記事で解説していますので、FPCの低誘電化を検討されている方はぜひご一読ください。

デクセリアルズ社製の低誘電ボンディングシート
(写真)当社の低誘電ボンディングシート

この製品のお問い合わせはこちら