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<異方性導電膜の応用>屋外環境に耐える太陽電池用タブ線接合材料(SCF)の接着技術

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長期信頼性が求められる接合部への応用事例

太陽電池は建物の屋根の上や、野外の広い場所に設置され、20年以上にわたって「発電」という機能を発揮し続けることが求められるデバイスです。その間、雨風や雪、季節の温度・湿度の変化、強い太陽光にさらされ続けます。建物内など屋内環境での使用を前提とする他のエレクトロニクスデバイスとは、根本的に使用条件が異なります。そのため太陽電池に使われる部品、構成する素材にも、こうした厳しい環境下で長期間、期待される性能を保ち続けることが必要です。

デクセリアルズでは2010年より、異方性導電膜(ACF)の技術をもとに、はんだの代わりに太陽光電池モジュールのセルと電流を流すタブ線を接合して導電するSCFという接着フィルムを、製造、販売してきました。今回では、長期間の使用に耐えうることを実証するために実施した、実際の結晶シリコン系太陽電池モジュールでの信頼性試験の結果を中心にSCFの有効性について紹介します。

太陽電池モジュールの材料・部品構成

まず、太陽光パネルと呼ばれる太陽電池モジュールがどのような材料・部品で構成されているかについて、結晶シリコン系太陽電池モジュールを例に説明します。太陽の光を電気に変換するデバイスが太陽電池セル(Solar Cell)です。結晶シリコン系太陽電池セルの場合、ベースとなる材料は単結晶或いは多結晶のシリコンとなります。半導体のシリコンと同様に薄くスライスされたシリコンウエハ上にpn結合を作り、受光面には集電用の配線(フィンガー)と電極(バスバー)、裏面には集電電極が形成されています。

多くの場合、モジュール一杯にセルが縦横にずらりと並んでいます。太陽電池セルはそれぞれ前後(下の図では上下)のセルとタブ線で繋がっています。縦一列に繋がったセルの集団を「ストリング(String)」と言い、モジュール内には複数のストリング(図の場合は8つのストリング)が敷き詰められ、端部のタブ線が金属線で横に繋がれています。

実際のモジュールは、光を受ける側からガラス−封止樹脂(EVA)−ストリング−封止樹脂(EVA)−バックシートの順に重ねたものを一括でラミネート、最終的に金属フレーム、バックシートの裏にジャンクションボックスを取り付けて完成となります。

長期信頼性を保証する試験結果

次に、デクセリアルズがSCFの信頼性を確認するために実施した試験をご紹介します。すべての試験は、実際の使用条件を再現するためSCF工法によって組み立てた太陽電池モジュールでおこなっています。またこれらの試験結果は、独立行政法人 産業技術総合研究所(AIST)で行われた「第Ⅰ期高信頼性太陽電池モジュール開発・評価コンソーシアム※1」(2009年10月〜2011年9月)の外部評価に基づいています。

下記のグラフは、上が高温高湿保管試験、下が温度サイクル試験の結果を示しています。横軸に実験時間(あるいはサイクル)、縦軸に太陽電池の出力(W)をとっています。モジュールの国際認証規格IEC61215では高温高湿試験は1000時間、温度サイクル試験は200サイクル時点の出力が初期値に対して95%以上であることが基準とされており、いずれの試験もその基準をクリアしています(高温高湿では3000時間、温度サイクルでは400サイクルまで出力低下は5%未満)。

出力面でもはんだに匹敵

ここからは屋外設置されている大型の実モジュールでのパフォーマンスについて説明します。以下に示す結果は、SCF工法、はんだ工法でそれぞれタブ線接合をおこなったストリングと大型モジュールの出力結果です。評価に先立ち、太陽電池セルの出力を1枚1枚確認し、ストリング(10セル直列)にした際にほぼ同じ出力になるようセルを選別しています。

以下はストリングの状態での出力のヒストグラムです。平均出力はわずかですがSCF工法のほうが高くなっています。ポイントはそのバラツキで、はんだ工法に比べてバラツキが小さく、SCFによる接合の安定性がこの段階からうかがえます。

最終的なモジュールでの試験結果が以下のグラフです。出力(Pmax)、形状因子(FF)ともにはんだ工法より数値が上位で優れる結果となっています。同様に、小さい方が良いとされる直列抵抗(Rs)も数値がはんだ工法を下回っており、いずれの指標でもSCF工法がはんだ工法より優れる結果となりました。

この結果から、SCFによる接合は出力の面でもはんだ工法と遜色がないことが分かります。

以上が、太陽電池用タブ線接合材料「SCF」の試験結果です。デクセリアルズはSCFを「SP100シリーズ」という名称で販売していますが、採用されたモジュールの発売から10年以上が経過した現在、タブ線接合材料としての信頼性について実績として語ることができるようになりました。過酷な環境にさらされる分野においても、当社の導電接着技術が活躍しています。私たちは今後も接着技術に磨きをかけ、新しいフィールドでも挑戦を続けてまいります。

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