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自動車ライティングの最前線:OLEDテールランプとデクセリアルズの異方性導電膜(ACF)

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自動車の進化の軌跡を示す光:OLEDテールランプの進化

自動車のテールランプは、安全とデザインの両面で車両にとって重要な役割を果たしています。近年、特に欧州系の高級車ブランドで、光源としてOLED(有機EL)照明が採用され始め、その革新性が業界内外で注目を集めています。本記事では、この技術が自動車業界にもたらす変革について、テールランプの技術進化やOLED照明の特徴、そして今後の展望を詳しく掘り下げていきます。

OLED技術は元々、スマートフォンやテレビなどの民生機器向けに発展しましたが、信頼性向上とコスト削減の進展により、自動車分野への応用が実現しています。その薄型でフレキシブルな特性は、車両デザインの自由度を広げる点で特に高級車ブランドに受け入れられている要因の一つです。

さらに、環境規制が強化されるなか、エネルギー効率の向上が業界全体で求められています。OLEDは従来の光源に比べて低消費電力であり、特に電気自動車(EV)の省エネ性能向上に役立っています。加えて、自動運転技術の発展に伴い、車両と周囲の環境とのコミュニケーション手段としてのライティング制御が注目されており、OLEDの柔軟な発光パターン制御がその可能性を広げています。例えば、均一な面発光による高い視認性が、安全性向上や事故防止に大きく貢献しています。

こうした技術進化と環境対応のニーズが相互に影響し合うなか、OLED照明は自動車テールランプ市場においてその存在感を増しています。今後、欧州市場だけでなく、日本やアジア市場でもさらなる展開が期待されています。

自動車のテールランプの光源の歴史

では、自動車のテールランプの光源技術は、どのような進化を遂げてきたのでしょうか。自動車の発展に伴い、光源もまた進化を重ねてきました。ここでは、1900年代初頭から最新のOLED技術に至るまで、その変遷を時代ごとに振り返り、整理していきます。

1900年代初頭:
この時期には、白熱電球がテールランプに採用されました。当時は信頼性が高いとされていましたが、エネルギー効率が低く、寿命が短いという課題がありました。
1960年代:
白熱電球に代わり、ハロゲンランプが導入されました。ハロゲンランプは白熱電球よりも明るく、寿命が長いことが特徴で、さらにコンパクトな設計が可能となり、自動車デザインの自由度が広がりました。

1990年代:
LED技術が進化し、自動車のテールランプに採用され始めました。LEDは高輝度で低消費電力、長寿命を実現し、小型化によってデザインの多様性が拡大しました。特に、応答速度が速いことからブレーキランプとしての安全性向上に大きく貢献しました。

2020年代:
最新の技術として、OLED(有機EL)照明が登場しました。OLEDは面発光による均一な光を実現し、さらに薄型でフレキシブルな特性を持っているため、複雑な立体デザインにも対応できます。これにより、高級感のある演出が可能となり、高級車ブランドでの採用が進んでいます。

このように過去の技術進化があったからこそ、現在のOLED技術の普及が可能になったことがわかります。次に、法的要件について詳しく見ていきましょう。

自動車のテールランプに求められる法的要件(日米欧の比較)

自動車の後部には、テールランプ、ブレーキランプ、バックランプなどが装備されており、それぞれ異なる法的要件が各国・地域で定められています。以下の表に、テールランプ、ブレーキランプ、バックランプの主な違いを示します。

ランプの種類機能点灯タイミング特徴
テールランプ車両の存在を後方に知らせる夜間走行時、または視界不良時に常時点灯比較的低輝度、常時点灯のため省エネルギー設計
ブレーキランプ減速・停止を後方に知らせるブレーキペダルを踏んだ時テールランプより高輝度、素早い応答性が要求される
バックランプ後退していることを知らせるリバースギアに入れた時後方の視認性を高めるため広範囲を照らす

法的要件には多くの共通点がありますが、特に欧州ではアダプティブリアライティングシステム(ARS)などの新技術に対応するため、光度や配光特性に関する詳細な規定が設けられています。日本や米国でも、夜間や悪天候時の視認性を確保するため、輝度基準が厳しく設定されていることがわかります。

項目日本米国欧州
基準道路運送車両の保安基準連邦自動車安全基準(FMVSS)UN-ECE(国連欧州経済委員会)規則
赤色赤色赤色
視認性夜間50m後方から視認可能詳細な最小光度規定あり詳細な光度、色度、配光特性の規定あり
配置左右対称左右対称左右対称
特記事項ブレーキランプとの区別が明確であることアダプティブリアライティングシステム(ARS)の規定あり

なお、自動車のテールランプは安全性に直結するため、上記のように各国・地域で厳格な法規制が設けられています。OLED技術は、こうした規制に対応しつつ、均一な面発光と迅速な応答性を生かし、テールランプやブレーキランプの性能を大きく向上させています。
では、次に他の光源と比較して、OLEDがどのように優れているのかを詳しく見ていきましょう。

OLED照明の特徴と他の光源との比較

OLEDは、有機半導体材料を使用した面発光デバイスで、電流を流すことで有機層が自発光する仕組みです。バックライトを必要としないため、非常に薄型で柔軟性が高く、発光面をシームレスに曲げて使うことが可能で、自動車のテールランプにおいて革新的な役割を果たしています。

OLEDにはいくつかの利点と課題があります。メリットとして、均一な面発光による高級感の演出が可能であり、薄型、かつフレキシブルな特性により、従来の光源では実現が難しかったデザインの自由度が得られます。また、低電圧駆動が可能なため、省エネ性能に優れている点も魅力です。

一方で、デメリットとして高コストが挙げられます。そのために大衆車への導入が難しい現状があります。さらに、耐久性と寿命に課題があり、他の光源と比較して長寿命化が必要です。加えて、高温環境下での性能劣化が懸念され、厳しい使用条件下での性能維持が求められています。

以下の表で、OLED、LED、ハロゲンランプの特徴を見てみましょう。

特性OLEDLEDハロゲン
輝度★★☆
輝度はLEDに劣る
★★★
高輝度
★★★
高輝度
均一性★★★
面発光により均一性が高い
★★☆
均一性を得るには工夫が必要
★☆☆
均一性は低い
エネルギー効率★★☆
ハロゲンより優れる
★★★
最も高効率
★☆☆
効率が最も低い
デザインの自由度★★★
極薄、フレキシブル、自由な形状が可能
★★☆
小型化が可能だが、放熱設計が必要
★☆☆
比較的大きなスペースが必要
耐久性と寿命★★☆
約40,000~50,000時間
★★★
長寿命
(50,000時間以上)
★☆☆
比較的短寿命
(2,000〜5,000時間)

欧州自動車メーカーにおける採用事例と今後の展望

とある欧州の高級車ブランドは、2020年モデルからOLEDテールランプの採用を本格化させています。これにより、デザイン性と機能性を両立させた斬新なデザインが業界内外で注目されています。特に、セグメント化されたOLEDパネルによる立体的で均一な光の演出が新たな基準となり、テールランプの次世代ライティング技術としての地位を確立しました。
この技術は単に見た目の美しさだけでなく、車両の状態に応じて発光パターンを変化させるダイナミックライティング機能を搭載しており、これによりユーザー体験が向上しています。また、安全機能面でも優れており、後続車両が接近しすぎた際には発光パターンを変化させることで、視覚的に注意を促し、事故防止に寄与しています。
今後は、OLED技術のさらなる進化が期待されます。コストの低減や耐久性の向上が進むことで、中価格帯の車種にも広がり、より多くの車両で採用が進むでしょう。特に、デザイン重視の欧州メーカーにとどまらず、EV技術に積極的に取り組むアジアの自動車メーカーでも、この技術が採用される可能性があります。また、スマートライティングシステムの開発や、V2X通信(Vehicle-to-Everything)、AI制御との統合により、より高度な適応型ライティングが実現されるとともに、AR(拡張現実)技術との融合が進むことで、テールランプが単なる照明装置ではなく、情報表示デバイスとして進化することも見込まれます。
このように、OLEDテールランプ技術は、安全とデザインの両面で、未来の自動車ライティングに大きな影響を与える存在となっています。

OLEDのイメージ図

デクセリアルズによる自動車OLEDテールランプへの貢献

デクセリアルズは、自動車のOLEDテールランプ市場において、特徴的な材料技術を生かしたソリューションを提供し、市場の成長に寄与しています。当社の異方性導電膜(ACF)は、自動車のCID(センターインフォメーションディスプレイ)やADAS(先進運転支援システム)カメラシステムに幅広く採用されているだけでなく、OLEDパネルとFPC(フレキシブルプリント基板)の接続にも利用されています。特に、OLEDは高熱に曝されると性能劣化するため、低温実装が可能なデクセリアルズのACFは、製造工程でのパネルダメージを最小限に抑える効果があります。
また、環境規制が厳しくなるなか、自動車部品には環境負荷を低減する接続プロセスが求められています。デクセリアルズの技術は、この点でも高い有効性を発揮し、薄型化や接続面積の小型化にも貢献しています。これにより、製品の仕様、生産量、コスト、環境要件に適合した最適な接続方法を提案し、自動車業界におけるさらなる技術革新を支えています。

OLEDが描く、未来の自動車ライティングの可能性

OLED照明技術は、自動車テールランプのデザイン、エネルギー効率、安全機能の向上において大きな可能性を開いています。デザインの自由度や省エネ性能など多くのメリットがありますが、コストや耐久性の課題も残されています。

私たちはこれらの課題に対応し、技術力を生かして車両の照明技術に貢献していきます。次世代の車両ライティングデザインに興味のある方は、ぜひご相談ください。未来のライティングソリューションを共に実現しましょう。

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