- 光半導体関連
光通信の通信領域とは?テレコム・データコム・DCIの位置づけと光トランシーバーの役割
目次
AI時代で重要性が高まる光通信インフラとは
私たちが日常的に利用するインターネット通信、動画ストリーミング、クラウドサービス。これらを支えているのが世界中に広がる「光通信」のインフラです。しかし一口に光通信といっても、その通信距離によって大きく2つのセグメントに分かれています。本稿では、光通信の2つのセグメントについて解説するとともに、その中核を担う「光トランシーバー」の重要性について説明します。
テレコムとデータコムの違いとは:光通信を支える2つの通信領域
ここ数年のAIの急速な普及にともない、通信速度の高速化が進行しています。データトラフィックも年々増加しており、特にAI需要の拡大を背景に成長が加速しています。この膨大なデータ通信量を支えているのが、2つのネットワーク領域に分かれる光通信インフラです。
光通信は、大きく「テレコム」と「データコム」の2つの領域に分かれています。テレコムは都市間・国際間を結ぶ長距離通信、データコムは、データセンター内部を担う短~中距離通信です。AI需要の拡大により、特にデータコム領域では高速通信技術の進化が加速しています。※DCI(Data Center Interconnect)の詳細は後半で解説します。

テレコムとデータコムはどう接続されているのか:光通信インフラ全体の仕組み
下図は、テレコムとデータコムを含む光通信インフラ全体の構成を示したものです。私たちがスマートフォンからクラウドサービスへアクセスする際には、長距離通信を担うテレコムとデータコムが連携しながら通信を行っています。

この2つのセグメントは、いずれも物理的に光ファイバーで接続されていますが、事業者により管轄が明確に分かれています。テレコムは日本ではNTT、米国ではベライゾンなどといった通信キャリアが管理しています。一方、データセンターはGoogle、AWS、Meta、Microsoftといった大手CSP(Cloud Service Provider)が管理しています。
両者の境界には、スイッチングやルーティングを行う装置が設置されており、セキュリティドメインの切り替えや信号形式の変換が行われます。私たちが日常的に使用している通信は、この複雑な経路を経由してデータがやり取りされています。
なぜ光トランシーバーが必要か:データセンター通信を支える役割
近年のデータ通信量は、従来の「人間が必要とするデータ量の増加」とは、まったく異なる次元の変化が起きていることです。その主因こそがAIです。AIモデルの学習では、膨大なデータセットを何度も処理する必要があります。また、学習済みモデルを使った推論処理にも、リアルタイム性が求められます。これらの処理には、従来のデータ消費とは桁違いの計算資源が必要となります。
データセンターの内部は、サーバー基板が収められたラックと呼ばれる筐体が、数万台という単位で設置されています。サーバーに搭載されるCPU、GPU、TPU自体の性能もさることながら、このサーバー基板同士、ラック同士のデータ通信速度も、AIデータセンター全体の処理性能を左右します。
これらの膨大なデータを、別のサーバー基板やラック間で高速通信させるには、光通信が必要となります。基板上の電気信号は数十cm以上の距離になると、信号劣化や電力消費が問題となります。そのため一台のサーバーラック内であっても、他のサーバー基板との通信には光ファイバーが使用されます。そのとき電気信号を、光信号へと変換する重要な機能を担っているのが、「光トランシーバー」です。光トランシーバーの基本構造や動作原理については、以下の記事で詳しく解説しています。
光トランシーバーの基礎知識と最新動向

上図は、データセンター内のReach(通信距離)と接続機器を表したものです。
これらすべての階層で、光トランシーバーの高速化が進行しています。データセンターでの通信は、現在主流の800Gbpsから、1.6Tbps、3.2Tbpsへと高速化が進んでいます。テレコム通信は、都市間・国際間を結ぶ大容量の長距離通信を担っています。近年では、AI需要の拡大を背景に、データセンター間接続(DCI)の高速化需要も高まっています。
DCI(Data Center Interconnect)需要が拡大する背景
データセンター間の通信高速化の需要が拡大している原因の一つに、近年、ハイパースケーラーがデータセンターを地理的に分散配置していることがあります。分散配置の目的は、事業の継続性を確保するためです。ワールドワイドなクラウドサービスを提供する企業は、膨大に必要となる電力の確保や、大規模停電、火災、自然災害などにより個別のデータセンターが機能停止した場合でも、サービスを継続できるよう複数拠点に分散されています。
また、最新トレンドでは、DCIの高速化により物理的に離れたデータセンターを1つのデータセンターと同レベルまで低レイテンシーで高速通信させることで、Scale Accrossと呼ばれる分散データセンターシステムとして構成しています。センター間の高速通信の需要は高まり続けているのです。
データセンター間通信(DCI)に求められる技術要件
データセンター間通信(DCI:Data Center Interconnect)は、通常10〜80km程度の距離で実装され、都市圏では複数のデータセンターが結ばれています。そのため、別の記事で解説する「Coherent通信方式」技術が注目されている領域でもあります。
AI時代に急成長する光トランシーバー市場と今後の展望
本記事で解説してきた、テレコム通信、データセンター間の通信、データセンター内部の通信、そのすべてにおいて、装置間は光ファイバーケーブルで接続されています。そして、その両端には必ず光トランシーバーが配置されています。光トランシーバーは、送信側(Tx)で電気信号を光信号に変換して送出し、受信側(Rx)で光信号を電気信号に変換して受信します。この双方向の「電気‐光変換」機能により、高速・長距離のデータ伝送が可能になります。光トランシーバーの市場は、特にデータセンター向けが急成長しており、AI需要の拡大を背景に、イーサネットトランシーバー市場は急成長が続いています。さらに今後1.6Tbps、3.2Tbpsへと進化していく見込みです。
光トランシーバー高速化を支える「bps」「bps/lane」「Baud Rate」の違いや、400Gbps/lane時代の技術課題については、以下の記事で詳しく解説しています。
光トランシーバーの通信性能はどう決まる?bps、bps/lane、Baud Rateの解説
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