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成長するインドの電動バイク市場とバッテリーパスポート対応――リチウムイオン電池の安全を守る二次保護ヒューズ

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インド電動バイク市場の最新動向と規制・技術トレンド

日本では郵便配達やピザの宅配で見かけることが多いバイクですが、東南アジア、とりわけインドでは生活の足として広く普及しています。インドのバイクにも脱炭素やCASEの流れもあり、電動化の波は広がっています。

本記事では、拡大を続けるインドの電動バイク市場とその背景、さらにデクセリアルズのリチウムイオン電池用二次保護ヒューズ(SCP)が果たす役割について解説します。

インドにおけるバイク市場の現状と電動化の進展

インドでは、バイクが都市部から農村部まで、日常の移動手段として広く利用されています。2024年の市場規模は約2,100万台に達しています。このうち、2024年の電動バイク販売台数は約115万台で、全体の約5%を占めています。
参考:EV sales in India in CY2024 jump 27% to 1.94 million units | Autocar Professional

主要なバイクメーカーの動向と市場シェア

インドのバイク市場には、以下の主要メーカーが存在します。

企業名特長
Hero MotoCorp国内最大手で、従来の内燃機関(ICE)車両を中心に展開
TVS Motor電動バイクの販売台数で第2位を記録
Ola Electric電動バイク市場で最大のシェアを持つ
Ather Energy高性能電動バイクを提供
Bajaj Autoインド国内で電動バイク第3位

これらのメーカーは、バイクの電動化の波に乗り、製品ラインアップの拡充やバッテリー技術の開発に注力しています。

FAME補助金やPM E-DRIVEなど、インド政府のEV支援政策

近年、インドでは電動バイクの需要が急速に拡大しています。2025年現在、インド政府は「FAME(Faster Adoption and Manufacturing of Hybrid and Electric Vehicles)」と呼ばれる補助金政策を通じて、電動バイクの普及を促進しています。FAMEの目的は、電動バイクの導入を加速することで、環境負荷の低減とエネルギー安全保障を強化することです。購入者への補助金を提供することにより、EVの購入価格を抑えることで、普及を図っています。

2015年に始まった「FAME Ⅰ(フェーム1)」は、総予算約89.5億インドルピー(Rs. 895 crore)が投じられた政府プログラムで、電動バイク、電動三輪車、電動四輪車などの普及を目的に2019年まで実施されました。*1つづく「FAME2(フェーム2)」では、総予算約1,000億インドルピー(Rs. 10,000 crore、のちに約1,150億インドルピー=Rs. 11,500 croreに増額)を設定し、2019年4月以降に電動バイク・三輪車・四輪車・バスなど約160万台超の車両にインセンティブ支援が行われました。*2
現在はFAME Ⅱの後継として、「PM E-DRIVE※FAME Ⅲ相当」が開始され、購入補助金やインフラ整備などの支援が行われています。PM E-DRIVEでは普及政策の一環として、EV充電インフラの整備が進められており、全国で72,300基の充電器設置が計画されています。

スキーム実施期間予算規模主な対象備考
FAME I2015年4月~2019年3月89.5億インドルピー(Rs. 895 crore)電動バイク(e-2W)、電動三輪車(e-3W)、電動四輪車(e-4W)、eバス、小型商用車(LCV)初期の EV普及施策として実施。
FAME II2019年4月~2024年3月当初約 1,000 億インドルピー(Rs. 10,000 crore)、のちに 約 1,150 億インドルピー(Rs. 11,500 crore) に増額主に商用の電動三輪車(e-3W)、電動四輪車(e-4W)、eバス、個人用電動バイク(e-2W)補助金対象車両台数として、2024年2月改定目標では e-2W 155万2,25台、e-3W 15.5万台、e-4W 3.046万台、e-バス 7,262台とされ、支援実績も約167万台を超える報告あり。
EMPS 2024*3,42024年4月~2024年9月約77.8億インドルピー(Rs. 778 crore)電動バイク(e-2W)、商用・個人用電動三輪車(e-3W)FAME IIとPM E-DRIVEの間をつなぐ暫定措置。短期間で補助金交付を継続。
PM E-DRIVE*5,62024年10月~2028年3月(当初2026年3月までの2年計画を延長)約1,090億インドルピー(Rs. 10,900 crore)電動バイク(e-2W)、電動三輪車(e-3W)、eバス、eトラック、e救急車、EV充電インフラなどFAME IIIに相当する次期スキーム。

*1 https://static.pib.gov.in/WriteReadData/specificdocs/documents/2022/jul/doc202271169601.pdf
*2 https://heavyindustries.gov.in/fame-ii
*3 https://www.pib.gov.in/PressReleseDetailm.aspx?PRID=2040734
*4 https://www.pib.gov.in/PressReleasePage.aspx?PRID=2037735
*5 https://www.pib.gov.in/PressReleasePage.aspx?PRID=2101632
*6 https://www.pib.gov.in/PressReleasePage.aspx?PRID=2154408

Battery Waste Management Rulesによるバッテリーリサイクル義務化

インド政府は補助金を通じて電動バイク普及を促進していますが、その一方で、普及にともなう環境課題にもしっかりと目を向けています。その政策の一つが2022年に制定した「Battery Waste Management Rules(電池廃棄物管理規則)」です。同規則では、電動バイクのメーカーや輸入者に対して、バッテリーの回収とリサイクルが義務付けられました。リチウムイオンバッテリー(LIB)の回収目標は、2024-25年度に70%、2025-26年度に80%、2026-27年度以降は90%と設定されています。

また、2025年の改正規則では、バッテリーやその包装にQRコードやバーコードを印刷し、電池の生産者やリサイクル業者を識別する「EPR登録番号」を表示することが求められています。このように、インドの規則もバッテリーや包装へのQRコード・EPR登録番号表示など、EUのバッテリーパスポートと方向性が一致しています。今後、グローバル市場を目指すインドメーカーは、EU規制への対応が求められる可能性が高いと考えられます。

EUバッテリー規制とバッテリーパスポートの内容と背景

インドだけでなくEUでも、2023年に「Regulation (EU) 2023/1542」を採択し、バッテリーの持続可能性と循環経済の促進を目指しています。この規制では、以下の要件が導入されます:

  • バッテリーパスポートの導入:2027年2月18日以降、LMT(Light Means of Transport)バッテリーには、製造者情報、化学組成、炭素フットプリント、リサイクル素材の含有率などを含む電子記録(バッテリーパスポート)の作成が義務付けられます。
  • バッテリーの着脱可能性:同日以降、LMTバッテリーは、独立した専門業者によって容易に取り外し・交換可能であることが求められます。
  • 炭素フットプリントとリサイクル素材の含有率:バッテリーの炭素フットプリントの計算と、コバルト、リチウム、ニッケルなどのリサイクル素材の最小含有率が設定されます。
着脱可能なバッテリーのイメージ図

EUの規制は、バッテリーの着脱可能性とデジタルパスポートの導入を組み合わせることで、以下のような相乗効果を狙っています:

  • リサイクル効率の向上:バッテリーの取り外しが容易になることで、リサイクルプロセスが簡素化され、資源の回収率が向上します。
  • 製品寿命の延長:バッテリーの交換が可能になることで、製品全体の寿命が延び、廃棄物の削減につながります。
  • 安全性の向上:バッテリーパスポートにより、バッテリーの状態や使用履歴が明確になり、安全な使用が促進されます。

EU規制がインド電動バイクメーカーに与える影響と対応事例

EUでは今後、着脱可能な(Removable)バッテリーの義務化を予定しています。これは、ユーザー自身がバッテリーにアクセスできるように自由度を高め、管理や交換、リサイクルを容易にすることが目的です。

このような規制変更は、将来的にEU市場への輸出を目指すインドの電動バイクメーカーにとって、大きな影響を及ぼす可能性があります。特に、現在主流の固定型バッテリーではEUの法規制に適合できない可能性があるため、製品設計の見直しが求められています。

実際に、Hero MotoCorpの「Vida」シリーズのように、着脱可能なバッテリーを採用したモデルの開発も進んでいます。さらに、バッテリー交換ができるステーションを提供する企業も登場しており、そうした取り組みによってバッテリーの使用履歴や性能データを蓄積することで、将来的に求められる「バッテリーパスポート」への対応に有利となる体制を整えつつあります。

インド政府も、こうしたEUのバッテリー規制動向に一定の関心を示していますが、2025年5月時点ではEU規制の直接的な導入は行っていません。とはいえ、インドではすでに2024年から「Battery Waste Management Rules」に基づくリチウムイオン電池の回収義務が始まっており、段階的な制度強化が進んでいます。

リチウムイオン電池のリサイクルのイメージ図

今後、2027年から施行されるEUのFix型バッテリー禁止規制やバッテリーパスポートの義務化を見据え、インドの制度設計も徐々にEU基準へと歩み寄っていく可能性が高いと考えられます。

加えて、バッテリーの使用履歴や素材情報の一貫管理といったサプライチェーン全体でのトレーサビリティの強化は、EUに限らずグローバル共通の要件となりつつあります。これに対応できる企業こそが、インド市場のみならず、世界市場での競争力を獲得する鍵を握ることになるでしょう。

リチウムイオン電池の過充電・過電流に貢献するデクセリアルズのSCP

デクセリアルズは、リチウムイオン電池の過充電・過電流を防ぐ二次保護ソリューションとして、SCPを各国で展開しています。
電動バイクでも採用されており、その詳細については『世界に広がる「電動バイク」とその安全性(バッテリーと二次保護ヒューズ)』の記事でご確認いただけます。

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