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太陽電池モジュール内のセルとタブ線の接合に用いられる「SCF」の特長

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ACFの技術を太陽電池モジュール内のタブ線接合に応用

異方性導電膜(ACF)は1977年、デクセリアルズが前身のソニーケミカル時代に業界に先駆けて製品化に成功した産業用資材です。フィルム状にした樹脂の中にミクロンサイズの導電粒子が分散しており、加熱・加圧すると硬化して機械的な「接着」と対向回路間の電気的な「導通」、隣接回路間の「絶縁」を一度におこなうことができることから、液晶ディスプレイなど広く採用されています。現在では多くのエレクトロニクス製品の部品搭載に利用される「はんだ付け」の代替としても活用されています。

2010年、デクセリアルズはこのACFの技術をもとに、太陽電池モジュール内の太陽電池セルと、セルで発電した電気を取り出すための金属線(タブ線)をつなぐ、フィルムタイプの導電接合材料(SCF)を開発しました。

従来のはんだ付け工法の弱点とは

開発の背景には、2006年頃に始まった世界的な太陽電池セル用の原料(シリコン)不足がありました。世界的な気候変動問題への関心の高まりから、2005年に京都議定書が発効し、世界中で再生可能エネルギー導入の機運が高まるとともに、太陽電池の市場は一気に拡大。しかしその原料となるシリコンの生産が追いつかず、今では考えられないほど価格が高騰したのです。

太陽電池セルのメーカー各社は、シリコン製の太陽電池セルをできる限り薄くすることで高価なシリコンの使用量削減を目指しました。しかしセルを薄くすると、新たな問題が発生します。太陽電池モジュールに使用されるタブ線は銅線をはんだで被覆した線材で、はんだを使ってセルと接合されるのが一般的で、その際には200℃以上の加熱が必要です。シリコンは比較的熱膨張が小さい材料なのに対してタブ線に使用される銅は熱膨張が大きく、この熱膨張の違いから接合時には熱ひずみが発生します。接合温度が高いほどこのひずみは大きくなっていくため、接合温度を下げることなくシリコンウェハを薄くすることは、このひずみへの耐性低下を招きます。最悪の場合、太陽電池セルの割れ(組立歩留まりの低下)に繋がるのです。また、接合時に割れない場合でも、長期運用を前提とした試験をパスできないなど、克服すべき課題がありました。

SCFのメリット。環境面でも貢献

こような太陽電池をめぐる状況下で、デクセリアルズはエレクトロニクスで培った技術を他の分野へ応用、展開することを模索していました。また、環境負荷低減を意識した製品開発に力を入れていたことから、ACFの技術を応用して太陽電池のタブ線接合に使える材料を開発できるのではないかと考え、取り組みが始まりました。こうして開発したSCFは、はんだ工法のいくつかの課題をクリアする材料となっています。まずSCFははんだに比べて低い温度(180℃)で接合が可能なことから、薄いセル(約150μm)が接合時に割れるのを防ぐことが可能です。このことは薄いセルに限らず、当時の一般的な厚みのセル(約200µm)の接合でもセルにかかる負荷(熱ひずみ)が抑えられ、長期保証を求められる太陽電池モジュールにとってプラスの効果が期待できることを示しました。

また、はんだ工法では、接合時にはんだが溶けやすくなるように事前に金属表面の酸化膜を除去するフラックスを塗布します。一般にフラックス塗布にはスプレー方式が採用され、スプレーの際にフラックスの一部が受光部にもかかってしまうことがあり、発電効率が落ちるという問題が起こっていました。これに対してSCFによる接合はフラックス塗布の必要がないため、発電効率を維持する効果が期待できます。またACFを細く切って加工するスリット技術を展開することで約1mm幅の製品まで対応でき、発電量アップを目的にタブ線を細くして広い受光面積を増やす場合にも有効です。

SCFをタブ線接合に使うメリットは他にもあります。SCF自身は鉛フリーに対応した材料ですが、前述のとおりタブ線は銅線にはんだ被覆をしたものが一般的です。これははんだ接合を前提としているためであり、さらに接合温度をなるべく低くするためには鉛を含むタブ線を選ぶことがあります。もし鉛フリーのはんだ被覆タブ線を選んだ場合、接合温度を200℃以上にする必要があり、技術的な工夫がなければセル割れによる歩留まり低下に繋がるからです。SCF工法の場合、はんだを溶融させる必要がないため、鉛フリーのはんだ被覆タブ線であっても接合温度は180℃と変わらないことから、太陽電池モジュールに使用される部材の鉛フリー化が可能です。フラックスの不使用と併せて環境面でも貢献ができる材料となっています。

太陽電池モジュールに必要な長期信頼性を確保

このような特長を持つ、SCF「SP100シリーズ」は、独立行政法人 産業技術総合研究所(AIST)で行われた「第Ⅰ期高信頼性太陽電池モジュール開発・評価コンソーシアム※1」(2009年10月〜2011年9月)において、太陽電池モジュールとして評価が行われ、モジュールの国際認証規格IEC61215に規定された 高温高湿試験(85℃/85%RH 1000時間)と温度サイクル試験(-40℃~85℃ 200サイクル)をクリアし、太陽電池ジュールに必要な長期の導通信頼性を有していること、およびはんだ工法と同等の性能を有することが確認されています。

太陽電池モジュールという厳しい屋外環境で長期にわたって運用されるデバイスにおいて、はんだ接合に匹敵する接合性能を実証できたことは、樹脂接着の可能性を示す一つの成果であり、デクセリアルズは今後も接着技術に磨きをかけ、太陽電池の分野に限らず新しい分野に挑戦をしていきます。デクセリアルズが生み出す接着技術に今後もご期待ください。

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