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「居住空間化」する自動車の未来ーーディスプレイ技術の応用

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米国の自動車産業で起きている「地殻変動」

自動車業界はいま、EV(電気自動車)化と自動運転技術の進展によって、急激にその産業構造を変えようとしている。変化が生み出す新たな市場の上で、どんな未来の車のカタチを構想するのか。アメリカで長年の勤務を終えて日本に戻ってきた車載ディスプレイ用製品の販売を担当するオートモーティブソリューション営業部長の松本謙太郎は、「米国の自動車産業は現在、大変化の潮流の真っ只中にある」と話す。

――いま担当している仕事について教えてください。

私は2020年10月にアメリカ拠点から日本へ戻り、現在は車載ディスプレイ向けの素材を販売するグローバルセールス&マーケティング本部 オートモーティブソリューション営業部に所属しています。スマートフォンやノートPC市場の販売活動で培った知見を活かし、新たに立ち上がった車載ディスプレイ・センサー市場に向けて、チーム一丸となって販売を推進していくのが私のミッションです。なお、アメリカでは、西海岸でカリフォルニアを中心に、現地の大手コンシューマーエレクトロニクス機器メーカーのお客さまにデクセリアルズの製品を販売していました。

――日米の自動車産業をとりまく環境について感じていることは何かありますか?

アメリカで暮らしていた数年間では、自動車業界における「地殻変動」ともいえるEV化の波を強く感じていました。そのインパクトは非常に大きく、日本とアメリカでは温度感がまったく違うと言っても過言ではありません。自動車のEV化は、まさに経営学でいうところの「破壊的イノベーション」です。これまで大企業がほとんどを占めていた市場を、突如として現れた新興企業がひっくり返してしまう可能性もあります。

実際、アメリカの代表的な新興EVメーカーは、何度も倒産の危機に瀕しながらも、新モデルを発表すると先行予約のみで40万台以上が売れました。そして、その生産の目処がついたというニュースが流れると株価は急激に跳ね上がりました。

技術革新のスピード感は従来の自動車業界の常識を超えています。10数年前に登場したスマートフォンが「電話」をまったく別のデバイスに変えたことで、世界に革命が起きた過去を思い出させます。私たちもその潮流をキャッチアップし、ディスプレイやセンサーの分野で培った技術を応用することで、自動車という巨大な市場を切り拓くことができるだろうと考えています。

日米の自動車産業をとりまく環境

「国際水平分業」が変える自動車の生産方式

EV化、自動運転化によって大きく変化する自動車産業。そこで素材メーカーに求められるのは「アプリケーション」としてのサービスだと松本は言う。

――デクセリアルズにとって新しい分野である自動車市場に挑むうえで、何を重要視していますか?

私たちは化学的な技術を応用して製品を生み出す材料メーカーですが、自分たちの作った素材に詳しいというだけでは商売になりません。お客さまが欲している潜在的なニーズをいち早く捉え、その課題を解決するソリューション全体を素材を通じて提供するという発想が重要になると考えています。私たちが提供する「光学ソリューションサービス(Optical Bonding Service,  OBS)」もその考えから生まれたサービスの一つです。OBSに続く事業を構想するためには、日本、アメリカ、欧州、アジアの自動車メーカーが構想する未来のクルマについて、理解を深めておくことが肝心となります。

――具体的には「未来のクルマ」はどのようになっていくとイメージされていますか?

一つは生産方式の変化です。2010年代に急激に進んだパソコンやスマートフォンの生産における国際的水平分業が、EVの生産においても主流になるだろうと予想しています。従来の内燃機関による自動車は、複雑なエンジンやギアなどの何万点ものパーツを最適な状態に組み合わせる「すり合わせ工業生産」で組み立てられていました。一方、電気で動くEVは機械的な構造が単純であるため、モーター、電池、シャーシなどの各パーツを別々に生産して組み合わせることで完成車が作れます。

実際にコンシューマーエレクトロニクス製品を手掛ける台湾や中国の大手企業が、新興のEVメーカーに出資する動きも始まっており、新たなプレイヤーがこれから続々と世界中に登場すると考えています。大手自動車メーカーもEVの生産に本腰を入れており、既存の「系列」と呼ばれる傘下の部品メーカーを超えて、新技術や新素材の導入に意欲を燃やしています。私たちはその双方の動きに目配りしながら、EVの新しいものづくりに参画していきます。

コンシューマーエレクトロニクスで培った技術を未来のクルマに応用する

技術革新によって「ドライバー」が必要なくなっていくクルマの未来。デクセリアルズでは居住空間へと変化する車内において、より快適な時間が過ごせる環境を製品を通じて提供していく。

――自動車そのもののカタチも大きく変わっていきそうです。

「未来のクルマ」に関するもう一つの大きな変化は、自動運転技術の発展によって、自動車の車内空間がより人間にとって快適な「居住空間」へと変わっていくことです。いまはまだ部分的に運転支援システム(ADAS)が運転をサポートするレベル2の段階ですが、レベル3、レベル4と上がっていくにつれて人は運転から開放されます。「大きなフロントガラスに映し出された映画を家族で楽しみながら、目的地まで移動する」といった未来は、遠からず現実のものとなるはずです。またその前段階として、自動運転を支えるセンサー技術においても私たちの素材はさらに活用可能性があります。

自動運転を支えるセンサー技術

そのときこそ、私たちが長年にわたって培ってきたディスプレイやセンサーの技術が、さらに大きく活きるチャンスです。パソコン、テレビ、スマートフォンなどのコンシューマーエレクトロニクス業界で確立したノウハウを自動車に活かし、さらに自動車で磨いた技術をIoTや次世代通信など新しい分野へと転用する、そんな事業の未来を描いています。事業展開では国内のお客さまとの事業を大切にしながら、グローバルなビジネスをさらに広げる方針です。EVの開発で世界をリードする自動車メーカーへのさらなるアプローチとともに、新興EVメーカーの活動が活性化している中国や台湾などのアジア圏でも事業拡大を目指します。

デクセリアルズにとって自動車の市場は、これからの会社の発展を大きく左右する分野です。私たちがエンジンとなって「会社の未来を作っていく」という気構えを持ち、チーム全員で仕事を進めてまいります。

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