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モノづくりの現場における安全の起点「光のバリア」を支えるデクセリアルズの光検出器

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人と機械のあいだに“見えない柵”を――セーフティライトカーテンの現在地と未来

製造現場における安全対策は年々高度化しています。自動化、ロボティクス、スマートファクトリーの進展とともに、人と機械の共存領域をいかに安全に保つかは、あらゆる製造業にとって避けて通れない課題です。

そんな中、近年あらためて注目されているのが「セーフティライトカーテン(ライトカーテン)」と呼ばれる安全機器です。セーフティライトカーテンは、“見えない安全柵”として機能する安全装置です。機械が稼働する範囲に人が侵入すると、瞬時にそれを検知し、機械のを停止させて人の安全を確保します。

本記事では、このセーフティライトカーテンの概要について説明するとともに、現在の市場動向、今後の技術トレンドまでをわかりやすく紹介していきます。

セーフティライトカーテンとは

セーフティライトカーテンは、赤外線など不可視光線によって形成される“見えない柵”で人などの侵入を検知し、機械を安全に停止させる安全機構です。
この機構は、光源を内蔵した投光ユニットと、それに対向して設置される受光ユニットを対向して設置することで構成されます。両ユニットの間に手や体が入ると、光が遮断されたことを瞬時に感知し、機械に非常停止の信号を出力します。
扉や安全柵のように物理的に空間を仕切るのではなく、非接触で柔軟に空間を仕切れる点が、セーフティライトカーテンの大きな特徴です。

多様化する用途:工場のさまざまな“出入り口”で活躍

セーフティライトカーテンは、すでに以下のような現場で広く利用されています。

  • プレス機の前面:作業員の指や手を検出することで、重大事故を防止
  • 産業用ロボットの作業エリア:作業員の進入を検知し、ロボットを停止
  • 搬送ラインのゲート部分:ワークのみを通過させ、人の侵入を検知
  • 組立エリアの作業スペース:安全性を確保しつつ、作業スペースの有効活用

特に高速ラインや自動搬送ロボット(AGV)を導入した工場では、物理的な柵が多いほど効率的な搬送が妨げられることから、セーフティライトカーテンのような“見えない柵”を導入することによって生産性の向上を図るケースが増えています。

市場規模と成長性:ロボットとともに拡大する安全機器市場

市場調査レポート(Safety Light Curtain Market Size, Share & Growth [Latest])によると、セーフティライトカーテンの需要は世界各地で着実に拡大し続けています。2025年に13億ドル規模が見込まれるこの市場は、2030年までに17億ドルへと拡大すると予想され、年平均成長率(CAGR)は6.3%に達すると考えられます。

その成長の背景には、以下のような要因があります。

  • スマートファクトリーの進展により自動化が加速し、人と機械が協働する領域が拡大している
  • 産業用ロボットの導入が世界的に進み、これらに対応した高度な安全対策が求められている
  • 中国やインドを中心にアジア地域で製造業の投資が活発化し、安全機器の需要が拡大している
  • IECやISOなどの標準化団体での安全規格が厳格化、各国での規制により対応機器の導入が加速している

なかでも自動車業界や食品・包装業界では、人とロボットが同一エリアで作業する場が増えており、安全対策としてセーフティライトカーテンの導入が進んでいます。

構造と機能の進化:シンプルだが高度な安全設計

セーフティライトカーテンの構造は一見シンプルですが、内部では非常に精密な制御が行われています。

  • 複数の赤外線による多点ビーム制御
  • タイムシーケンス制御(光を一定の順序と時間差で照射・検出する仕組み)による誤検出防止
  • 外乱光補正機能:太陽光や照明などの不要な光の影響を除去する機能
  • レンズ汚れ検知:受光部の汚れを検知し、検出精度の低下を防ぐ機能
  • ブランキング機能:治具やコンベアによって特定の領域の光が遮断されても、機械を停止させずに動作を継続させる仕組み
  • ミューティング機能:加工するワークだけは通過させるが、人などの侵入があった場合には止める複雑な判断機構

さらに、一部メーカーでは、パラメータを常時確認できるデジタルインジケータ付きのモデルを展開しており、光軸のずれや受光状態の確認が容易になることで、設置時の調整やトラブル発生時の原因特定が効率化されています。

今後注目すべきトレンド:中小企業への普及とIoT化の波

セーフティライトカーテンの今後のトレンドとして、以下の3点が注目されます。

  1. 中小企業向けの普及促進
    従来は大手製造業中心だったセーフティライトカーテンの導入が、より廉価・コンパクトなモデルの登場により、中堅・中小企業にも広がりつつあります。
  2. デジタル化・スマート化
    デジタルインジケータや通信機能を備えた製品が登場しており、IoT/PLC/SCADAなどのスマート工場の要素技術と相互接続されることで、スマートセーフティを実現する潮流が生まれています。
  3. 環境適応性の強化
    蒸気・切粉・油などが飛散する環境でも誤作動せずに使用できるよう、耐環境性能や自己診断機能の強化が進んでいます。

セーフティライトカーテンに採用されるデクセリアルズの受光素子

より安全で生産性の高い工場を実現するセーフティライトカーテンの中核を担うのが、「受光素子」と呼ばれるフォトダイオードです。この光検出器は、工場における安全性と生産性の両立に貢献する重要な部品です。投光側から発せられる赤外線の変化を精緻に感知することで、“見えない光のバリアの状態“を可視化し、制御側にデータとして渡しています。

デクセリアルズは、セーフティライトカーテン用途に最適化された複数の高感度・高速応答型の光検出器を開発・供給しています。それらの製品は、以下のような優れた特徴を持っています。

  • 波長感度の最適化:セーフティライトカーテンに多く採用されている波長900nm前後の近赤外線に最適化され、高い受光感度を発揮
  • 低ノイズ・高S/N比:誤検出を極力抑え、外乱光やノイズ環境下でも安定した動作を実現
  • 高速応答特性:光が遮断された瞬間に機械を止めるための高速信号応答性能を持ち、ミューティングやブランキングなど高度な制御にも対応
  • 小型・モジュール対応:セーフティライトカーテンのスリム化・多軸化に貢献するコンパクトなパッケージ設計

さらに、デクセリアルズのフォトダイオードは、製品ロット間のバラつきが小さく、品質の安定性にも優れていることから、高い信頼性を求められる用途において採用されています。
セーフティライトカーテンは、使用される環境や求められる安全レベルによって、必要とされる検出性能や信頼性が異なります。そのため、国際安全規格IEC 61496に基づいて、「Type 2」「Type 4」などのグレードに分類されています。

「Type 4」はもっとも高い安全性能が求められる環境に対応するグレードであり、設計・製造には高度な光センサ技術が必要とされます。
たとえば、プレス機や産業用ロボットのように高い安全性が求められる装置では、「Type 4」対応のセーフティライトカーテンの導入が推奨されます。一方、「Type 2」は、人が頻繁に立ち入らない比較的低リスクのエリアでの使用が想定されます。

このような使用環境の違いに応じて、「Type 4」向けのセーフティライトカーテンには、高感度かつ高速応答の光検出器が求められます。デクセリアルズのフォトダイオードは、そうした厳しい要求に応える製品として、多くの「Type 4」モデルにも採用実績があります。

安全機器における「誤動作が許されない」環境では、こうした受光素子の品質と安定性が、安全性そのものを左右すると言っても過言ではありません。デクセリアルズのフォトダイオードは、そうしたニーズに応えるために、光半導体技術の粋を集めた製品です。

モノづくりの場の安全起点となる技術

工場のスマート化が進む中で、人と機械の共存を安全に実現する技術としてセーフティライトカーテンの重要性はますます高まっています。その中核を担うのが、目には見えない光を正確に捉える受光素子です。

デクセリアルズのフォトダイオードは、こうした安全制御の「最後の砦」として、正確な検知と高い信頼性を両立し、グローバル市場でも数多くの採用実績を持っています。今後、セーフティライトカーテンのさらなる高性能化や、小型・低消費電力化が進む中で、光検出器の進化は、製品の競争力向上に直結すると考えられます。

モノづくりの場の安全起点を支えるテクノロジーとして、デクセリアルズでは今後もさらなるフォトダイオードの進化を進めていきます。

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