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植物成分を活用した排水処理剤——その開発秘話

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環境意識の高まりで注目した「排水」

デクセリアルズは、エレクトロニクス業界向け電子部品、接合材料、光学材料などを主に製造している会社です。そんなデクセリアルズが、異業種ともいえる「排水処理業界向けの製品」を開発していることはあまり知られていないかもしれません。なぜこれまでとは違った分野に取り組むことになったのか、この記事ではその背景と歴史について紹介します。

始まりは2006年頃。この前年(2005年)2月に温暖化に対する国際的な取り組みを定めた京都議定書の発効、同年3月〜9月にかけて愛知県で「自然の叡智」をテーマとした愛・地球博が開催されるなど世界的に環境意識が高まっていたこの時期、デクセリアルズ(当時ソニーケミカル&インフォメーションデバイス、以下SCID)社内でも、環境に配慮した製品の開発に力を入れていこうという機運が高まっていました。

この時、私たちの活動の中心は「環境配慮型のモノづくり」にあり、非常に多くのアイディアによってモノづくりの過程での環境負荷の低減が行われました。2008年にはより踏み込んだ活動として環境負荷の低減に直接つながる「環境配慮型の製品」の開発に拡大して行きました。

この活動の中で、現在の商品に繋がるアイディア「モロヘイヤ(植物)のネバネバ成分が排水処理の”沈降分離”に有効と目される」ことが注目されるようになっていたのです(詳細は後述)。

モロヘイヤの葉
モロヘイヤの葉

それまでも資源としての「水」に注目して3R活動を行っていましたが、これを機に私たちは「排水」にも注目するようになったのです。

※3R:Reduce(リデュース:資源の使用やごみの発生の抑制)、Reuse(リユース:再使用)、Recycle(リサイクル:再資源化)の頭文字をとったもの

モロヘイヤで排水処理を劇的に改善

当時、SCIDでは根上事業所(石川県)やソニーケミカル蘇州(中国)で回路基板を製造していました。回路基板の工場では、製造時に銅を研磨したり、めっきを行ったりと、様々な工程で銅イオンをはじめとする金属を含む水が排出されます。これらの水は排水処理によって不要物を除去し、基準値以下にした上で環境中に放流する必要があります。この処理に先程出てきた”沈降分離”の技術が使われています。

一般的な排水処理のプロセス

ここで登場するのが、先程紹介したモロヘイヤをつかったアイディアになります。沈降分離は比重の違いを利用して固液分離を行う方法で、この効率を高めるために凝結や凝集と言われる前処理を行います。一般に金属などを含む無機系排水では、前処理には無機凝集剤、pH調整剤、高分子凝集剤といった化学薬品が添加されます。この高分子凝集剤としてよく使われるのが、数百万から千数百万の分子量をもつ水溶性の合成高分子「ポリアクリルアミド(PAM)」です。PAMは水に溶けると粘り気のある液体になり、この粘り気が凝集を促進し、沈降分離の効率を高めます。一方、自然界に存在するモロヘイヤにも、PAMと同程度の分子量をもったネバネバの水溶性成分が含まれており、ラボでの実験においてはモロヘイヤがPAMの代替になり、無機凝集剤の添加量を抑えることで汚泥についても減らせる可能性があることが示唆されていました。

高分子凝集剤は石油から製造されるため、天然物で代用することができれば省資源につながります。さらに廃棄物である汚泥を削減できれば環境負荷低減に大きくつながることから、目指していた環境配慮型の製品として正式に開発に着手することになったのです。

まずは実機での性能確認として先程紹介した根上事業所で天然物であるモロヘイヤ粉末を使って実証試験を行ったところ、当時の排水処理性能を上回る処理を実現。結果として無機凝集剤である塩化第二鉄(FeCl3)が42%削減されました。汚泥発生量も49%抑えることができ、環境への負荷低減に大きく寄与することが見出されました。

根上事業所(石川県、当時)における実証試験の結果
根上事業所(石川県、当時)における実証試験の結果

これを契機に開発が本格化、2011年以降、当社の開発チームにおいて「現場での使い勝手」や「製品の量産効率および品質安定性」などの追求が行われ、現在の排水処理剤(SC-A510PL-A510)が完成、2015年に上市をしています。

現在の製品は、モロヘイヤに代わる植物(非食用)と水溶性高分子を配合したものになっています。これはモロヘイヤよりも優れた性能を持つ植物を見出したためですが、他にも、食用でもあるモロヘイヤの葉の利用を避ける狙いもあります。当社の排水処理剤は、環境負荷の低減だけでなく、その他の社会課題も意識して開発された製品になっています。

既存の枠組みにとらわれず、新しいことに果敢にチャレンジする。私たちは、持続可能なモノづくりの推進に、当社の技術が貢献できると信じています。

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