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車載ディスプレイの指紋ふき取り性能を定量評価する新手法──RFQ記載に活用できる評価基準を公開

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近年、車載ディスプレイは大型化・高輝度化が進み、ディスプレイ表面に付着する指紋が視認性と高級感を損なう大きな課題となっています。特に、表面に付着する指紋は、反射光の量や色味を変化させ、ディスプレイの表示品質を損なう要因のひとつです。

このため、自動車業界では、指紋が付着した後にどれだけ元の状態に近い見え方へ戻せるか、すなわち“ふき取り性能”を定量的に評価する手法が求められてきました。しかし、従来は、指紋の付着状態やふき取り条件のばらつきによって、評価結果を安定して再現することが難しい状況にありました。

デクセリアルズは、反射率や色差(ΔE*ab)といった光学特性を用いて、指紋をふき取った後の表面と指紋のない状態との差を適切に評価できる手法を確立しています。本記事では、その評価手法のポイントと、自動車メーカー(OEM)との協議を通じて整理した評価条件について紹介します。

なぜ指紋評価は難しかったのか― 自動車OEMが抱えていた課題

指紋評価で最も大きな課題は、付着状態やふきとり結果の「再現性」を確保することでした。人の指は柔らかさや皮脂量が一定ではなく、人工的に再現してもディスプレイ表面に均一になじませることが難しく、測定値の不一致(ばらつき)が生じていました。さらに、ふき取り方も布の種類や力の入れ具合、ふき取り回数で結果がばらつきます。測定も同様で、測定開口部(スポット)と指紋の付着した範囲が合わないと、反射率やΔE*abに大きなばらつきが出てしまうのです。

デクセリアルズ株式会社 オートモーティブソリューション事業部の商品開発部 統括部長の豊嶋はこう語ります。
「均一な指紋状態を作れない限り、ふき取り後の差も評価できない。評価の土台づくりが最難関でした」

デクセリアルズが確立した指紋ふき取り性能評価手法

デクセリアルズは自動車OEMと協議を重ね、指紋の作り方、ふき取り方、測定方法を一つのパッケージにまとめました。初期性能だけでなく、信頼性試験後の変化まで評価できる運用可能な手法です。

この評価手法の革新性は、従来の定性的な“見た目評価”を、光学特性と表面特性の双方を用いた定量評価へと転換した点にあります。光学特性として反射率やΔE*abを、表面特性として接触角を組み合わせることで、少ない試験数でも再現性の高い評価が可能になりました。

評価手法の構成要素(指紋付与・ふき取り・光学評価)

ガラスについた指紋のイメージ

指紋の再現

皮脂を模した人工指紋液を決められた量で複数点に滴下し、測定範囲全体に均一になじませます。反射防止フィルム(ARF)のように防汚性の高い表面では水分だけでは表面になじまず均一に付着しません。そのため、人工指紋液の組成や滴下量、なじませ方を最適化し、測定に必要な均一性を確保しました。評価手法の検討初期には、人工指紋液を塗布する方法として指型アクチュエータを試しましたが、塗布の均一性が確保しにくいことが分かりました。そのため、ガーゼと治具を用いて、ディスプレイ表面に膜状に均一になじませる方法を採用しました。

ふき取りの標準化

ふき取り試験に使用する布の種類、荷重、ふき取り回数、開始位置を規定し、初期のふき取り回数は測定値に影響を与えるため評価対象から除外しました。さらに、信頼性試験後も同じ条件で再度ふき取り試験を実施し、長期使用による性能の変化を確認できるようにしています。

指紋ふき取り試験の手法について説明した図

測定の安定化

反射率とΔE*abで指紋の残存度を定量化しました。測定では、測定開口内が均一に付着していることを必須条件とし、測定位置のズレや塗布ムラによる差が生じないようにしています。これにより、反射率やΔE*abの値が安定し、指紋の残り具合を定量的に評価することができます。さらに、接触角を初期と信頼性評価後に測定することで、視覚的な評価と表面の濡れ性を示す指標を組み合わせて総合的に判断できるようにしています。

OEMと共創した評価基準と信頼性試験

この手法は、OEMとの協議をもとに評価条件を構築しました。払拭布、荷重、回数、環境試験、摺動試験まで合意形成を進め、製品仕様や評価条件が記載される見積依頼書である Request for Quotation(RFQ)への反映も検討されており、今後の標準化が期待されています。RFQに記載する際の推奨条件は、ダウンロード資料にまとめています。

デクセリアルズが評価手法を確立できた理由

デクセリアルズは材料メーカーとして、長年にわたり反射防止フィルム(ARF)など光学材料の開発に携わってきました。その過程で蓄積された光学評価のノウハウや豊富な測定設備を活かし、指紋の均一化から測定条件の最適化まで、評価手法の細部を丁寧に検証することができました。

指紋ふき取り性能の評価条件(詳細版)

この評価手法は、OEMでの採用に向けた案件が進行しており、今後RFQの評価基準として標準化される可能性があります。

「指紋ふき取り性能評価手法」の詳細資料には、指紋付与条件、ふき取り試験の手順、光学評価(反射率・ΔE*ab)の推奨条件に加え、接触角を用いた表面状態(防汚性能)評価フロー、およびRFQ 記載例をまとめています。
[評価手法資料をダウンロード]

評価条件の詳細な適用方法や個別検討が必要な場合は、技術相談も受け付けています。

指紋ふき取り性能評価基準の検討や社内での合意形成に活用できる内容であり、OEMとの技術的な議論を進める際の参考情報としても役立てることができます。ぜひご活用ください。

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