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リチウムイオンバッテリーの大電流化に対応する二次保護ヒューズ(SCP)の技術

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大電流化を続けるリチウムイオンバッテリー

身の回りのノートPCやスマートフォンの電源として使われるリチウムイオンバッテリーですが、技術の進歩によって、大電流化が年々進んでいます。最近では電動バイク、電動自転車などのモビリティや、コードレスの電動工具などでも動力源として使われるようになってきました。

私たちデクセリアルズが開発・発売しているリチウムイオンバッテリーの二次保護ヒューズ「SCP」(Self Control Protector)も、大電流化に対応したソリューションが求められるようになっています。本記事では、その事例について紹介します。

並列に二次保護ヒューズ「SCP」を接続し、大電流に対応

私たちは基本的に、リチウムイオンバッテリーの二次保護機能を一つの「SCP」素子で担いたいと考えています。部品点数が増えればコストは上がり、管理・監視すべき内容が増えてシステムが複雑化してしまうため、避けるべきでしょう。安全を優先するならなるべくシンプルな構造・構成が望まれます。しかしさまざまな理由で、一つの素子ではなく「SCP」を複数接続することで大電流に対応するケースもあります。図1はその「並列回路」の模式図です。

並列接続による大電流対応の一例
図1 並列接続による大電流対応の一例

図1では、定格電流 30Aの「SCP」を、3つ並列につなぐことで全体で90Aの大電流に対応する回路を示しています。この回路図のポイントは、ヒューズエレメントを加熱溶断させるヒーター(抵抗器)にダイオード(整流器)が接続されているところです。

なぜダイオードが必要になるのか

前項でご紹介した「SCP」の並列回路では、ダイオードを特定の位置に組み込むことあるいは同等の機能を持ったFET(電界効果トランジスタ、Field effect transistorの略)を組み込むことが必須となります。過電流で切断される前の、「SCP」の並列回路を示した図2をご覧ください。論理的には、「SCP」はいくつでも並列につなぐことができ、その数を増やすことで大電流に対応ができます。後ほど詳しく説明しますが、もし並列回路にダイオードが接続されていなかった場合、ヒューズが溶断されても、電流が流れる経路が残ってしまう可能性があるのです。「SCP」を利用した二次保護の大前提は「確実な回路の遮断」であり、電流が流れる経路を残すことは許されません。

並列接続による大電流対応
図2 並列接続による大電流対応

以下の図3に過電流保護動作後の「SCP」のヒューズエレメントの写真を示します。四角いヒューズエレメントの一箇所が縦に切れたように溶断されています。これは等価回路(図3右側の回路)をみると分かると思いますが、「SCP」の内部には回路上2つのヒューズが存在し、写真はそのうちの1つだけ切れた状態であることを示しています。このように、過電流による回路切断は、かなりの確率でヒューズの片方のみが切れることになります。正確には、どちらか一方(例えば電気抵抗がわずかでも高い側)が先に切れ、その段階で電気の流れが止まるため、残された側は溶断せずに残ってしまうのです。

過電流保護動作後のSCPの内部状態
図3 過電流保護動作後のSCPの内部状態

ではここで並列接続においてダイオードがなかった場合を考えてみます。図4は、並列接続された3つの「SCP」が、過電流によってそれぞれ機能し溶断された状態を表しています。A,B,Cの3つの「SCP」はいずれもFuse1あるいはFuse2のいずれか片方のヒューズが切れた状態です。もしも切れたのが同じ側のヒューズ(Fuse1或いはFuse2)のみであれば、回路全体が切れリチウムイオンバッテリーは保護されます。ところが、図4のように、切れたヒューズ3つ全てが同じ側でない場合、回路には少なからず電流が流れることになります。つまり、二次保護機能の完全性を担保できなくなり、リスクを残すことになります。

ダイオード(整流器)がない場合の電流経路の一例
図4 ダイオードがない場合の電流経路の一例

この問題の解決のために、整流機能を持つダイオードを挿入しています。電気の流れを一方向に制限することで、「SCP」のどちらサイドのヒューズが溶断されても回路が遮断されます。電流を制御するFET(電界効果トランジスタ)でも整流は可能なため、ダイオードの代替として挿入可能です(図5参照)。

ダイオード(整流器)がある場合の電流経路の一例
図5 ダイオードがある場合の電流経路の一例

充電系と放電系を分けて二次保護ヒューズ「SCP」を接続

図6は、コードレスの電動工具や電動バイクなどの瞬間的に大電流を必要とする機器に、「SCP」を組み込んだときの回路図の一例になります。ポイントは大電流が流れる放電回路と充電回路を分けて考え、充電回路のみに「SCP」を使っている点です。

過充電保護に特化し、充電系回路にのみSCPを接続した回路の一例
図6 過充電保護に特化し、充電系回路にのみSCPを接続した回路の一例

一般的に充電に用いられる電流は、電動工具などのパワーツールでも3〜10Aほどの小さな数字です。それに対して、電動バイクが坂道を登り始めるときなど、大きな動力を必要とする際には100A以上の大電流が流れることが珍しくありません。もし、充電と放電の回路を同一にしていた場合、その放電時の大電流によって「SCP」が切れてしまう可能性があります。そのため、モビリティやパワーツール系バッテリーに「SCP」を使う際には、回路を放電と充電に分けて、過充電保護に特化して充電回路のみに使用することも考えられます。

リチウムイオンバッテリーは年を追うごとに高性能化しており、大容量化・大電流化が進んでいます。今後ますます増え続けるリチウムイオンバッテリーを使った大型の動力機器の安全のために、デクセリアルズはSCPのさらなる進化に挑んでいきます。

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