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ADASの進化と自動運転の未来――デクセリアルズが支えるセンシング技術
目次
自動運転の進化とCASEの潮流
自動車業界は現在、「CASE」という4つのキーワードを軸に、技術革新の波が進んでいます。CASEとは、Connected(コネクテッド)、Autonomous Driving(自動運転)、Shared & Service(シェアリング&サービス)、Electric(電動化)の頭文字を組み合わせた造語で、これらの技術革新が自動車の未来を変えると期待されています。
CASEの各要素
- Connected(コネクテッド):自動車がインターネットや他の車両、インフラと常時接続されることで、リアルタイムの情報共有や高度なサービス提供が可能となります。
- Autonomous Driving(自動運転):人工知能やセンサ技術を活用し、車両が自律的に走行する技術です。これにより、交通事故の減少や移動の効率化が期待されています。
- Shared & Service(シェアリング&サービス):カーシェアリングやライドシェアなど、車両を共有する新たなモビリティサービスの提供を指します。
- Electric(電動化):環境負荷を低減するため、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)などの電動車両の普及が進んでいます。
本記事では、CASEの2つ目である「Autonomous Driving(自動運転)」を実現する「先進運転支援技術(ADAS)」と、そこでセンサの果たす役割について解説します。
ADASとは― 自動運転を支える先進運転支援システム
自動運転の実現に向けて普及が進む「ADAS」とは、Advanced Driver Assistance Systemsの略で、ドライバーの運転を支援し、安全性や快適性を向上させるシステムです。具体的には、以下のような機能が含まれます。
- 車線逸脱警報(LDW)
- 衝突被害軽減ブレーキ(AEB)
- アダプティブクルーズコントロール(ACC)
- 駐車支援システム
これらの機能は、自動運転技術(Autonomous Driving)の実現に向けた重要な技術基盤と位置付けられています。
自動運転レベルの分類(レベル0〜5)
自動運転は現在、国際的に定められた5段階のレベルで分類されています。
| レベル0(運転支援なし) | ドライバーが全ての運転操作を行う。 |
| レベル1(運転支援) | 車両がステアリング操作や加減速のいずれかを支援。 |
| レベル2(部分自動運転) | 車両がステアリング操作と加減速の両方を制御。ただし、ドライバーの監視が必要。 |
| レベル3(条件付き自動運転) | 特定の条件下でシステムが運転を担うが、必要に応じてドライバーが介入。 |
| レベル4(高度自動運転) | 特定の条件下で完全自動運転を実現し、ドライバーの介入は不要。 |
| レベル5(完全自動運転) | どんな環境でもシステムが運転を完全に制御し、ハンドルやペダルが不要。 |

現在、各国の新発売される車両では、レベル2の自動運転機能が広く採用されており、とくに欧州や日本では、ADAS機能が標準装備されるケースが増えています。一方、レベル3以上の技術については、法整備や安全性の検証が必要とされており、限定的な導入にとどまっています。
例えば、ある日系の自動車メーカーは2021年にレベル3搭載車両を発売しましたが、それは100台限定での販売でした。また、欧州の自動車メーカーもレベル3のシステムを一部の国の市場で導入しています。
自動運転レベル4・5自動運転の最新動向
自動運転レベル4では、限定地域内ではあるもののロボタクシー(無人運転タクシー)の導入が進んでおり、商用化に向けた取り組みも進んでいます。
- 北米の自動運転サービス: アメリカのカリフォルニア州やアリゾナ州、テキサス州やネバダ州などの一部地域でロボタクシーのサービスを展開(ただし北米の1社はすでに撤退を表明)。
- 中国の自動運転サービス: 北京や上海で自動運転タクシーを試験運用。
ただし、公道での完全自動運転には法的な制約が多く、商用化には慎重な対応が求められています。また、自動運転に関しては各国で法的規制の議論が進められています。特にレベル4以降の車が事故を起こした際に、誰が責任の主体となるかが論点となっており、レベル4導入に対する対応も各国それぞれに異なります。
一方、商用車による限定されたエリアや配送等の特定用途での無人運転は、ビジネスの効率化と収益をもたらすと期待されています。実際に北米では最近、自動運転システムの大手企業が配車アプリを展開する企業と組んで、新しいサービスを展開する動きも始まっています。
ADAS市場の拡大と普及の現状
2022年の調査データによると、ADASおよび自動運転システムの世界搭載台数は2021年時点で約4,000万台に達しており、その後も各国の新車販売では運転支援機能の標準装備化が進み、ADASの普及率は年々上昇傾向にあります。とくにレベル2やレベル2+の機能拡張が続き、今後も市場成長が見込まれています。(参考URL:自動運転車等の世界市場30年に7900万台 21年実績の2倍、矢野経済予測 – 一般社団法人 日本自動車会議所)
センサーフュージョンが支えるADASの高精度センシング
自動運転の要であるADASの機能実現には、車両周辺の状況を正確に把握する各種センサが不可欠です。現在は主に、以下の技術が使用されています。
主要センサ
- カメラ:映像情報により車線や標識を認識、歩行者の検知
- レーダー:電磁波により、車両の相対速度や距離を測定
- LiDAR(ライダー):レーザーによる3Dマッピングと高精度な物体認識
- 超音波センサ:超音波により近距離の障害物を検知
上記のセンサにはそれぞれに長所・短所があり、特徴の異なる複数のセンサを搭載することで、外部環境のより正確な認識が可能となります。また、安全な自動走行の実現には、晴天の日中だけでなく、雨や雪、霧などのさまざまな気象条件や、暗い夜間でも対応できる必要があります。そのために重要となるのが、複数のセンサから得た情報を統合し、より精度の高い環境認識を行う技術「センサーフュージョン」です。

センサーフュージョンを高度化することで、各センサの弱点を補完し、安全で信頼性の高い運転支援が可能となります。また雪や強い雨など荒天時の状況に対応するために、信号や道路から信号として電波を発信することで車のセンシングを補完するといった、インフラ側での対応技術も検討されています。
センサーフュージョンの実例として、欧州メーカーが2018年に発表した自動車では、カメラ:6個、ミリ波レーダー:5個、LiDAR:1個、超音波センサ:12個が搭載されました。また北米の自動運転サービスの車両には、カメラ:16個、ミリ波レーダー:21個、LiDAR:5個が搭載されています。2021年発売の日系メーカーのモデルでは、フロントセンサカメラ:2個、レーダーセンサ:5個、ソナーセンサ:12個、LiDAR:5個が搭載されました。このようにセンサの搭載個数を増やすことでセンシング機能の向上が図られていますが、一方で、センサの高性能化に伴い、車両コストの上昇が課題となっています。
ADASカメラの役割と構成
外界の映像情報を認識するカメラは、ADASにおいてとくに重要な役割を果たしています。最近採用が進んでいるのが「デュアルカメラ」「トリプルカメラ」と呼ばれる複数のカメラをモジュールに搭載するシステムです。
- デュアルカメラ:2つのカメラを使用することで、立体視が可能になり、対象物との距離測定の精度が向上します。これにより、衝突回避や歩行者の検知がより正確になります。
- トリプルカメラ:3つのカメラを用いることで、より広範囲かつ高精度な画像認識が可能になります。たとえば、異なる焦点距離のカメラを組み合わせることで、近距離と遠距離の対象物を同時に正確に認識できます。
カメラシステムは通常、フロントガラスの上方に設置され、車両の進行方向を広範囲にわたって監視します。これにより、車線維持の支援や、道路標識の認識などのさまざまな運転サポートを実現します。

ADASカメラの技術の最新トレンド
今後、ADASの進化に伴い、カメラ技術のさらなる向上が期待されています。とくに求められているのが、以下のような技術要件です。
- 高解像度化:より遠方の障害物や標識を正確に認識するために、高解像度カメラの採用が進んでいます。
- 夜間・悪天候対応:低照度や雨天・霧といった悪条件でも安定して動作するカメラ技術の開発が重要です。
- AIとの連携:ディープラーニングを活用した画像処理技術により、より高度な対象物認識が可能になります。
- 低消費電力化:電動化が進む中で、カメラシステムの消費電力を抑える技術が求められています。
センシング用途では、とくに“迷光(不要な反射光)によるノイズの抑制“に対するニーズが高まっており、デクセリアルズでは以下のような対策に取り組んでいます:
光学ノイズ低減の材料技術
- センサの種類に応じた波長に対応する高透過処理(例:モスアイ構造)
- センサ前面に位置するフロントガラスの曇りに対応する防曇材料の開発
- センシングカメラやLiDARに届く迷光などの不要な光を抑える低反射樹脂の開発
これらの技術は、センサが検知すべき信号(S)に対して、外乱光によるノイズ(N)を抑制することで、ADASシステム全体としてのS/N向上を図るものです。
ADASカメラモジュール設計を支えるデクセリアルズの材料技術
近年採用が進むADASカメラシステムでは、カメラ基板とメイン基板を接続するリジットフレキシブルプリント基板(Rigid FPC)が用いられています。従来、このようなRigid FPCの接続ではコストや信頼性の両立が課題となる場合もありましたが、FPCと基板を当社のACFで接続することで、信頼性を確保しつつコスト低減を図る構成が、多くの欧州系自動車メーカーで採用されています。具体的な採用例としては、IATF認証取得済の車載向けFilm On Board用異方性導電膜(ACF)であるCP881AMシリーズの搭載によって、高信頼性を担保しつつコストダウンを図っているお客様がいらっしゃいます。
また、カメラレンズの固定や光学部品の接着でデクセリアルズの精密固定用接着剤が採用されており、今後も採用が拡大していく見通しです。
光学ノイズと光軸ズレ対策に向けたトータルソリューション
デクセリアルズは、車載カメラやLiDARなどのセンシング機器における「光軸ズレ」「光学ノイズ」という、量産時の品質と安全性に直結する課題に対し、材料提供にとどまらない「トータルソリューション」を強みとしています。具体的には、カメラを精密固定する材料の開発・供給だけではなく、光軸ズレを計測する評価装置、さらに設計段階での最適化支援まで、一貫して提供できる点が強みです。単なる材料販売にとどまらず、評価や設計支援などの各段階を通じて、お客様が求めるセンシング性能の実現に貢献しています。
近年の車載カメラは高画素化が進み、光軸ズレの許容値は年々厳格化しています。従来材料との比較でも、デクセリアルズ製品はZ軸・Tilt軸いずれにおいても優位性が確認されており、国内採用実績をベースに、アジア・欧米・ASEAN市場へ順次展開していく予定です。
さらに当社では、カメラ・LiDAR内部で発生する「赤外領域の反射光(迷光)」を抑制するための黒色コーティング技術を独自に開発いたしました。自動運転やADASでは905nmおよび1550nmの赤外光が検知に使われます。一方、既存の黒色樹脂は可視光は吸収できても、赤外光の領域は反射が残りやすく、センシング精度を乱す原因となっていました。そこで私たちは新たなコーティング樹脂として、吸収、内部散乱、外部散乱という三層メカニズムにより、赤外光領域でも極めて低い反射率を実現する素材を開発しました。同素材は、他社の車載実績材料との比較実験でも、優位性が確認されています。
カメラの部品が「ズレない」、ノイズとなる反射光が「映り込まない」というセンシング品質を左右する2つの課題を、当社では材料とノウハウの組み合わせで解決を目指します。私たちはこれからも、自動運転時代に向けた中核技術をメーカーのお客様とともに作り上げてまいります。
自動運転時代に向けたデクセリアルズの取組み
CASEの各要素は相互に関連しながら、自動車業界の未来を形作っています。特にADASの進化は、自動運転技術の実現に向けた重要なステップであり、今後の動向に注目が集まっています。また、自動運転の技術開発は急速に進んでいますが、法規制や社会的受容が今後の鍵となるでしょう。
デクセリアルズは、自動運転やADASの進化に合わせて、材料技術を軸にした高信頼性ソリューションを拡充していきます。今後も、センシング性能のさらなる向上に貢献していきます。
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私たちデクセリアルズはデバイスの進化に欠かせない材料や次世代のソリューションを生み出す、マテリアルメーカーです。
電子部品、接合材料、光学材料をはじめと世界中のパートナーと新しい価値を生み出していきます。
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