- 光学関連
世界最速で進化する中国自動車市場──電動化と自動運転が変えるモビリティの未来
シリーズ:「未来の車」── 世界各地域で進化する車載技術
デクセリアルズの拠点がある4地域の担当者に取材し、各市場の自動車技術動向を紹介します。
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目次
EVと自動運転が進化する中国自動車市場での挑戦
デクセリアルズは2012年、上海に正式な拠点を設立しました。中国市場での自動車事業を10年以上にわたって牽引してきた、デクセリアルズの上海拠点(Dexerials (Shanghai) Corporation)の営業担当、Assistant Department ManagerのPatrick Sunに、中国市場の特徴と同社の戦略について詳しく話を聞きました。
政府支援が牽引する電気自動車(EV)普及と中国市場の電動化
中国では政府の政策支援を背景に、電動化と自動運転の両輪で自動車産業が大きく進化しています。
――なぜ中国ではEV化がこれほど急速に進んでいるのでしょうか?政府の支援策はどのような役割を果たしていると考えていますか?
近年、EVが急速に普及しています。その大きな要因となっているのが政府の支援策です。通常のガソリン車ではナンバープレートの取得に入札が必要で、約10万元、日本円に換算すると200万円程度の費用がかかります。(※都市によって異なる)しかも入札に当選しなければナンバープレートの取得ができません。
一方でEV購入者には、ナンバープレートを取得するための費用が免除されるため、車の取得負担がガソリン車と比較して大幅に軽減されています。さらに税制面での優遇措置もあり、消費者は積極的にEVを選ぶようになっています。加えて、上海市や北京市などの大都市では、車の保有台数を制限する政策があります。EVに対してはその制限が適用されません。こうした政策が、電動車の普及を強力に後押ししています。
――競争が激化する中国EV市場では、どのような変化が起きているのでしょうか
競争が激しくなる中、ハードウェアよりもソフトウェア、特に自動運転技術に注目が集まっています。世界のスマホ市場を席巻する中国スマホメーカーなどのICT企業も、大手の中国自動車メーカー(OEM)社とコラボレーションして、最新の機能を搭載した自動車を開発しています。
特徴的なのは、中国OEMの一部は自動運転機能による事故に対して「会社が責任を持つ」と明言している点です。といっても駐車時や入庫時など、限定的な自動運転の領域ですが、事故が起きた場合は会社が補償するという形で普及を促進しています。
また、上海市では特定エリアで自動運転タクシーも運行されており、現在は助手席に安全要員が同乗していますが、AIがデータ収集を続けることで、さらに自動運転の精度が高まっていくと思われます。

激化する中国自動車市場の競争と新興EVメーカーの台頭
中国ではEVメーカーの数が急増し、競争が年々激しさを増しています。ハードウェア中心の開発からソフトウェア主導の車づくりへと進化するなか、中国OEMのスピード感と開発力にはどのような特徴があるのでしょうか。
――中国の自動車市場では、どのような競争環境が形成されていますか?
中国の自動車市場は非常に価格競争が激しい市場です。例えば最大手OEMのある車種は、3年前は15〜16万元(約300万円)でしたが、現在は200万円以下で新モデルが販売されています。政府の補助金を計算に入れると、3〜4割の値引きが一般的になっています。
このように、車両価格は年々下がってきており、事業を継続できないメーカーも出てきています。かつては100社ほどあった自動車メーカーも現在40社程度に減り、今後は20社程度に集約されるのではないかと見られています。
――なぜ中国OEMの開発スピードは、他国に比べてこれほど速いのでしょうか
私たちは主要な中国OEMと2016年頃からお付き合いさせて頂いています。それぞれの企業の上層部の方々とお話をさせて頂いた際、彼らが開発において何を優先しているかをお尋ねしたことがあります。答えは「スピード」でした。
欧米のOEMが1モデルを開発するのに5年かけるのに対し、中国OEMの一部では9ヶ月から1年で新モデルを完成させるケースもあります。欧米のOEMが1モデルを開発する間に、2〜3回新車を発表しているのです。このスピード感が、中国製自動車の競争力の源泉となっています。
――中国ではPHEVとEVの市場シェアにどのような違いがあるのでしょうか
両方を販売するOEMの販売実数を見ると、PHEVの方が圧倒的に多いのが現状です。中国は国土が広く、また寒冷な地域も多いので、ユーザーは走行中にガソリンが無くなったり充電スタンドがない場合に備えて、ガソリンでも走れるPHEVを選ぶ傾向があります。EVの航続距離も伸びていますが、特に冬の寒い時期はバッテリーの性能が落ち、実際の航続距離はメーカー発表の値(WLTC値またはCLTC値)より短くなります。
EV輸出で世界シェア拡大を狙う中国メーカーの戦略
中国国内の需要が飽和しつつあるなか、各OEMは海外市場への輸出強化に舵を切っています。グローバル展開を見据えた中国メーカーの新たな動きとは――。
――中国製EVの世界市場シェアは、今後どのように推移すると予想されますか
今年になってアメリカの政権が変わって以降の動きですが、各国が自国産業を守るために中国の電動車の輸入を制限する傾向があり、先行きに不透明感が漂っています。しかしそれでも、中国のEVメーカーは価格競争力を武器に、長期的には世界市場での存在感を更に高めていくと見られています。
中国OEMにとっても、中国国内だけで競争を続けていると販売価格が下がり続けるうえ、国内需要の伸びが鈍化することから、海外輸出への注力が不可欠となっています。実際、主要OEMでは中国国内販売の成長が停滞しつつあり、輸出強化によって全体の販売を維持する動きが広がっています。*1
一方、海外での販売は着実に増加しており、主要OEMでは月間数万台規模の輸出を維持しています。中国全体でも2024年の自動車輸出台数は過去最高の約520万台に達し、国内需要の鈍化を補う成長ドライバーとなっています。特に、東南アジアおよび中東地域への輸出が増えており、複数の中国メーカーでは中東やロシアなどの市場を重視する動きが見られます。加えて、輸出量の増加に伴い、輸出車を輸送するための車載船舶の発注・建造を活性化させており、自社専用船舶を整備する動きが報じられています。*2
(出典:*1Chinese automakers’ foreign investment tops domestic spending for first time, data shows | Reuters, *2Which EV manufacturers performed the best in 2024 so far?, TRENDS Research & Advisory – China’s EV Industry is Conquering New Territories, *2中国BYDが自社専用「自動車運搬船」の運用を開始 EVの輸出急増に対応、リースに加え自社所有も | 大解剖 中国「EV覇権」 | 東洋経済オンライン)

自動運転と光学技術で解決する中国車特有の「ルーフ問題」
――中国の自動車関連企業からは、どのような技術的な相談や課題が寄せられていますか?
最近よく相談を受けるのは、ルーフ(天井)をガラス張りに関する技術です。他国の車にはあまり見られませんが、中国では天井がガラス張りの車が多くみられます。天井がガラス張りになっていることで、まるでオープンカーのように開放感を感じられるのがメリットです。しかし、助手席で携帯電話を操作していると、画面が天井のガラスに映り込んでしまって、後ろの人から画面が見えてしまうという問題がありました。当社の反射防止フィルム(ARF)の技術を活用することで天井のガラスに携帯電話の画面が映り込まなくする方法はないか、という相談を受けています。
また、自動運転に関しては、安全性を向上させるためにカメラやセンサーの曇りを防止する技術はないかという相談が多いです。当社には防曇技術の蓄積があることから、OEMと一緒に紹介を進めています。中国のOEMは、自動運転技術をいち早く実用化段階に移すため、当社の防曇技術やモスアイ技術など、センシングの精度を向上させる関連技術には注目が集まっています。
――自動運転以外に、中国OEMはどのような車載技術の開発に注力しているのでしょうか
とくに当社と関連する分野では、何と言ってもディスプレイの大型化です。5年前はまだ8インチ、9インチがトレンドでしたが、現在では大型ノートパソコン並の15.6インチ、さらには20インチ以上を採用する車も少なくなく、車の運転席と助手席の前面全体がディスプレイという車も増えています。
ディスプレイの大型化および1台の車に搭載されるディスプレイの数が増えることは、当社の反射防止フィルム(ARF)などの製品の販売機会の増加にも直結します。デクセリアルズが長年培ってきた光学材料の経験を活かし、車のルーフや窓ガラスの新しい技術開発にも参加していきたいと考えています。
Dexerials (Shanghai) Corporationの役割と設計段階からの技術支援
Dexerials (Shanghai) Corporationは、現地顧客との関係構築を通じて設計段階からの技術提案や開発支援を推進しています。
――Dexerials (Shanghai) Corporationは、中国市場の中でどのような役割を担っているのでしょうか
Dexerials (Shanghai) Corporationは元々、当社の前身であるソニーケミカル時代に設置され、2012年にデクセリアルズとして正式にDexerials (Shanghai) Corporationとなりました。自動車メーカーとの仕事が本格化したのは2016年以降になってからです。
車のサプライチェーンは非常に長く、1つの案件が成り立つためには、OEM、設計会社、組立会社、ディスプレイメーカー、カバーガラスメーカーという複数の会社全てに対応しなければなりません。Dexerials (Shanghai) Corporationは、これら全てを把握して1案件ずつ確実に当社製品を選んでいただけるような提案活動を行っています。
――中国市場で評価されるデクセリアルズ製品の強みは、どのような点にあると考えていますか?
当社の反射防止フィルム(ARF)は、中国市場における主要EVメーカーの車両にも幅広く採用されています。高い信頼性、低反射性能、品質の安定性で、お客さまからも高い評価を得ています。自動車はその特性から人命に直結する商品だけに、すべての部品・素材に高い信頼性が求められます。ローカルの企業が対抗してくるケースも徐々に増えていますが、信頼性の面で最終的に当社製品を選んでいただくことが多いです。
光学材料と防曇技術で支える中国自動車市場の未来
世界で最も早く自動運転社会の実現を目指す中国。デクセリアルズがどのように貢献していくのか、今後の展望を聞きました。
――今後、中国の自動車産業はどのような方向に進んでいくと見ていますか?
まず自動運転は、2〜3年後には国内全土に普及していると予想しています。現在は工業エリアなどを中心に無人バスや自動運転タクシーが走行しており、武漢などのモデル都市で多数の自動運転タクシーが導入されている段階です。安全性についてはまだ課題もあるようですが、政府が強力に推進していることから、世界の中でも早期に自動運転が普及すると見られています。
中国では自動運転や電動化が急速に進む中、車載ディスプレイや光学部品への要求も多様化しています。今後もデクセリアルズが持つ光学材料、接着、シーリングなどの材料技術を通じて、中国メーカーが目指す新しいモビリティの実現に貢献していきます。
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