- 光半導体関連
パルスオキシメーターにおけるフォトダイオードの役割とは?――仕組み・選定ポイント・ウェアラブル応用まで解説
2019年末から3年以上にわたって世界を脅かした新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。各国で患者の経過観察に用いられた医療機器の一つが、「パルスオキシメーター」です。コロナ禍において、自宅療養中に市役所等からパルスオキシメーターを貸与された方がいらっしゃるのではないでしょうか。
目次
パルスオキシメーターの仕組みと酸素飽和度の測定原理
パルスオキシメーターは、医療やヘルスケア分野で広く使われている代表的な検査機器の一つです。指先に洗濯ばさみのようなクリップ状のプロープを装着し、特定の光の吸収度の違いから、血中のヘモグロビンと酸素結合の状態を推定します。その数値から、動脈血中の酸素の割合を示す「酸素飽和度(SpO₂)」と脈拍数を算出し表示しています。
酸素飽和度を測定することは、全身の臓器や組織に十分な酸素が供給されているかを評価する重要な指標となります。指先や耳たぶに装着するだけで、血中酸素飽和度を非侵襲的に(身体を傷つけないで)測定できるという利便性から、一般家庭や病院だけでなく、在宅医療、救急現場、さらにはウェアラブル機器にも応用が広がっています。
病院ではパルスオキシメーターを、事故等の救急患者や、疾患の急激な悪化が見られる患者に対してバイタルサイン(生命活動のレベルの指標)のチェックに用いています。また手術中も、パルスオキシメーターにより患者の血中酸素飽和度を連続的にモニターします。 これは、患者の生命維持に必要な酸素供給力が失われないよう、常時監視するためです。入院患者や通院患者に対してもパルスオキシメーターは検査に使われます。とくに、呼吸器疾患や心疾患、高齢者、喫煙者などは酸素飽和度が低下しやすく、定期的なモニタリングが推奨されています。また、睡眠時無呼吸症候群のスクリーニングや、高所での体調管理にも役立ちます。

そのように医療検査に欠かせないパルスオキシメーターが、血中酸素飽和度を精度高く測定するために不可欠となる部品が、光半導体の一種「フォトダイオード」です。
パルスオキシメーターの基本原理――光とフォトダイオードの関係
パルスオキシメーターは、小さな筐体から指先に向けて2種類の光を放射し、生体を透過した光を分析することで、血液中の酸素量を調べています。具体的には、赤い光(約660nm)と近赤外光(約940nm)という、目に見える赤い光と見えない赤外線に近い光を使います。
血液中で酸素を運んでいるのが、赤血球の中にあるヘモグロビンと呼ばれるタンパク質です。ヘモグロビンには、酸素と結びついた「酸素化ヘモグロビン」と、酸素が分離した「脱酸素化ヘモグロビン」の2種類があります。この2つは、それぞれ異なる波長の光を吸収する性質を持っています。パルスオキシメーターは、指先に2種類の光を当て、どれくらい光が吸収されて通過するかを測定します。この光の透過率の違いから、血液中の酸素の割合(SpO₂)を正確に算出できるのです。この光を出す部分にはLEDが使われ、通過した光を受け止めるのが「フォトダイオード」という光半導体です。フォトダイオードが光の強さを正確に捉えることで、信頼性の高い測定結果が得られます。


パルスオキシメーター用フォトダイオードの役割と選定ポイント
パルスオキシメーターのセンサー部では、LEDから照射された赤色光(660nm)と近赤外光(940nm)が指先を通過した後、その光をフォトダイオードが受光します。尚、スマートウォッチなどのウェアラブルデバイスでは、指先での透過光を使った計測ができないため、手首など別の部位で反射光を使った測定を行っています。フォトダイオードは単なる受光素子ではなく、測定精度を左右する中核部品です。パルスオキシメーター用のフォトダイオードには、以下の特性が求められます。
- 感度波長特性:660nmと940nm付近の両波長に対して高感度であること
- 低暗電流:光が当たっていない状態でのノイズ(暗電流)を極力抑え、微弱な信号光を正確に検出できること
- 高S/N比:生体を通過した微弱な光をクリアに検出し、信号処理しやすい出力を得られること
- 応答速度:脈波をリアルタイムで追従可能な応答性を備えること
- 小型・低消費電力:ウェアラブル機器への応用に適した省スペース設計と長時間動作を両立できること
これらの特性を満たすフォトダイオードの選定が、設計技術者にとって重要な検討ポイントとなります。
デクセリアルズの光半導体技術――LEDモジュールとフォトダイオード製品
当社は、パルスオキシメーター向けに光源となるLEDモジュールと、受光素子となる各種フォトダイオードを提供しています。
KED691DS3 二波長LEDモジュール
660nm(赤色光)と940nm(近赤外光)の2つのLEDを1つのパッケージに統合した小型面実装タイプ(3.5mm x 2.7mm)のLEDモジュールです。パルスオキシメーターに必要な2波長の光源をコンパクトに実装できます。

KPD30S シリコンフォトダイオード
検出波長域400~1,100nmをカバーする大面積フォトダイオードで、パルスオキシメーターの透過型センサーに最適です。広い受光面積により、指先を透過した微弱な光を効率的に捉えます。

二波長フォトダイオード
660nmと940nmの2つの波長に対して最適化された特性を持つフォトダイオードで、パルスオキシメーターの測定精度向上に貢献します。

コロナ禍で注目されたパルスオキシメーターの重要性
2020年から数年続いた新型コロナウイルス感染症の流行では、多くの患者が呼吸機能の低下により「サイレント低酸素症(無症候性低酸素症)」と呼ばれる症状を発症することが問題となりました。サイレント低酸素症とは、血中酸素濃度が危険なほど低下しているにもかかわらず、息苦しさなどの自覚症状がほとんどない状態を指します。自覚症状がなくても、低酸素状態が続くと臓器に負担がかかり、特に脳や心臓に深刻なダメージを与えるリスクがあります。そのため血中酸素飽和度のモニタリングが重要となり、パルスオキシメーターを使用することで、早期に異常を検知し、適切な医療介入につなげることができます。パルスオキシメーターの検査がコロナ禍において一般家庭にも広く普及し、世界的に需要が急増したのはそのためです。
パルスオキシメーター市場の今後――ウェアラブル機器と光半導体の進化
コロナ禍での需要急増は一段落したものの、パルスオキシメーター市場は今後も持続的な成長が見込まれています。高齢化社会の進展により、在宅医療や遠隔医療のニーズが拡大しており、日常的な健康管理ツールとしてのパルスオキシメーターの重要性が高まっています。さらに注目すべきは、スマートウォッチやフィットネストラッカーなどのウェアラブル機器への機能統合です。市場で大きなシェアを占めるスマートウォッチをはじめ、多くのウェアラブルデバイスには、すでに血中酸素飽和度測定機能が搭載されており、24時間連続モニタリングによる健康管理が身近なものになりつつあります。このようなウェアラブル応用の拡大に伴い、製品開発では小型化、低消費電力化、高精度化の3つが重要なテーマとなっています。特にバッテリー駆動のウェアラブル機器では、長時間動作を実現するための省電力設計が不可欠です。同時に、手首などでの測定でも高精度を維持するため、より高感度なフォトダイオードや効率的な信号処理技術が求められています。
デクセリアルズは、光半導体技術の革新を通じて、こうした市場ニーズに応える製品開発を進めており、医療・ヘルスケア分野のさらなる発展に貢献していきます。
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