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欧州自動車市場で進む電動化と自動運転──日欧連携で支える材料ソリューション

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シリーズ:「未来の車」── 世界各地域で進化する車載技術
デクセリアルズの拠点がある4地域の担当者に取材し、各市場の自動車技術動向を紹介します。
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電動化と環境規制が進む欧州市場に挑む、デクセリアルズの新戦略

環境規制の強化と電動化、自動運転の進展が同時に進む欧州自動車市場では、各メーカーがかつてない変革期を迎えています。
こうした変化の中で、デクセリアルズでは現地パートナーとの協業を進め、欧州の自動車開発における新たな材料ソリューションを提案しています。
デクセリアルズは2014年、自動車事業に特化した拠点としてドイツ・フランクフルトにオフィスを開設しました。欧州での自動車事業を10年以上にわたって牽引してきたDexerials Europe B.V.のSales General Managerである佐々木陽介に、欧州市場の特徴と同社の戦略について詳しく話を聞きました。

欧州自動車市場の動向と、CASEがもたらす電動化・自動運転の進展

――欧州自動車業界で注目される次世代技術について教えてください

自動車産業では、電動化や自動運転などをはじめとする技術革新が進み、大きな構造変化を迎えています。近年では「CASE」(Connected、Autonomous、Shared、Electric)というキーワードで語られることが多くなっています。ヨーロッパの自動車市場を見ていて、私の実感としては、まずE(電動化)、次にA(自動運転)、そしてC(コネクテッド)、最後にS(シェアリング)という順番で進展していくと予想しています。

まず電動化についてですが、すでに欧州ではバスなどの公共交通機関から電動化が急速に進んでいます。フランクフルトでは、鮮やかなブルーグリーンの電動バスが多く走っており、環境意識を象徴する色として市民にも定着しています。大都市では集合住宅や戸建てでも充電設備を備える家が増え、街中の充電スポットも拡大しています。(出典:Electric cars: EU needs 8 times more charging points per year by 2030 to meet CO2 targets

当社のオランダの拠点であるDexerials Europe B.V.にも駐車場にチャージャーが設置されており、勤務中に車を充電できる仕組みを整備しており、利便性向上にもつながっています。路上やガソリンスタンドにも充電スポットが増えていて、電動化のインフラが目に見えて整備されているのを実感します。自宅に太陽光発電を設置して、発電した電力を自分のハイブリッド車やEVに充電する仕組みを構築している人も増えています。

――欧州での自動運転技術の発展についてはいかがでしょうか

自動運転を加速させるためには、やはりAIが重要になると考えています。自動運転技術には、カメラ、ライダー、レーダーなどのセンサーが用いられており、人間が目や耳から得た情報を脳で処理するのと同じように、これらのセンサーが収集した情報をAIが統合的に解析して車両を制御します。

実際、欧州でもAIを開発するスタートアップ、新たな技術を持つ通信業者といった、車以外のプレイヤーが自動運転の開発に関わってきています。自動運転では、車単体だけで能力を上げるには限界があります。VtoV(Vehicle to Vehicle)で車同士が通信し合ってお互いの動きが分かるようになる、あるいはVtoX(Vehicle to Everything)で車と基地局やセンターが繋がっていく。それによって利便性が高まります。

運転している途中でガソリンが無くなってきたら、今は自分で近くのガソリンスタンドを探す必要があります。それが、近い将来には「ガソリンが減ってきたので、ここから5km先のスタンドで給油しますか?」と、車の方から提案してくるのが普通になるでしょう。そうした未来に向けて、当社の強みである熱対策やフォトニクスなどの技術で、自動運転の確立に貢献していきたいと考えています。

――欧州では、カーシェアリングや電動モビリティの普及は、どの程度進んでいるのでしょうか

カーシェアリングサービスの普及状況は日本と同等で、まだ個人が車を保有しているケースが多いです。ただ、車に限らずモビリティという視点で見ると、車や電車、バスの間をつなぐ電動キックボードや電動自転車のシェアリングシステムも広く普及しています。例えばドイツやフランスでは、主要都市のいたるところにシェアポートがあって人々が「乗り捨て」で活用しています。こうしたモビリティにはリチウムイオン電池が搭載されているので、当社の表面実装型ヒューズの需要増が期待されます。

“シェア”とはちょっと違いますが、ドイツでは社用車(カンパニーカー)のほとんどがリースなんです。ドイツの町中を走ると欧州の高級車が溢れていますが、その7割以上が実はカンパニーカーのリース車だと言われています。(出典:2025年上半期のドイツ国内乗用車新規登録台数、BEVとPHEVが好調(ドイツ), Are Germany’s subsidized company cars hurting EV adoption?

――ドイツではなぜ、リース車が主流となっているのでしょうか?

この仕組みでは、リース車が概ね3年ごとに新車へと入れ替えられます。つまり、3年ごとに新車が売れる仕組みができているんですね。ドイツとしては新車販売台数が衰えず、経済を回していくことができます。3年後の車はまだかなり新しい中古車という形なので、リセールバリューも高く、それも還元していくという循環の仕組みがあります。我々社員としても、3年ごとに新車に乗れるというメリットがあります。

欧州自動車業界を揺るがす環境政策と中国メーカーの台頭

欧州では環境規制が年々厳しさを増しています。こうした動きは自動車業界にどのような影響を及ぼしているのでしょうか。競争環境の変化についても聞きました。

――欧州のカーボンニュートラル政策が、自動車メーカーの電動化戦略や開発体制に与えている影響について教えてください

電気自動車(EV)に関しては、リチウムイオン電池の世界市場で、中国企業の存在感が非常に大きくなっています。欧州では、電動化と並行してエンジン技術の再評価も進んでいます。エンジン技術に強みを持つ欧州メーカーはハイブリッド車により力を入れるようになっており、内燃機関の効率向上によるCO2の削減、また、石油に代わるバイオ燃料や合成燃料の開発も同時進行で進めています。

一方、カーボンニュートラルに関しては、どのメーカーも本気で取り組んでいます。我々材料メーカーに対しても、すでにお客様から「部品ごとに現状のCO2排出量を把握し、今後どのくらい削減するかというマイルストーンを出してほしい」という要請が出始めています。

――欧州市場での中国のEVメーカーの存在感はいかがですか?

すでに中国製EVが数多く走っており、都市の中心部にも販売店舗が見られます。多くの自動車ブランドが郊外に店舗を構える中、中国メーカーは高級ブランドが集まる市街地中心部に出店する傾向があります。こうした出店戦略には、「低価格ブランド」という従来の印象からの脱却や、ブランド価値向上を意図した狙いがあると考えられます。

また、自動車の未来を予測する上で欠かせないのが「電池」です。モビリティの電動化が進めば進むほど、電池の製造に欠かせないレアメタルを握る中国が有利になります。実際、欧州で電池を製造しようとしていたスウェーデンの会社が撤退する一方で、中国の電池メーカーが東欧、チェコやハンガリー、ポーランドといった地域に進出する動きを見せています。

そうした流れの中で、欧州の自動車メーカーも、中国とは対立するのではなく、うまく付き合っていくという方向に向かっています。欧州メーカーにとって中国は電池や部品の強力なサプライヤーです。相互に補完し合う関係を模索する動きが見られます。

欧州市場のシェア獲得に向け加速するデザイン・イン戦略

ヨーロッパ市場でのビジネスを加速させるため、デクセリアルズでは欧州でも「デザイン・イン」戦略を推進しています。

――欧州におけるデクセリアルズの今後の戦略について教えてください

欧州では非常に厳しい技術要求項目が確立されており、それらを満たさないとプロジェクトに入っていくのが難しいのが一般的です。そのため、欧州の自動車メーカー(OEM)やTier 1のメーカーが実現したいことを早い段階でキャッチして、開発の初期から我々が関わることが重要になります。

それは私たちデクセリアルズが、自動車関連ビジネスでの戦略として目指している「デザイン・イン」戦略そのものといえます。デザイン・イン戦略では、製品が設計段階にあるときから、材料メーカーである我々が、最適な性能を実現するための材料やプロセス、技術を提案します。そうすることで、他社では代替できない関係性を築くとともに、高い品質保証と安全性が求められる欧州の自動車産業において、確固たるポジションを得ることができるだろうと考えています。

――欧州でデザイン・イン戦略を推進していくには、日本の研究開発拠点との連携がカギを握りそうですね

そのとおりです。我々は、本社・栃木事業所の研究開発拠点にある実験施設「Automotive Solution Laboratory(ASラボ)」と連携し、顧客の要望にリアルタイムで応えられる開発体制を整えています。ASラボは、お客さまと未来のディスプレイを共同開発するための実験施設として作られました。最新のディスプレイ評価装置や実験工程が整備されており、各設備にはインターネットに接続された確認用のカメラも設置されています。
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その設備をフル活用することで、ヨーロッパのお客さまから私たちが持ち帰った課題を即座に検証し、試作結果をフィードバックすることができるのです。POCから量産手前まで、深い技術検証をASラボで行えることは、私たち独自の強力な強みとなっています。

ASラボとの連携によって、日欧それぞれの拠点が開発初期段階から顧客課題に対応できる体制を確立し、検証から提案までのスピードを大幅に高めることができました。日欧連携を基盤に、欧州メーカーの設計要求やデザイン思想に応える材料ソリューションの提供を通じて、高付加価値な車づくりに貢献していくのが今後の目標です。

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