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導電フィルム・太陽電池タブ線接合材料の長尺化――1巻5000m超えへの挑戦
導電フィルム・SCFに求められた長尺化
屋外設置の太陽電池モジュールは小さいもので約1m×1m、大きいものになると長辺が2m近くにもなる大型のデバイスです。そのため、1モジュールあたりに使用するタブ線の長さは片面で25m〜50mにもなります。したがって、それを接合するのに用いられる当社の導電フィルム・SCFにも、同じだけの長さが必要になります。
接合に使用する導電フィルムはリールに巻かれており、2010年の発売当初は1巻300mで出荷をおこなっていました。しかし本格的な太陽光発電の普及を加速させるためには、低価格化が必須の条件でした。モジュールの生産コストを下げるためには生産効率の改善が欠かせません。そのためお客さまからは、1巻の長さをより長く(長尺化)してほしいとのご要望をいただきました。導電フィルムを長尺化すれば、リールを交換する段取り替えの時間を節約し、生産性を向上させることが可能となります。当社もその要望に応えるべく、SCF長尺化への取り組みをスタートしました。

太陽電池モジュール製造に必要な導電フィルムの長さ
生産性向上のためには、どれぐらいの長さまで導電フィルムを長尺化する必要があるのか、下の図の96セルのモジュールで計算してみます。タブ線接合はセルの表裏の2面でおこなわれるため、フィルムは一般的に表と裏それぞれに対して供給されます。その前提で考えると、1モジュール辺りの片面のおおよそのタブ線長が44.4mとなります。1リールが300mの製品ならば、300÷44.4なので1巻で6.7モジュール、つまり6モジュールしか生産できません。仮に100モジュール(接合長さ 4440m)を300m巻きリールで生産した場合、初回を除いて14回のリール交換が必要になります。しかし、もしリールが1巻5000mであれば、リールを交換せずに生産できます。そこで5000m以上をターゲットに、導電フィルムの長尺化に取り組むことを決めました。

長尺化に立ちふさがった課題
しかし導電フィルムを5000m以上に長尺化させるにあたっては、大きく分けて2つの解決しなくてはならない課題がありました。最初に立ちはだかったのが、「長尺のフィルムに接着剤を一度に塗る」ということです。当社の太陽電池用タブ線接合材料(SCF)は、ディスプレイの端子接続に用いられている異方性導電膜(ACF)という素材の技術を応用した製品です。ACFはディスプレイ等のエレクトロニクス製品の回路接続に用いられ、1巻300mの長さがあれば十分で、その程度であればフィルムに接着剤を一度に塗ることができます。しかし5000m以上もの長さになると、熱硬化性の接着剤を塗りながら生産した場合、時間経過にともなって先に塗った箇所が硬化を始めてしまうのです。その解決策として、当社では数百mの短い長さで生産した導電フィルムを、何本もつなぎ合わせることにしました。
もう一つの課題は、リール巻きの方法でした。今までのやり方で導電フィルムをリールに巻くと、リール径が大きくなりすぎてしまい、導電フィルムの生産上もお客さまの設備上もさまざまな弊害が出てきます。従来の導電フィルムは紙テープのように、巻き芯の周りにフィルムを同じ位置で動かさず、重ねて巻いていく「テープ巻き」という手法で巻かれていました。これに対して当社は、巻き芯に対して横方向にフィルムを巻いていき、巻き芯の端まで行ったら今度は方向を逆にして巻いていく「トラバース巻き」という手法で巻くことで、リールが大きくなりすぎるという課題を解決しました。
トラバース巻きを用いると、リールの厚みは増しますが、径の大きさは従来のままで、巻く分量を大幅に増やすことが可能になります。お客さまが使用していたタブ線が、トラバース巻きでリールに巻かれていることもヒントとなりました。当初はトラバース巻きするにあたって、「巻いている間に保護フィルムから柔らかい接着剤がはみ出して、接着剤同士がくっついてしまうのでは」という懸念もありましたが、一つひとつ課題を解決しながら現在のトラバース巻を完成させたのです。

単なる応用ではなく新しい技術を取り込む
以上、紹介した長尺化はSCFの開発過程で生まれた技術になります。SCFは異方性導電膜(ACF)の技術を応用して開発が始まりましたが、応用だけでは現在の製品には到達しませんでした。
優れた部分は利用しつつ、最適解を得るためには難しいと思えることでも着実に実現する。そして、製品開発の過程で新しい「ものづくり」を発想し進化させていき、今後も真摯なものづくりの姿勢を忘れず新しい製品の開発に邁進していきます。
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