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二次保護ヒューズ(SCP)開発秘話ーー電子機器の進化とともに歩む歴史

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リチウムイオンバッテリーの過充電・過電流から守る二次保護ヒューズ(SCP)

リチウムイオンバッテリーの充放電回路に過充電・過電流が起きた際に、回路を遮断し発火などの危険を防ぐ二次保護ヒューズが、セルフコントロールプロテクター(SCP)。デクセリアルズが世界で初めて開発し、これまでに20億台以上のエレクトロニクス機器に搭載されてきた。

SCPが生まれた背景と今後の展望について、当初から開発に携わってきたコネクティングマテリアル事業部の開発責任者に話を聞いた。

――SCP開発に関わるようになったのは、いつでしょうか。

SCPの開発が始まった1991年のときからです。私は入社3年目で、SCPの前はエンジニアとして異方性導電膜(ACF)やビデオカメラに搭載する結露センサの開発を担当していました。当時、リチウムイオンバッテリーはまだ量産が始まったばかりで、充放電回路の保護素子としてPTCサーミスター(Positive Temperature Coefficient Thermistor)が採用されていました。このPTCサーミスターは他社が特許を保有しており、高価な部品でした。そのためお客さまより「これに代わる製品を開発してほしい」とデクセリアルズに依頼があったのです。

他社の素子は高温になると抵抗が上昇して電気が流れなくなる仕組みでしたが、温度が下がればまた電気が流れるようになります。リチウムイオンバッテリーには発火性のある材料が使われているため、何らかのトラブルが起きた製品は使えなくなったほうが安全という考え方もあります。そこで当社では、過充電や過電流が起きたら回路を完全に遮断して、リチウムイオンバッテリーの安全性を高める素子を開発することにしました。

――デクセリアルズの高い技術力が結実し、SCPとして完成するわけですね。

もちろん、その後も試行錯誤はありました。最初に開発したのは今のような表面実装部品ではなく、フレキシブルプリント基板(FPC)の上にヒーター材を印刷し、ヒューズをプレス接続した構造でした。FPCは柔らかく曲げられる基板であることから、表面実装ではなく、手はんだ付けで接続していたのです。それでお客さまから「自動機で実装できるようにしてほしい」という要望があり、1年後に今のような自動実装機で搭載できる製品を開発、上市しました。

表面実装に対応した発売当初のセルフコントロールプロテクター(SCP)の外観写真

ノートPCからスマートフォンへ、そして鉛フリー化。進化する二次保護ヒューズ(SCP)

――その後の改良にはどのようなものがあったでしょうか?

SCPの販売開始は1994年ですが、搭載された機器のほとんどがノートPCでした。各社がどんどんノートPCを高性能化していったことから、CPUの消費電力が上がっていき、「SCPをもっと低抵抗化して、大電流に耐えられるようにしてほしい」という声が寄せられるようになりました。

当初、SCPはセラミック基板の端面に回路を形成して表裏の導通をとっていたのですが、それだと短面部の配線が細くなるためどうしても抵抗が高くなります。そこで基板に穴を開け、そこを金属で埋めることで従来よりも導通断面積を大きくするとともに最短ルートで表裏を接続することで低抵抗化を図りました。

――最近ではスマートフォンへの搭載が進んでいますね。

はい、とくに最近のスマートフォンは「急速充電」がトレンドになっており、SCPもそれに対応した新製品を開発しています。急速充電するためには大きな電流を流すことが必要で、SCPも従来品よりさらに低抵抗化することが求められるようになったのです。

その一方でスマートフォンはどんどん薄型・多機能化しているため、SCP自体のサイズを大きくすることはできません。低抵抗と小型化という相反するニーズを同時に満たすという、かなり難しい課題をクリアする必要がありました。

――いったいどうやって、その難しい課題をクリアしたのでしょうか。

従来、はんだ系合金を素材としていたヒューズエレメントを、錫系の合金に銀めっきをすることで解決しました。くわしくはこちらの記事に記載がある通り、銀は電気を通しやすい物質であるため、従来品の約3倍の電流を同じサイズで流すことができます。また内部に錫系の合金を使用することにより、はんだ系合金と同じ温度域でヒューズを溶断することを可能にしました。

さらにこの技術を採用することで、はんだ系合金では難しかったヒューズエレメントの鉛フリー化が達成できることもお客様にとっての大きなメリットとなります。電子機器に使われる素材の有害物質を定めたEUの「RoHS指令」では、2021年の現時点において高融点はんだを規制対象としていません。しかし世界的な環境意識への高まりから、鉛を含有するはんだが今後規制の対象となる可能性があり、そうなれば私たちが開発した「鉛フリー・低抵抗SCP」の需要は一気に高まるだろうと考えています。

コロナ禍で高まる二次保護ヒューズ(SCP)の需要

突如世界を襲った新型コロナウイルスの感染拡大は、人々の仕事や生活に多大な影響を与えた。それを受け増大するSCPの需要に応えながら、デクセリアルズでは来るEV時代に向けて新技術の開発を進める。

――SCPの今後の市場展開について教えて下さい。

いま新型コロナウイルス感染症の流行の影響で、世界中でリモートワークやオンライン学習が広がり、ノートPCやタブレットPCの需要が急増しています。まずはそのニーズの増加にしっかりと対応することが第一です。それに加えて「ステイホーム」で家にいる時間が増えたことから、掃除用のクリーナーやDIYのための電動工具なども売れており、満員電車を避けて電動バイクや電動自転車に乗る人も増えています。

そうした駆動系のエレクトロニクス機器には、大容量・大電流に対応したSCPが搭載されていますが、当社では近い未来に確実に来る「ガソリン自動車から電気自動車(EV)へのシフト」を見据えて、EVに対応できるSCPの開発も進めています。

――EVに搭載するSCPには、どのような要件が求められるのでしょうか?

一番の違いは、エレクトロニクス機器に比べて圧倒的に大電流・高電圧になるということです。EVに搭載されるリチウムイオンバッテリーパックは、直流で400V〜1000Vもの電圧を生み出します。それだけ電圧が高くなると「アーク放電」といって、一旦ヒューズで回路を遮断しても、空気中を電気が放電して雷のように伝わってしまう現象が起こります。このため、これまでのSCPとは違うアプローチや構造が必要です。

電圧が高くなればなるほど、回路を遮断するのが難しくなりますが、それだけ大きなエネルギーの塊であるリチウムイオンバッテリーの安全を確実に担保する方法を確立しなければ、事故などが起こったときに搭乗者やレスキューの人々が危険に曝されることになります。EVに搭載するSCPのニーズが今後世界的に高まることは間違いないので、当社でも力を入れて開発を進めているところです。

SCPの応用展開
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