- 光学関連
変化するアメリカ自動車市場と自動運転ニーズ──北米OEMに挑むデクセリアルズの戦略
シリーズ:「未来の車」── 世界各地域で進化する車載技術
デクセリアルズの拠点がある4地域の担当者に取材し、各市場の自動車技術動向を紹介します。
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目次
デトロイトから挑む、デクセリアルズの北米自動車市場戦略
2023年5月、デクセリアルズはアメリカ・デトロイトに、Dexerials America Corporationの新拠点を開設しました。現地で1年以上にわたって北米自動車メーカー(OEM)との関係構築に携わる、Sales Deputy General Managerの中根基之に、アメリカ自動車市場の特徴や事業戦略について詳しく話を聞きました。
アメリカ自動車市場の動向と生活文化
アメリカ市場を語る上で欠かせないのが、人々の生活と密接に結びついた自動車文化です。まずはデトロイトを中心とした地域でどのような車が走っているのか、中根に聞きました。
――アメリカ・デトロイト地域の自動車市場では、どのような車が主流ですか?
デトロイトを含むアメリカ中西部では電気自動車(EV)を見かける頻度はまだそれほど高くなく、街中を走る車はピックアップトラックが目立つ傾向があります。東海岸側でも、EVよりも大型車が多く見られます。家庭によって異なりますが、ピックアップトラックとSUVを組み合わせて所有するケースは比較的よく見られ、さらに余裕がある家庭では、EVを追加で所有することもあります。
こうした自動車文化の背景には、アメリカという広大な国と、その上に築かれた交通インフラの歴史があります。1950年代以降、高速道路や一般道の整備が急速に進んだことで、人々の生活は車を中心に成り立つようになりました。その結果、車は単なる移動手段ではなく、生活の一部としての役割を担うようになったのです。私が住んでいる現在の住居からは、スーパーやコンビニまで徒歩や自転車で行くのは非常に困難です。アメリカでは車は生活必需品とされることが多く、「車がなければ日常生活が難しい」といっても過言ではありません。

――アメリカの自動車市場は非常に広大ですが、西海岸と東海岸では市場特性にどのような違いがありますか?
アメリカの西海岸、特にカリフォルニア州の都市部では、デトロイトを中心とする中西部地域とは市場特性が大きく異なります。西岸部ではEVの普及が進み、中型セダンやSUVタイプのEVが多く見られます。一方で、中西部ではガソリン車やピックアップトラックなどの大型車が依然として主流で、車のサイズや用途に対する考え方も地域によって異なります。こうした違いには、都市生活での買い物や日常生活における移動距離や、ガソリン価格の地域差が影響しています。カリフォルニア州では中西部に比べてガソリン価格が約1.3〜1.5倍と高く、これがEVの普及を後押ししている面があります。(出典:Regional gasoline price differences – U.S. Energy Information Administration (EIA))
北米自動車市場を見据えたデトロイト拠点の役割
デクセリアルズは、北米の主要OEMが集まるデトロイトに拠点を設け、現地でのネットワークづくりや提案活動に取り組んでいます。
――デトロイト拠点の設立目的と北米自動車市場での活動内容を教えてください
デトロイトオフィスは主にアメリカ市場のマーケティング拠点として活動しています。アメリカを代表する車メーカーのヘッドクォーターがあるデトロイトに拠点を置くことで、北米OEM(自動車メーカー)への弊社の製品の提案や、開発につながる情報のやりとりを密にすることが主な目的です。
当拠点ではOEMやTier 1、 Tier 2のサプライヤーとのネットワーク構築、製品提案、デザイン・イン活動などを行っています。拠点を設置してからこの1年間で、この地に拠点を持つOEMのキーパーソンを把握し、定期的に訪問して提案できる関係性を築くことができました。これは現地に拠点を置いたからこそ実現できたことだと確信しています。
デクセリアルズのデトロイト支店設立に関連する詳細記事はこちら
北米市場で注力する製品と営業戦略――自動運転・EVへの対応
自動車のデジタル化が進むにつれ、ディスプレイやカメラなどの車載部品には高い性能が求められるようになっています。北米市場でデクセリアルズが取り組む主力製品と戦略について聞きました。
――デクセリアルズがアメリカ自動車市場で展開する主力製品と、北米市場での戦略について教えてください
主力製品は大きく3つあります。1つ目はディスプレイ周りに貼る低反射フィルム、2つ目はカメラやLiDAR向けの材料(接着剤など)、3つ目はヘッドアップディスプレイ用の材料です。
ディスプレイ関連では、低反射性、指紋防止、滑り性の良さなどの特性を持つ製品を提案、提供しています。最近では、ディスプレイと黒い縁の境い目を目立たなくする「シームレス」や、高級感あるインテリアを実現する「ピアノブラック」デザインへのニーズが高まっており、当社の反射色コントロール技術が注目されています。各OEMにはディスプレイの光学設計を担当するエンジニアがいて、各社ディスプレイに対するデザインコンセプトが異なり、そうした嗜好性を把握することで、真に求められる製品を開発し、提案する活動を続けています。
営業戦略としては、当社製品採用実績とその技術的背景を開発メンバーと同行しながらお客さま目線でご提案する、いわゆるデザイン・イン活動を重点的に行い、製品の良さを認めてもらうことで、まず各OEMの高級車に採用してもらい、徐々に他の車種にも採用を広げていくという方針です。製品の価値を実感してもらいながら、市場を獲得していくアプローチを取っています。
――アメリカ自動車業界における自動運転技術の発展に伴い、どのような新たなニーズがありますか?
自動運転レベルが上がるにつれて、自動車に搭載されるカメラなどのセンシングデバイスの読み取り精度の向上が強く求められています。自動運転での走行時には、対向車のヘッドライトの強い光や、西日の強い光がカメラに強く差し込むような状況でも、人や障害物を正確に検知する必要があります。
そのため、カメラの視認性を上げる技術へのニーズが急速に高まっています。具体的には、レンズ間やハウジング内部の多重反射を防ぐ低反射材料や、フロントガラスへの反射対策処理など、幅広い提案を行っています。
また、現在開発中の製品として、カメラやセンサー内に充填する真っ黒な樹脂があります。黒いプラスチックのハウジングに塗ることで内部反射をさらに抑制したり、接着剤自体を黒くして反射を防いだりするのが目的です。黒色材料は通常の樹脂とは異なる技術的な挑戦も求められますが、お客さまからの要望に応えるために研究開発を進めているところです。
――北米OEMとの協働や設計段階での関わり方について教えてください
当社はTier 3~4に位置する材料メーカーとして、OEMに対しても製品のデモンストレーションを行い、材料特性や機能を正しく理解していただく活動を行っています。こうした上流段階での情報共有を通じて、Tier 1・Tier 2と協働した最適な設計提案につなげています。近年は市場から、車載ディスプレイをより一体的かつシームレスに見せたいというデザイン要求が高まっており、当社ではその実現に向けて、薄膜化や高透明化、反射防止性能などの材料特性を最適化しています。
――アメリカの第二次トランプ政権による貿易政策や環境政策は、自動車業界にどのような影響を与えていますか?
アメリカには日本の主要自動車メーカーが進出しており、高品質な日本車を好むユーザーも少なくありません。最近の関税政策は業界全体で注目されていますが、米国内に生産拠点を持つ日系OEMは、現時点では比較的影響を抑えられていると見られます。ただし、メキシコやカナダで生産しアメリカに輸出している車両や、それらを手掛けるOEM、またそれらの国々から部品を調達しているケースでは、関税負担が増しており、サプライチェーン全体に広く影響が及んでいます。※2025年8月時点
いずれにせよ、関税によって自動車の価格が上昇すれば販売への影響は懸念されますが、当社としては市場動向を継続的に注視し、変化に応じた柔軟な対応を検討してまいります。業界全体での協調や新たな機会の創出にも目を向けながら、持続的な成長を目指していきます。

自動運転ニーズを見据えたアメリカ自動車業界の展望と成長戦略
デトロイトから始まった北米での取り組みが、今後どのように拡大していくのか。自動車市場をけん引するOEMと新興メーカー、それぞれを見据えた成長戦略について聞きました。
――今後のアメリカ拠点の成長戦略、自動車業界での展望について教えてください
北米市場では、東海岸のガソリン車に力を入れるアメリカを代表する自動車メーカーが依然として強い市場シェアを持っています。しかしその一方で、ロサンゼルスを中心に西海岸には、EVを代表するメーカーがあり、また自動運転車やそのシステムなどを新しく開発するスタートアップが次々に生まれています。当社は、その東海岸、西海岸の両方の動向を注視しながら、それぞれにアプローチしていこうと考えています。
従来のOEMと新興のEV関連メーカーではカルチャーが大きく異なりますが、ディスプレイの大型化やセンシングデバイスの読み取り精度向上の動きなどは共通しているため、我々の製品にとってはチャンスの時期です。光学技術を強みに、ディスプレイ、センシングデバイス、ヘッドアップディスプレイの3つの分野で製品開発と提案活動を継続していく方針です。
――デトロイト拠点を設立して最も良かった点は何ですか?
デトロイト拠点での対応体制を整備することで、OEMと弊社の日本本社をつなぐ情報共有や技術サポートをより円滑に進められるようになり、社内外全体のコミュニケーションが飛躍的に向上しました。
また、西海岸に出張に行くと、無人の全自動タクシーの普及がどんどん広がっていて、自動車産業が大きな変革期を迎えていることを実感します。近代的な自動車産業が本格的に始まったデトロイトから、これからの自動車の未来をお客さまとともに作っていきたいと思っています。
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